全国高等学校総合体育大会 埼玉県予選準決勝 昌平 vs 浦和学院

全国高校総体・埼玉県予選準決勝。第1試合は昨年覇者・昌平高校と注目FW田中和樹擁する浦和学院高校が対戦。満員の観客の中行われた一戦は、昌平が経験値の差を見せて6ー0で快勝し、2年連続の総体出場を決めるとともに、連覇に向けて決勝進出を果たした。

昌平が勢いに乗る浦和学院をねじ伏せた。「前半の頭は10番(田中)を警戒しすぎてラインを下げて、手前に入られるところもあったが早い段階で修正できた」(昌平・藤島崇之監督)。

同じ失敗は繰り返さない。準決勝の埼玉栄高校戦では相手のキープレーヤーを捕まえ切れず苦しい展開を強いられたが、今回は石井優輝と関根浩平のセンターバックコンビで「チャレンジ&カバーを徹底」(関根)。ポイントを絞って前から強くいくことで相手に自由を与えない。

アタッカー陣も序盤から躍動。FW佐相壱明の裏抜けやポストプレーから連続して攻撃の形を作ると、13分にはMF原田虹輝のボールカットから生まれた混戦のこぼれ球をMF山下勇希が積極的に狙っていく。これは浦和学院GK大橋裕史の好守に阻まれたが、その後も山下、原田の両ボランチがサイドハーフとトライアングルを作りながら浦和学院を押し込んでいった。

そんな中で先制点が生まれたのは前半25分。決めたのはこの日左サイドハーフとして起用された古川勇輝だ。普段はボランチ、右サイドハーフとしてプレーしており「左サイドハーフとしては初めてのプレー」だったが、持ち前の積極性で中に仕掛けていくと佐相のラストパスをワンタッチ目で打ちやすいところに置いて、ツータッチ目で冷静に流し込んだ。

同点弾を狙う浦和学院も後半33分にMF安居海渡のボールカットから一気に前線にスルーパス。これに田中が突っ込むも昌平の守護神・緑川光希が身体を張ってセーブしてみせる。

すると前半38分には追加点。「アップから身体が軽かったのでどんどんいこうと思っていた」とMF渋屋航平。試合後には「めっちゃ動いていた」と評されたという佐相からのボールを引き出すと、「昨日の練習後にも良いシュートが打てていた。自分的にも満足のいくシュート」という豪快なミドルシュートを突き刺してリードを2点とした。第2、第3の違いこそあれ埼スタサブグラウンドでは連続ゴール中。「何か持ってますね」とはにかんだ。

さらにアディショナルタイムには山下の縦パスに抜け出した古川がファーストタッチで中に入り込んで中央にクロス。これをMF髙見勇太が右足で決めて3ー0で試合を折り返した。

後半も昌平の勢いは止まらず。序盤から運動量高く渋屋が前でチェイシングをかけてボールを奪うと連続した攻撃につなげていく。15分には左サイドバックの堀江貴大が縦に突破。エリア深くまで侵入してグラウンダーのパスを送ると、このボールに佐相がニアで合わせて4点目。その4分後にはコーナーキックのこぼれ球に「(関東本大会1回戦の)さくら清修戦でのミドルシュートもあって、良いイメージもあった。もしこぼれてきたらぶち込んでやろうという準備はしていました」という古川が強烈なミドルシュートを叩き込んで5ー0とした。

後半36分には右サイドバックの塩野碧斗のクロスに、その直前に投入されたばかりのMF森田翔がヘディングを突き刺してダメ押しの6点目。守備でも石井、関根を中心に田中、齋藤雅之の強力2トップを最後まで「0」に抑えた昌平が、6ー0で2年連続の本大会行きを決めた。

この日は内から外から6得点。「(パスを回してゴールに迫っていく)ベースもやりながら、外からオープンになった状況でも点を取れるというのは収穫」(藤島監督)だ。

そんな中で初の左サイドハーフ起用に結果で答えた古川。アシストシーンでは中盤底で培った視野の広さを見せた他、原田、山下とのコンビネーション、またサイドのスペースを開ける動きで左サイドから試合を作り「ボランチとしての経験を活かせた」と振り返った。外からもゲームメイクできる背番号14の存在は本大会でも大きな意味を持ってきそうだ。

一方、浦和学院・森山泰行監督は「相手に持たれてずるずると下がってしまった。経験不足のところが出た」。あと一歩全国には届かなかったが、2回戦の浦和南高校戦や「逆境の中から頑張れた武南戦」など選手たちは大会の中で大きく成長していった。「洗礼を受けてここからどうやっていくか」。この経験を糧に選手権予選では再び全国を狙っていく。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 6-0 浦和学院

3(前半)0
3(後半)0