[選手権]昨年は8強敗退も「あの経験があったから」。昌平MF長璃喜は悔し涙を流した舞台で成長見せるスーパーゴール


1年前の涙を力に変えた。昌平のU-18日本代表MF長璃喜(3年)は0-1の後半14分、FW立野京弥(1年)とのワンツーから抜け出し、右足を振り抜いて同点ゴール。怪我明けの身体を押してピッチに立った注目アタッカーが、昨年悔し涙を流した舞台でスーパーゴールを決めた。

「京弥とワンツーして、感覚で、気持ちで打ちました」。中盤でタイトに守ってきた浦和学院に対し、立野とのコンビネーションで抜け出すと、ゴール前で伸びてきた相手の足を「感覚」で交わす。ボールはやや右に流れたが、食らいつくと腰をひねりながら逆サイドネットにねじ込んだ。

ゴール後はすぐさま応援席へ。「やっぱり負けている状況でも応援してくれる仲間だったり、仲の良い子とかがメンバーを外れたり、そういう人たちの分まで頑張りたいと思っていたので、身体が勝手に行きました」。声をからして支えてくれる仲間たちと、笑顔でハイタッチを交わした。

大会前にはアクシデントもあった。10月3日の練習中に人口芝に足を取られて左足首を負傷し、プレミアリーグ3試合を欠場。この日は約1か月ぶりの実戦で、万全とは言えない状態だった。

まだ、痛みもある中で「自分のコンディション上げるために、取られてもいいから仕掛けようと思いました」と立ち上がりから積極的にチャレンジ。前半23分にはDF笠原慶多(1年)とのパス交換からエリア内に侵入し、決定機を作った。後半は「中で拾って、自分で仕掛けようかなと思いました」とポジションを左サイドからトップ下へ。得点シーンはその姿勢が実った形だ。

昨年は同じく駒場スタジアムで行われたベスト8で聖望学園に敗れ涙。「やっぱり1年前、ここでちょうど負けて、今年もうまくいかないこともいろいろあったけど、あの経験があったから頑張れた。去年決定機を外してしまって、3年生には申し訳なかったけど、その経験があったからこそ今日決めきれたかなと思います」。あの日の悔し涙が、この日のスーパーゴールに繋がった。

石黒登(取材・文)