第99回 全国高等学校サッカー選手権大会埼玉県大会 一次予選 越谷南 vs 熊谷農業

今年も選手権1次予選が開幕。V組では越谷南が5-2で熊谷農業との打ち合いを制した。

序盤からボールを握った越谷南は前半2分、中盤でボールを収めたFW﨑田凌平が「もう振り向いてシュートを打とうという気持ちでやりました」。ゴールの方向を向くと一気に相手ディフェンスの間を割ってエリアに侵入。冷静に右足でコースに蹴り込み早々にゲームを動かした。

その後も越谷南はFW吉冨樹の強烈ミドルなどで攻め込む。33分にはゴール前でフリーキックを獲得するとDF岩佐空知が壁の隙間をついた的確なキックを右下隅に流し込んで加点。後半5分には連続攻撃からDF西塚喬太のクロスに﨑田がこの日2点目を合わせてリードを広げた。

一方、前半はなかなか攻め手のなかった熊谷農業は後半15分、右サイドのMF内田瑛登がスピードに乗ったドリブルでエリアをえぐってクロス。これをファーでFW石関蒼空が決めて1点を返す。するとこの1点を境に熊谷農業が息を吹き返す。出足の速いプレスで相手にプレッシャーをかけ、ワイドのスピードを生かして反撃に。GK神澤仁も好守でチームを盛り上げる。

すると後半38分に追撃弾。石関の縦パスにFW清田大夢、相手ディフェンス、ゴールキーパーと3者が交錯する展開となった中でいち早く触った清田が気持ちで押し込み1点差と迫る。

しかし、越谷南は後半42分に獲得したPKをキャプテンのDF松田啓治がしっかりとネットに蹴り込むと、終了間際には吉冨がヘディングで決めて再び引き離し、5-2で初戦を制した。

「いるといないじゃ全然違う」。生粋のキャプテンシーでチームを牽引するDF松田啓治の存在

第59回大会で浦和南を選手権に導いた石神英徳監督が「背は小さいんだけど、あいつがいるといないじゃ全然違う」と信頼を寄せるのが後方からチームを盛り上げる主将・松田啓治の存在だ。

「僕はこの学校は8年目なんだけど、ああいう存在は意外に珍しい。物静かにもくもくと真面目にやるタイプが多い中で、ああやってキャプテンシーを出して、周りにバーンと言えるようなのがいままでのキャプテンでもあまりいなかった。そういう骨のある子、サッカーで、という子はみんな私立に行ってしまう。ああいうタイプは公立ではなかなか出てこないですね」(石神監督)

そのことについて松田は「自分はあまりプレーでみんなを引っ張るということはできないので、やっぱりチームを鼓舞して、全体を盛り上げるというふうには意識してやっています。なので、そういうところがキャプテンシーという部分に繋がってくるのかなと思います」と分析する。

その信頼が示すように小学校、中学校と部長を務めてきた生粋のキャプテンシーの持ち主だ。草加中ではチームを久しぶりの県大会出場に導き、「自分が積み上げてきたチームで歴史を作れたのは嬉しかった。部活動を選んで良かったなと思いました」とチームを牽引する喜びを知った。

高校でも私学などからの声もあったという中で学びたい学科などもしっかりと考えて越谷南を選択。「ここに入るなら自分はキャプテンをやってチームをまとめようと思っていた。それがうまく繋がって、去年の大会だったり、いまの試合だったりというふうに繋がっていると思います」と松田。最後の選手権に向けては「ひとつひとつ、1週間ごとですけど、しっかり調整して次の試合、次の試合でちゃんと目と鼻の先を見てチームをコントロールできたり、チームを盛り上げて行けたらいいなと思います」。持ち前のリーダーシップでチームを2次トーナメントに導く。

石黒登(取材・文)

試合結果

越谷南 5-2 熊谷農業

2(前半)0
3(後半)2