[総体]昨夏・日本一の昌平が西武台を振り切る。中学で悔しい想いをした世代が掴んだ“自分たちの代”初の全国切符!

昨夏、県勢として51年ぶりとなる日本一に輝いた昌平が再びあの舞台へ。令和7年度全国高校総体サッカー大会埼玉県大会決勝が15日にNack5スタジアム大宮で行われ、昌平がエースMF山口豪太(3年)のスーパーゴールで西武台に1-0で勝利。2大会連続6回目の優勝を果たし、インターハイ出場を決めた。

両チームは昨年の決勝でも対戦し、その時は昌平が5-1で大勝したが、今年はまた違った展開となった。

西武台は序盤から相手のビルドアップに対して圧力。最終ラインではCB高倉大翔主将やCB田谷巧翔(ともに3年)が粘り強く守り、相手のキーサイドである右では左SB木村一心(3年)がよく対応していた。

攻撃面ではスピードのある3トップを生かした攻撃やMF広瀬陸(3年)やMF杉山幸一郎(3年)を起点にチャンスメイク。26分、28分には右クロスから連続して杉山が決定機を迎えたが、昌平GK小野寺太郎(3年)の好守やシュートがわずかに浮いてしまいネットを揺らすことができない。40分には自陣からのロングカウンターでFW太田和希(3年)が抜け出したが、ここも小野寺のファインセーブに防がれた。

一方、昌平は25分にクロスから山口がヘディングで迫り、35分にはU-18日本代表MF長璃喜(3年)が抜け出しからシュートを放ったが、前半はこの2本のみ。芦田徹監督は「ルーズボールを拾うとか、ボールに執着するとか、自分たちがしっかりボールを持とうとするとか、そういったマインドも含めて、サッカーっていうものから今日はとっても逃げていた部分がすごくあるんじゃないかなと思います」と話す。

後半も西武台が攻め込み、3分には10番MF杉村晄汰(3年)が運び出し、FW滝澤智貴(3年)が惜しいシュート。10分には杉山が左サイドを抉り、クロスを滝澤が左足で狙ったシュートはゴール上に外れた。

苦しい時間帯が続いた昌平だが、それでも13分、「絶対1本は振ろうと思っていた」という山口が右サイドでボールを持つと、ひとつ内に持ち出し左足を鋭くスイング。これが逆サイドネットに吸い込まれた。会場の空気を一瞬で変えたゴラッソに指揮官も「あれは彼にしかできないゴールだと思います」と讃えた。

勢いの出てきた昌平は14分、山口とMF飯島碧大(2年)が細かくパス交換しながら運び、FW齋藤結斗(3年)が狙ったが、ここは西武台が決死のディフェンス。西武台は25分、広瀬のクロスを中央で収めた杉山が決定的なシュートを放ったが、この日再三にわたり好セーブを見せていた小野寺がこの場面でもビッグセーブでチームを救った。ディフェンス陣も今大会無失点で抑えている伊藤隆寛、高橋心晴(ともに3年)の長身CBコンビを中心に跳ね返し。最終的に山口の得点が決勝弾となり、昌平が1-0で制した。

中核を担うFC LAVIDA組は中3時、夏のクラブユース選手権、冬の高円宮杯U-15選手権と“自分たちの代”で全国に出ることができなかった代。終了の瞬間、キャプテンの伊藤はピッチに横になって顔を覆った。

「やっぱり中学時代、全国に行けなくて、すごい悔しい想いもしていて…。ひとつ上の代も(高円宮杯で)全国準優勝だったり、(インターハイで)優勝している中で、本当にここで勝ちたいっていう想いが強かったですし、本当にもう苦しい6年間だったので。全国でやるのが自分の夢で、すごい日本一も獲りたいですし、この仲間でやる最後の1年なので、最後笛が鳴った瞬間はそういった想いが浮かんできた」と話す。

冬の決定戦となった柏U-15戦でPKを失敗した山口は試合後に涙。「みんなを楽しい舞台に連れて行ってあげられなかったっていうのはもうすごい自分の中でも心に残っていて。それを思い出したら、マジ試合前に泣きそうになったんですけど、でも泣くのは試合が終わって、勝ってからにしようと思って。自分が決めて勝てて、もうすぐにこみ上げてきて。今日は勝てて良かったなと思います」と感慨深げに語った。

まずは第一関門を突破。それでも内容面では、誰ひとり満足はしていない。芦田監督も「子供たちにも「昌平プライド」だって言っているんですけど、自分たちがやっぱり自分たちらしくボールを持って、見てる人たちもやっぱりワクワクするようなゲームをしたいよね、それが我々だよね、我々のあり方だよねって。そこをどうやって求めていくかっていうところは、やっぱりもう1回やっていかないといけないと思います」。山口も「絶対に全国で昌平の楽しいサッカーを見てもらえるように」とした。本大会まで1ヶ月半弱、「昌平プライド」を持って、見ている人がワクワクするようなサッカーで再び全国の階段を駆け上がる。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 1-0 西武台
0(前半)0
1(後半)0