第60回 関東高校サッカー 昌平 vs さくら清修
関東高等学校サッカー大会2日目。埼玉スタジアム2002第2グラウンドではAグループ準決勝が行われ、埼玉県代表の昌平高校は栃木県代表のさくら清修高校と対戦。後半に3点を奪った昌平が3ー0で試合を制し、関東制覇に向け決勝進出を果たした。
この日は1回戦とは打って変わり序盤からボールを支配した昌平。ディフェンスラインでボールを回しながらも、FW佐相壱明へのロングボールなどから、さくら清修を攻め込んでいく。前半22分にはMFの原田虹輝のパスを受けたMF渋屋航平が思い切ってミドルシュートを狙ったが、ゴールキーパーの腕を弾いたボールは惜しくもクロスバーをかすめた。
しかしその後もボールこそ握るもなかなか得点は生まれず。連戦に加えて前日は延長を含む100分間を戦ったせいもあってか「中盤の距離感が遠かった」と渋屋。昌平の攻撃のバロメーターとなるボランチにも後ろからボールが入らず、思うように攻撃を展開できない。最後方からチームを見ていたGKの緑川光希も「うまくいっていないな」と感じていたという。
30分に迎えたカウンターのピンチは緑川の好守で防いだが、前半はペースを握りながら0ー0とやや不完全燃焼で終わった。「(前半は)本当に攻めないし、動きも少なかった。疲労の部分は相手も一緒(さくら清修も延長戦の末に勝利)なので言い訳にはできない」と話したという藤島崇之監督。指揮官からは「ビビらずに行け!」(緑川)という檄が飛んだ。
このメッセージに選手たちが奮起する。後半は距離感良く、前線からうまく嵌めながら「一個ギアを上げて前に出ていった」とMF古川勇輝。後半7分、ボランチでコンビを組む原田から古川に縦パスが入ると、相手のアンカーを引き連れて渋屋にスルーパス。これを渋屋が再び相手GKの手を弾きながら今度はゴールに突き刺した。
「監督からも当てても入る。どんどん打っていけ」と言われていると昌平の10番。前回決めた得点もこの第2グラウンド(関東大会予選準決勝・浦和西高校戦)で「このグラウンドはついているんですよ」とはにかんだ。
これで勢いに乗ると後半14分に追加点。得点を挙げたのは先制点アシストの古川だ。
「普段はあまりミドルシュートは狙ったことはない」というが、「コースを狙うシュートというのはいつもイメージにある」という2年生レフティ。先日欧州チャンピオンズリーグで現行方式となって以降史上初の連覇を達成したレアル・マドリードの司令塔、トニ・クロースを意識したというコントロールシュートは見事な軌道を描きながらゴールに吸い込まれた。
さらに勢いを増す昌平はMF髙見勇太やFW森田翔などが貪欲に仕掛けていく。後半32分にはセットプレーからDF石井優輝がヘディングを叩きつけるも、これはライン上でかき出されて追加点とはならず。終盤にかけては渋屋や古川など足をつる選手が続出したが、そんな中でも試合に終止符を打ったのは今大会好調をキープする背番号14の古川だった。
アディショナルタイムを迎えた後半43分。佐相がキープし、森田が打ったシュートのこぼれ球を詰めた。1回戦に続きこぼれ球を押し込んだ古川。
「調子が良い時はボールがこぼれる位置や予測がだいたい当たる。今大会でそういう読みが当たっているということは、調子がいいんじゃないかと思います」。
すでに左足をつっており、このプレーで右足もつってしまったということで、ベンチを含め仲間たちからは苦笑いが漏れたが、この日2ゴール、1アシストとすべての得点に関わる大活躍で昌平高校を決勝に導く原動力となった。
石黒登(取材・文)
試合結果
昌平 3-0 さくら清修
0(前半)0
3(後半)0