令和元年度 高校サッカー新人大会 準々決勝 埼玉栄 vs 西武台

埼玉県高校サッカー新人大会・準々決勝(9日、西武台会場ほか)。西武台と埼玉栄の一戦は先制を許したものの、その後セットプレーなどから4得点を奪った西武台が4ー2で制した。

 

まず先にスコアを動かしたのは埼玉栄だった。前半5分、右サイドからMF川崎涼介がクロスを入れると、中央でMF山田翼がドンピシャのタイミングでヘディングを合わせて先制した。

しかし西武台も直後の前半7分、ロングスローからボックス内でFW大野田駿が繋ぎ、最後はDF小野魁土が決めてすぐさま同点に。さらに14分にはDF栗田海飛のコーナーキックからファーサイドでDF岡崎大志郎がヘディングで決めて失点から9分間で試合をひっくり返した。

追う展開となった埼玉栄はMF桑田祐輔を起点に、MF篠﨑翔やFW岡田滉士が関わって1点を奪いにいくが、西武台が主将のDF大川和貴らが中心となってここを凌ぐと前半32分、最終ラインの小野のフィードに抜け出た大野田がキーパーとの1対1をループで沈めて3ー0とした。

後半は西武台が完全にゲームの流れを掌握。6分には再び栗田の正確なコーナーキックから今度は1年生DF原田蓮斗が頭で突き刺して4点目とした。埼玉栄は30分に山田のアシストから1回戦で2ゴール1アシストと全得点に絡んだDF原田一輝が1点を返したが、反撃も及ばず。両軍合わせて6ゴールが生まれた乱打戦を制し、西武台が昨年に続きベスト4入りを決めた。

西武台は4得点のうち3点がセットプレーから。守屋保監督は「内容としてはまだまだ」としながらも「球際」の部分を評価。「うちらしくないセットプレーとかそういうところでも、みんながファイトをするようになって、逃げないでやれるようになってきている。まだまだ技術的な崩しだとかテンポだとか、もっともっと上げてはいきたいと思っているんですけど、そこのところは今後徐々に上がってくるんじゃないかな。まだまだ課題はありますけど相手の一番嫌なところで身体を張れるようには少しずつなっていると思う」と振り返った。

西武台が挑む新スタイル「3ー4ー3」 鍵を握る両WB「走れるようになってきた」と岡崎。栗田はキックで2アシストと存在感

昨年の選手権決勝では0ー4で昌平に敗戦。今年も昌平が横綱として君臨してきそうな中で守屋監督は「守りだけで勝ちたいとも思っていないので、やるとなったらまた4点取られようが5点取られようが攻めに行くと思う。じゃないと子供たちも伸びなかったり、成長しない。今後そういう形はどんどん作っていきたい」。今年も西武台は攻撃的なスタイルで頂点を狙う。

そのひとつの施策として取り組んでいるのが「3ー4ー3」の形。ここ数年、西武台は「4ー3ー3」システムを敷いており、現在の2年生も1年生の時から親しんできた形という中で、ここで新しいシステムに取り入れてきたあたりに今年にかける意気込みが感じられる。

鍵を握るウイングバックの岡崎と栗田はもともと純粋なサイドバックだった中で新ポジションにも意欲的だ。左の岡崎は「自分のポジションは運動量が大事になってくるので走り込みもしっかりしています。そういうところでは走れるようになってきている」。右の栗田は「攻撃参加が増えるのは自分にとってはいいこと。ボールを受ける位置が少し高いので、ミドルシュートであったり、いろいろな選択肢がある」と武器の攻撃性を生かせるポジションを歓迎する。指揮官も「岡崎がだいぶ良くなっている。(両選手ともに)攻撃力も上がってきた」とする。

また栗田はセットプレーのキッカーとしても存在感。この日も正確な右足のキックで2点を演出した。「キックは自分の一番の武器。大体ここに飛ばしたいというところに飛ぶので、あとはミートすることを意識しています。練習からニア、ファー、真ん中と合図を決めて、相手や流れに応じて決めているので、コーナーは結構チャンスになる」と栗田。平均身長はそこまで高くはない中でセットプレーで取れているのはキックの力も大きいだろう。「後半はやっぱりどうしても上がる回数がちょっと落ちた」と体力面は今後の課題だが、プレータイムでも彼が駆け上がり、正確なクロスを供給する場面が増えれば大きなチャンスに繋がりそうだ。

直前の「ジャパンユースサッカースーパーリーグ」では強豪・富山第一に勝利。「3バックだと前からプレスをかけられる。県外のチームとやっても守備が嵌ったり、ボールを奪う回数も多かったので、意外と通用するなというのは感じました」と栗田。守備の部分では手掛かりも得ており、今後はいかに攻撃の場面で厚みを持たせられるかが新システム成否の鍵を握る。

昨年はインターハイで久々の全国に出場したものの、初戦で高知に敗れ2回戦敗退に終わった。「全国でしっかり戦えて、勝てるようにというのはやっぱり描いています」と指揮官がいうように最終的な地点は全国での勝利。そこに向けて西武台のチャレンジングな1年が始まった。

石黒登(取材・文)

試合結果

埼玉栄 2-4 西武台