第99回 全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会 決勝トーナメント1回戦 川口青陵 vs 立教新座
今年も選手権埼玉2次予選が開幕。立教新座と川口青陵の一戦は3-0で立教新座が勝利した。
前半良い立ち上がりを見せたのは川口青陵。中盤のMF倉持廣斗、MF堀江葵利のところからロングボールを配球して相手を押し込み、そこで生まれたセットプレーからゴールを狙っていく。
一方、開始15分は重心の重さも見られた立教新座もMF高松大地のスピードを生かした速攻などで試合の流れを引き寄せると、クーリングブレーク後は落ち着きを取り戻し、同校らしく後ろから組み立てる形も。そこから左サイドのMF矢嶋佑宇らを起点に連続して攻撃を仕掛ける。
すると得点はその左サイドからだった。後半31分、左SBの森田幹杜が高い位置でボールを奪うと、そこから1タッチ、2タッチのスムーズな連携でサイドを攻略。森田のクロスにニアでFW中野渡礼旺が潰れて、その裏に走り込んだMF戸祭雄登が左足で流し込んで先制した。
後半も優勢に進めた立教新座は30分、MF種田要のフリーキックをファーで中野渡がヘッドで折り返し、DF今野朝陽が詰めて追加点。さらにその分後には右サイドの距離のある位置から再び今野が今度は左足でキーパーの上を越す技ありシュートを決めるなど3-0で勝利した。
次戦は成徳深谷との決戦。成徳深谷は2年前の関東大会予選決勝で敗れた相手だ。「その悔しさを持っているのは多分一番私だと思います」という前田和伸監督はもちろん、現在の3年生はその試合を目の前で見てきた選手たち。2年前は途中出場し、現在チームのキャプテンを務める森田は「あの時は何もできずに飲まれてしまった。今度は自分が引っ張る立場として周りをしっかりと鼓舞しながら、成徳に絶対に勝てるように頑張りたい」と2年越しのリベンジを誓った。
「大抜擢」に応えた今野朝陽が2ゴール。得点力が持ち味の大型1年生SB
2ゴールを奪った1年生SB今野朝陽はこれが公式戦初出場。「もう本当に最初の方はガチガチだった」といきなりの大一番での起用に序盤はなかなか身体も動かなかったが、「だんだんとプレーしていくうちに慣れて、後半は2点取れたので本当に良かったです」と笑顔で振り返った。
実はメンバー入りしたのはエントリー期限ぎりぎり。直前まで怪我もあり、当初は「メンバーに入れるのがやっとという見立てだった」という中で「今週のトレーニングが非常に良かったというか、パフォーマンスが良くできていた。僕の中では「大抜擢」だった」と前田監督は明かす。
今野の武器は攻撃力に加えて、その「得点力」だ。中学校年代はGRANDE FCに所属。「中学の時から自分はどんどん前に上がっていって得点に関わりたいタイプ」(今野)。指揮官も「意外にも得点を取る能力というのが彼はある子。普段からサイドバックですけど、点を取っているシーンはよく見る」という。アピールとなった試合週の紅白戦でもしっかりと得点を挙げていた。
するとこの試合でもその得点能力を披露。後半フリーキックの折り返しをきっちり詰めると、圧巻だったのが自身2点目。「風間さんから受けた時にちょっとキーパーを見て、立ち位置が少し前に寄っていたので、思い切り振れば入るかなと思ったので自信を持って振り切りました」。
その際に選択したのは利き足ではない左足だ。「左足で飛ばす方はできるんですけど、シュートというのはあまり意識は持っていなかった。でも最近意識して練習するようになって、それがうまくいった」と今野。まだかなり距離もあった中で、シュートは山なりの軌道を描きながらキーパーの上を越えてネットに突き刺さるゴラッソ。指揮官の「大抜擢」に2ゴールで応えた。
1年生ながら179cmと長身で身体の厚さもある。さらに得点力のある攻撃的サイドバックとなればそれだけでも大きな期待を抱かせる。今後は同じ大型SBとして目標としているという日本代表DF酒井宏樹(マルセイユ)のように、攻守での早い切り替えや左足のさらなる向上など課題はあるが、これからの伸びが楽しみな選手だ。
石黒登(取材・文)
試合結果
川口青陵 0-3 立教新座
0(前半)1
0(後半)2