令和2年度新人体育大会決勝 埼玉栄 vs さいたま南浦和

令和2年度新人体育大会決勝が15日に行われ、埼玉栄中が2-0でさいたま南浦和中を下し、優勝した。埼玉栄の新人戦Vは連覇を果たした平成18、19年度大会以来13年ぶり3度目。

立ち上がりから連動した守備でペースを握った埼玉栄は前半11分、FW北畠有仁が前線にボールを叩くとキーパーとディフェンスが見合う形となった一瞬の逡巡をFW加藤佳大は見逃さなかった。スピードを落としたディフェンスに対し、背番号11はトップスピードで追い抜いてキーパーの手前でボールをカット。そのままキーパーを交わし、無人のゴールに流し込んだ。

一方、南浦和も自慢の「個」で仕掛ける。12分、FW畑乙樹が得意のドリブルでディフェンスをかき分ける形で侵入すると、グラウンダーのクロスをFW坂本勇希がシュート。さらにこぼれ球にFW関賢人が詰める。触っていればという場面だったが、伸ばした足はあと一歩届かず。

後半埼玉栄はこれまでの試合と同様に中盤のMF金井裕世をトップに配置転換。すると金井はそのファーストプレーでいきなり決定機を迎える。ここは南浦和GK田原翔に防がれたが、得点への意欲を見せるプレー。その後も埼玉栄はセンターで門番のように構えるMF浅倉孜音がセカンドボールを拾いまくり中盤を制圧。スピードのある加藤が次々とチャンスを作っていく。

すると埼玉栄は後半28分、DF中村大真のクリアボールを前線で収めた金井が仕掛け。エリア左をえぐるとコースはなかった中で冷静にキーパーの股を抜いて仕留めて、勝負を決定づけた。

2-0で勝利した埼玉栄が新人戦では13年ぶり3度目の優勝を飾って、大会は幕を閉じた。

抜きんでる「チーム力」の高さ。試合中の修正力も見せた埼玉栄が13年ぶり3度目の新人戦V

これまでの試合もそうであったように、決勝でも埼玉栄の組織としての力が際立った。

前半から連動した守備で技巧派揃いの南浦和の選手たちをシャットアップ。ボールホルダーに対して常に1人、2人が寄せて前向きでのプレーをさせなかった。また「良い攻撃をするためにはやっぱり良い守備をしないといけない。皆さんよく守備をというんですけど、守備をというよりは攻撃のために守備をやるというのを大会を通して常に意識させているので、そこはよくやってくれた」と滝井友和監督がいうように攻守の切り替えの早さも目立った。この日の2ゴールはともに守備の終わりが攻撃のスタートといったトランジションの速さで奪ったゴールだ。

そして監督も驚いていたのが「ピッチ内での修正力」の部分だ。決勝もスタートは10番の金井裕世が4-4-2のボランチ、左MFが櫻井悠琉という並びだった中で相手のエース格である10番を封じるべく、ピッチ内で選手たちで話し合い、前半の途中から2人のポジションをチェンジ。「10」に「10」を当てる形に変更するとこれが奏功した。「あまり中に入らせないように外に追い込めたと自分的には思います」と金井。ちょうどその時間帯は南浦和も修正し、前に出るプレーも見せ始めていただけに結果として試合を左右するターニングポイントとなった。

今年は2年生が6人、1年生が12人と下級生が多いチームだった中で上級生が先導しながら、個々人ではなくまさに「チーム力」という言葉を体現。また、くじ引きにより1回戦からの出場となった中で最大試合数である6試合を戦うことで大きく成長した部分もあった。キャプテンのDF原田空虎は「トップに能力の高い選手がいるのもそうなんですけど、チームとして守りぬいた、チームとして勝った」と自信。そのうえで「ポゼッションサッカーをもっと極めていきたい。夏の大会に向けてパスで崩してシュートまで行けるという状況に仕上げていきたい」と守備のベースにチームスタイルであるポゼッションを上乗せして、さらなるレベルアップを誓う。

今大会の結果を自信に変えて。目指すのはもちろん来夏の全国大会出場、そしてそこでの躍進だ。指揮官は「この後の何か月かで夏に向けてまた一皮も二皮も剥けた試合ができるように、さらにレベルアップして全国で勝てるようにしていきたい。全国は私学がやっぱり強い。青森山田や石川星稜、日章学園、神村学園、山口だったら高川学園と、強いところがたくさんあるので、そういったチームにしっかりと対応できるようにレベルアップしていきたい」と意気込みを語った。

石黒登(取材・文)

試合結果

埼玉栄 2-0 さいたま南浦和
1(前半)0
1(後半)0