第99回 全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会 準決勝 昌平 vs 正智深谷

選手権埼玉2次予選準決勝。昌平は4-1で正智深谷を下し、4年連続となる決勝進出を決めた。

前半から仕掛けたのは正智深谷だった。前線からしっかりとプレスをかけ、セカンドボールをMF松山碧、MF寺田海成のダブルボランチのところでことごとく回収して速い攻撃に繋げた。

前半7分に昌平のMF須藤直輝にフリーキックを直接入れられて先制を許したが、落ち着いて試合を進めると26分に同点弾。DF川井祥馬のクロスをMF倉林大河が打点の高いヘディングで叩きつけると、こぼれ球を今大会初先発となったFW山本滉が決めて追いついた。

一方、前半はなかなかセカンドボールを回収できずに苦しんだ昌平は怪我を抱えていたというMF小川優介を右サイドに移し、「線は細いが予測が良い。ディフェンス的にも良いものがある」(藤島崇之監督)というMF平原隆暉をセンターにチェンジ。これが奏功し、中盤が安定すると今年のチームのストロングポイントのひとつである両サイドバックの攻め上がりが増えた。

勝ち越し弾はそのサイドから。後半21分、2戦連続のスタメンとなった右サイドバックの本間温士が中にグラウンダーのクロスを供給。キーパーが弾いてこぼれたところを須藤が詰めた。

さらに攻め込む昌平は後半27分と40分にPKを獲得。これをFW小見洋太がおなじみとなった7後ろに下がって、3歩左にポジションを取り、そこから細かいステップワークで助走を取る独特のキックでネットに運んだ。4-1とした昌平が4年連続となるファイナル進出を決めた。

須藤直輝は初ゴール含む2得点も反省。決勝は「昌平らしい楽しいサッカーをしたい」

今大会無得点だったMF須藤直輝は準決勝の大一番で2ゴールを奪い、チームを勝利に導いた。

先制点は前半26分、敵陣ゴールエリア左でフリーキックを獲得すると、右足で巻くようにして蹴ったボールがそのままサイドネットに吸い込まれた。「やっぱりゴールに向かうボールというのが一番恐いと思う」と須藤。普段からフリーキックの練習ではそのまま入ってもいいというつもりでキックをしているというが、その成果がゴールという結果に繋がった。

ゴール後には珍しく喜びを爆発。「(今大会)初ゴールですし、いままで得点が取れなくてチームにいろいろと迷惑をかけていたので、点を取れたということが素直に嬉しかったです」。

その後同点とされた中で2点目も須藤だった。「俺が取ってやろう!」という気持ちでいたという10番は「クロスからのこぼれというのは常に狙っていた。相手がゴールカバーに入ってきていたので結構難しいなと思ったんですけど、入って良かったです」と後半21分、DF本間温士のグラウンダーのクロスをキーパーが弾いたボールにしっかりと詰めた。

大会初ゴールから決勝点となる2点目を奪った須藤だが、試合後聞こえてきたのは反省の声。「ゴールという結果でチームを救えたのはすごく嬉しいですけど、試合の内容的に自分たちがやりたいサッカーもできていないので、そういうところはやっぱり悔しいですね」。

前半は中央に絞って攻撃を引き出そうとしたが、なかなかチームとしてもショートパスが繋がらず。後半は修正し、リズミカルな攻撃も出たが、それを前半から見せていきたいところ。また相手の徹底した対策に対し「今日も何本かチャレンジしましたけど、やっぱり相手も2枚目、3枚目と準備してきた」と、得意のドリブル突破を見せることができなかった。

それでも「一番嫌がっているからこそ、やっぱりそこを消してくる。そこはやっぱり自分の良さを出して、負けずにやっていきたい」と負けず嫌いの顔も。「多分誰一人としてこの試合には満足していない。結果はもちろん大事ですけど、でもやっぱり自分たちは内容も求めているというのもある。また修正して決勝ではもっと「昌平らしい楽しいサッカー」をしたいと思っています」。

決勝は結果と同時に内容にもこだわり、3年間積み上げた「昌平らしいサッカー」で連覇を掴む。

一時は同点ゴールも。初スタメンに応えた山本滉「チームのために何かできないか考えていた」

正智深谷のFW山本滉はこれが今大会初スタメンだった中で、一時同点となるゴールを奪った。

本来はエース核である山本だが、予選が始まる少し前に股関節を負傷。今大会は途中出場が多かった中で「チームのために何かできることがないかということを考えていた。今日は1点でもいいから点を取ろう!と思って試合に臨みました」と初のスタメン出場に意欲を燃やしていた。

試合は先制を許したが、正智深谷は一歩も引かず粘り強いサッカーを見せる。山本も前線から積極的にプレスをかけて、セカンドボールの奪取に貢献した。すると前半26分、「良い形でサイドバックがオーバーラップして、良い形で中に(倉林)大河くんが競り勝ってくれた。こぼれ球は狙っていた」と山本はキーパーが弾いたボールに詰めて右足でチームに勇気を与える同点弾。

「あの瞬間はチームのために何かできたんじゃないかなと思ったんですけど…」としたが、「やっぱり後半の入り方が少し悪かったかなと思っています」と後半の立ち上がりを悔やんだ。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 4-1 正智深谷
1(前半)1
3(後半)0