拮抗した展開で試合を決めたのはCBだった。正智深谷DF岩崎佑槻（３年）は５年ぶりの関東大会がかかった準決勝で２ゴール。また守備でもDF小屋結世（３年）とともに相手を零封した。

試合が動いたのは後半20分。DF冨岡佑太（３年）が敵陣左中間からFKをゴール前の密集地帯に蹴り込むと、小屋がGKと競る。ボールがこぼれると、これに反応したのが岩崎だった。

「もう振り抜くことしか考えてなかったです」。飛び上がりながら右足で捉えたハーフボレーはそのままゴールネットへ。「瞬間的に本当にもう、頭が真っ白になって。めちゃくちゃ嬉しかったですね」。ゴールが決まったのを見届けると、仲間たちに祝福を受けながら大きく咆哮した。

これだけでは終わらない。後半AT、FW古橋颯（３年）がエリア内で倒されPKを獲得するとキッカーは岩崎。実は前日のPK練習では力が入りすぎてしまい、なかなか決めることが出来ていなかったという。それでも入るまで蹴り込み、小島時和監督からも「シュートはパワーじゃないぞ」と言い聞かされていたDFは、冷静にGKの動きを見ながら逆に蹴り込み勝負を決めた。

また、守備では「まずラインを下げすぎないこと」を意識しつつ、相方の小屋のカバーに入りながら相手の裏抜けを何度も阻止。自身の２ゴールに加え、『本業』の守備でも失点０で締めた。

昨年はひとつ下のカテゴリでプレーしていた中で、トップで活躍するために「競り合い」「対人」「声出し」を磨き、今年の新チームからレギュラーに定着。小島監督は「ヘディングも強いし責任感も出てきた」と岩崎について語る。また、FC多摩時代からのチームメイトでCBの相方を組む小屋は「正智に来てから本当に信頼出来るようになって、どんどん変わって、頑張ってくれた。下から這い上がってきた分、そういうところはすごく尊敬しています」と信頼を口にする。

「こいつがいれば大丈夫だなと背中でみんなに伝えられる、チームにとって逞しいDFになりたい」。守備でも攻撃でも常に“気持ち”のこもったプレーでチームに安心感を与えるCBになる。

石黒登（取材・文）