昌平の窮地を救ったのは途中出場のサイドアタッカーだった。MF佐々木小太朗（３年）は後半23分に出場すると、そこから３分間でなんと２ゴールを決めて、チームを逆転勝ちに導いた。

１点ビハインドで後半のクーリングブレイクを迎え、勝つためにここから攻めなければいけない状況。ここで藤島崇之監督が交代のカードとして選択したのが佐々木だった。指揮官はいう。

「推進力もあるし、ディフェンスのうまさもあって、チームのみんなからも信用されている選手。逆にプリンスでもスタートで出ている試合も結構あって、彼がやっぱり途中で控えているというのは、疲労感が溜まって動けなくなっても、佐々木で行くというのもプランニングはしていた」。

「監督からも流れを変えてこい、点を取ってこいと」。求められた役割はチームに流れを引き寄せるゴールを奪うこと。佐々木自身も外から見ている中で自分が入ったら「点」を取ることを考え、ボールをシュートに持っていくイメージを持っていたからこそ、もう準備は出来ていた。

チームはクーリングブレイク直後にMF篠田翼（３年）が同点弾を決めて、俄然逆転の機運が高まる。そういった中で篠田のゴールから１分後、逆転弾にしてこのゲームの決勝弾が生まれる。

後半24分、GK上林真斗（３年）のロングキックをFW小田晄平（２年）が競ると、こぼれ球が佐々木のもとへ。これをひとつ胸でトラップし、迷わずに右足を振り抜いてベンチからイメージしていたようにボールをゴールに運んだ。ちなみにこれがこの日のファーストプレーだった。

さらにこれだけでは終わらない。ゴールからわずか２分後の後半26分に再度その瞬間が訪れる。

中盤でボールを持った篠田がドリブルで仕掛けると、佐々木は小田の動き出しで空いた逆サイドのフリースペースに走り込み、篠田のパスを流し込んだ。出場から３分間での２ゴールという離れ業をやってのけた佐々木は「最高でした」と仲間たちから祝福を浴びた瞬間を振り返った。

佐々木もFC LAVIDAが始めて全国に出場し、８強まで進んだ代の一員。高校ではMF荒井悠汰らが早い段階で出場機会を掴んでいった中で「中学の時に一緒にやっていた人が高校サッカーの大きな舞台でやっていて、悔しいというのはあったし、頑張って欲しいというのはありました」と複雑な想いもあったという。それでもいま佐々木はその舞台に立ち、ゴールを奪っている。

「今日みたいに点でチームの流れを変えたいです」。準々決勝の大津戦もタフなゲームとなるはずだ。その時、スタメンでも、途中からでも、ピッチを駆け上がる佐々木が輝く時が必ず来る。

石黒登（取材・文）