浦和南との大一番で決勝弾!「無名で終わっていたので…」市立浦和FW田中悠真は苦しんだ1年目を越えて、高校サッカーでも名を上げる

「ちょっと無名で終わっていたので…」。その言葉からはストライカーとしての意地が透けて見える。市立浦和FW田中悠真(1年)は苦しんだ高校での1年目を越えて、得点の量産を狙う。

新人戦南部支部3回戦で組まれた市立浦和と浦和南の好カード。負けたチームは関東大会予選への出場権を逃すこともあり、試合前から独特の緊張感に包まれた。試合は立ち上がりから浦和南が攻め込む中で市立浦和は後ろ5枚でスペースを埋めて粘り強く守備。前半を0-0で終えた。

市立浦和の前半のシュートは1本のみ。FWとしては焦れるような展開が続いたが、田中は「こういう試合は想定していた。結果的に見ても相手の方が力は上回っていたと思う。その中で数少ないチャンスを決めきるために、ずっとシュート練習を行ってきた」と冷静にその機会を待った。

するとその機会が訪れたのが後半37分。中盤でボールを持った田中は一度FW横井葵(1年)に展開。「横井くんはいつも縦に仕掛けるので来ないかなと思ったんですけど、ちゃんと待ってくれて、「これは来たな」と思って前に抜け出しました」。リターンを受けると、やや距離はあったが、「ああいう展開の方が何も考えないで打てる」と迷わずに右足を振り抜く。ボールはゴール隅に吸い込まれ、これが決勝弾に。田中にとってはこれがこの日初のシュートにして唯一のシュート。まさに数少ないチャンスを決めきったFWは「最後の最後のチャンスで決められて良かった」とし、「(学校総体の)南浦和中戦よりも興奮しました!」と言って特大の笑顔を見せた。

田中は中学時代、川口西中のエースFWとして3年時の学校総体でチームを牽引。優勝候補同士の好カードとなった前述の準々決勝・南浦和中戦は、田中も一時勝ち越し弾を決めるなど壮絶な打ち合いとなった中でPK戦で勝利。準決勝の日進中戦、決勝の新座第二中戦でも決勝弾を奪い、チームを優勝に導いた。田中自身も通算9ゴール。この年の中体連屈指のタレントだった。

高校は「勉強とサッカーをどちらも頑張れるように、どちらでも結果を残せるように努力していきたい」と文武両道の市立浦和を選択。しかし、意気揚々と飛び込んだ高校1年目は苦しんだ。

「なかなか点が入らなくて…。中学だと押し込むだけで行けたんですけど、高校になると全然レベルが違って、最後足が伸びてきたり、キーパーの手が伸びてきたりという感じで全然決められなくて。自分はシュートがうまいと思って入学してきたんですけど、なかなかうまくいかなくて。去年は全然点を決められなかったので、今年こそは、という想いで1月から頑張っています」

振り抜く力をつけるためにチューブを使ってお尻周りの筋肉を鍛え、全体練習後のシュート練習ではコースを狙うよりも、「どんどん打つことを意識して」回数を重ねているという。浦和南戦での決勝ゴールでは、まさにそのシュートを打つ意識と振り抜くお尻周りの強さが出た形だ。

このゴールを今年の躍進へ。試合後は「これで終わりたくないです」と話していたが、翌日行われた支部準決勝では昨年の選手権予選で敗れた浦和北に2戦連続の決勝弾となるゴールでリベンジした。「学総からちょっと無名で終わっていたので、ちょっと苦しかったです」と話すストライカーは苦しんだ1年目を越えて、今年はゴールを量産して、高校サッカーでも名を上げる。

石黒登(取材・文)