第99回 全国高等学校サッカー選手権大会埼玉県大会 一次予選2回戦 川口 vs 和光国際
選手権1次予選2回戦。B組では和光国際が延長戦の末に3-2と逆転で川口を下した。
ゲームはいきなり動いた。川口はキックオフからの展開でロングボールを敵陣に入れると、FW山﨑零央がポストプレーで落とす。これをMF蓮井陽向がダイレクトで蹴り込むとボールはキーパーの頭上を越えてネットイン。開始30秒の電光石火のゴールで川口が先制に成功した。
その後も川口は前から積極的にプレスをかけるなど、前半からインテンシティの高いプレーを見せる。中盤以降は和光国際がボールを持つ時間も増えたが、ディフェンス陣が高い集中力を見せてシュートまでは打たせず。するとアディショナルタイムに蓮井陽の右コーナーキックにファーサイドでキャプテンのMF山口大河がヘディングで合わせて2-0として前半を終えた。
一方、出会い頭の失点からなかなか流れを掴めなかった和光国際も後半に入り反撃。5分、フリーキックを競ったこぼれ球がゴール方向へ流れると、このチャンスを見逃さなかった10番のFW丸山畝史が角度のないところからヘディングで叩き込みついに追撃の狼煙を上げる。
後半は攻める和光国際と守る川口という構図に。和光国際は押し込みながらも得点が奪えない時間が続いたが43分、これがラストアタックと見るやキーパーを残し全員が相手ゴール前に。フリーキックからの2次攻撃をMF齊藤翔太がヘディングで落とすと、こぼれ球に丸山がダイレクトで右足を振り抜いて土壇場で同点に追いつき、勝負の行方は延長戦にもつれ込んだ。
川口は延長前半9分に蓮井陽が右足で狙ったが、ここは和光国際GK佐藤一真が横っ飛びでセーブ。後半は再び和光国際が攻める中で7分、MF森下航成のフリーキックが相手のオウンゴールを誘ってこれが決勝点となった。0-2からの逆転劇で和光国際が代表決定戦進出を決めた。
立ち上がりやセットプレーにこだわるなどチームの約束事として練習から徹底している「和国ズウェイ」は体現することができなかった中で「今日は3年生がよくやってくれたと思います」と翠川潤監督。「今年は出場機会が厳しいという子も残ってくれて、一生懸命練習もしてくれている。そういったところが最後の点に繋がったのかなと思います」と3年生の頑張りを認めた。
仲間たちの想いも背負って。10番FW丸山畝史がチームの窮地を救う2ゴール
前半を終えて0-2という状況。「もうダメかもしれない」という気持ちもあったという。それでも「ベンチにいる3年生や辞めていった人たち、あとは先輩たちや学校の人たちにも試合前に「頑張れよ」みたいなことを言われていて。その人たちの顔がハーフタイムで浮かんで、それで力が出たと思います」とFW丸山畝史。託された想いが諦めかけた心にエネルギーをくれた。
すると後半5分にセットプレーのこぼれ球を頭で叩きつけて反撃の狼煙。その後も学校の持久走大会では陸上部と1、2を争っているという走力、またこちらも校内1位だという短距離のスピードを生かしてサイドを何度もアタック。その中で何度も倒され痛む場面もあったが、「ファールでしか止められないFWというのは自分の目指してきたところ」とチャレンジし続けた。
その後も攻め続ける中で得点が奪えず苦しい時間帯が続いたが、「チームを信じていましたし、絶対に自分の前にこぼれてくると思っていました」というのはストライカーの本能だろうか。そしてその瞬間はラストワンプレーでやってきた。後半43分、全員攻撃で味方が繋いだボールが丸山の前にこぼれると迷わず右足を一閃。「正直キーパーは見ていなくて。余計なことを考えず、もう絶対に決めるんだという気持ちだけで打ち込んだシュート」がチームを窮地から救った。
「もうサッカー人生の中でも一番心に残るゴール。試合中だったんですけど、泣きかけて。ベンチの3年生にも一目散に行けて。ずっとやってきた仲間なので、本当に良かったです、マジで…」。
実はこのコロナ渦で一度はサッカーを辞めようとしていたという。実際に顧問にも退部の意思を報告。その中で「でもやっぱりこの頑張っている3年生がいて、こいつらのためにも自分もいてあげないといけないと思って残りました」。そして一言、「本当に残って良かったです」。
終盤は「もうつってましたね(笑)」という中で、限界まで走り抜いてチームを勝利に導いた。
代表決定戦も仲間たちの想いを背負って挑む。「やっぱり3年生、学校の人たち、辞めた人たち、そして家族を含めて、僕たちは全員の気持ちを背負っている。次は失うものはもう何もないですし、全部出し切って、3年間のみならず、自分のサッカー人生の悔いがないように頑張らなきゃいけないと思います」と丸山。代表決定戦の相手は強豪・狭山ヶ丘だが、苦しい時、諦めそうな時は仲間たちの顔を思い浮かべながら勝利を目指す。
石黒登(取材・文)
試合結果
川口 2-3 和光国際
2(前半)0
0(後半)2
0(延前)0
0(延後)1