令和元年度 全国高校総体 埼玉県予選決勝 西武台 vs 聖望学園

インターハイ予選決勝(23日、Nack5スタジアム大宮)。西部支部同士の対決となった今年のファイナルはFW谷直哉がハットトリックの活躍を見せた西武台高校が3ー2で初優勝を狙った聖望学園を振り切り、4年ぶり10度目の優勝、11度目のインターハイ全国大会行きを決めた。


序盤から出足の鋭い守備でリズムを掴んだ西武台は前半14分、ディフェンスラインからの縦パスをFW大野田駿が敵陣でカット。そのままショートカウンターを繰り出すと、MF村田智哉のスルーパスに反応したFW谷直哉がキーパーとの1対1を制して左足で押し込み、先制した。

その後も西武台は運動量高く前からプレスをかけ、警戒していたという相手のミドルに対してはディフェンス陣を中心に身体を寄せてブロック。前半35分には左サイドのFW寺川洋人のクロスをフリーで抜け出した谷がスライディングシュートで突き刺してリードを2点と広げた。

一方、前半は西武台の守備を崩せずにいた聖望学園も新人戦支部予選決勝同様、後半一気に押し込む。運動量の落ちた相手に対し、得意のパスワークでギャップを突いて次々とスルーパスを通していくとクリアボールも拾って2次、3次攻撃へ。するとついに攻撃の形が実を結ぶ。

後半25分、FW塚田悠太郎のアーリークロスに抜けた右サイドバックの島村颯汰が仕留めて1点差に。さらに連続して攻め込むと28分に再び塚田がチャンスメイク。エリア内で反転からクロスを送り、これをFW森田悠仁がヘディングで決めて、3分間で試合を振り出しに戻した。

それでも最後に勝負強さを見せたのは西武台。連続してカードを切って攻撃のメッセージを明確にピッチ内に伝えると決勝点が生まれたのは後半33分。失点直後に投入された1年生FWの細田優陽が左サイドを仕掛け、クロスに滑り込んだ谷がダイレクトシュートでネットを揺らした。今大会はまだノーゴールに終わっていたエースが全国決めのファイナルでハットトリックの活躍を見せた西武台が3ー2で迫る相手を振り切り、4年ぶりのタイトルを掴み取った。

谷直哉が決勝で鬱憤晴らすハットトリック! 関東予選で泣いた「3」を歓喜の「3」に

決勝ゴールを決めると、仲間たちの元へと駆け出したエース・谷直哉の指の形はゴール数と同じ「3」。「3点取ると試合前から決めていた。今大会は無得点だったのでここまで溜めてきて、もう3点取って勝つぞと仲間にも言っていました」。有言実行のハットトリックだった。

前回泣いた「3」をという数字を歓喜の「3」に変えた。関東予選準決勝の浦和東戦ではまさかのPK3本失敗。決勝進出を逃した中でトーナメント後はすぐに切り替えて、今大会で大活躍を見せたGK高橋クリスとPKを猛練習。迎えたインターハイ予選3回戦の浦和南戦はPK戦で5人目のキッカーとなると「足が止まっちゃうかな」という守屋保監督の不安とは裏腹に「自信がありました」という背番号9はしっかりと振り抜いてネットを揺らし、悪夢を振り払った。

今大会は無得点だった中で「3点を取る」と公言し臨んだ決勝戦。前半14分にスルーパスに抜け出しキーパーと入れ替わる形で先制すると、35分にはクロスに滑り込む形で2点目。後半は苦しい展開で同点とされたが、「最後は点を決めて終わる」とすぐに切り替えたというストライカーは33分、クロスに「気持ちで突っ込みました」と気迫の3点目を突き刺し、勝負を決めた。ヘディングの印象が強かった中でこの日の3得点はすべて泥臭く滑り込んでの形。「シュート練はずっとしてきた。足もあるんだぞというのをアピールできたのかな」とはにかんだ。

指揮官曰くOBの清水慎太郎(現水戸ホーリーホック)を彷彿とさせるというFW。今年のインターハイの舞台はその清水を擁し、4強入りを果たした沖縄だ。9年の時を経て当時のエースと似た匂いをさせるストライカーが同じ沖縄に立つというのは巡り合わせだろうか。「目標は優勝と点をたくさん取ること」。全国でも得点を量産し目標のプロ入りに向けアピールする。

聖望FW塚田は後半に存在感を見せるも… 今冬は「自分が決定づけられるような選手に」

後半は2アシストで同点まで持っていったものの、勝負を決める1点を奪われてタイトルにはあと一歩届かず。聖望学園FW塚田悠太郎は「すごく悔しいですね…」と言葉を絞り出した。

前半は「サイドに開きすぎて相手の形に嵌ってしまった」という中で、後半は中央よりにポジションを取るよう修正すると、持ち前の攻撃センスを発揮。25分に右足のアウトで島村に絶妙なクロスを送って1点を返すと、28分にはエリアのギャップで味方のパスを引き出して反転から中央の森田にドンピシャのクロスを上げて同点としたが、直後に決勝点を奪われて敗れた。

「2点追いついた後は完全にこっちの流れだった中で西武台はああいうところを決めてくる。高校サッカーは気持ちが大事。技術とかチームのコンセプトは上を行っていたと思うので、やっぱりあとは気持ち、きつい時間帯でも全員で走ってというのが必要だなと感じました」。

今大会前にはJクラブの練習にも参加。実際にプロ選手たちのスピード感を体感したが、「ドリブルとか技術的な面では通用するところはあった。できるなっていう感触はありました」。現時点では目標とするプロに加え、大学、留学など、さまざまな選択肢を持っているという。

それでもその前にやらなければならないことがある。「聖望学園創立以来タイトルはまだ取れていない。絶対に選手権は取れるようにあと少し頑張っていきたい」とした10番は「今大会は相手が自分に対して研修してきてやりづらい部分はありましたけど、今日の試合は周りを意識して使うことができた。もう一段階レベルアップして選手権では自分が試合を決定づけられるような選手になりたいと思います」。より決定的なプレーヤーになって冬にリベンジする。

石黒登(取材・文)

試合結果

西武台 3-2 聖望学園

2(前半)0
1(後半)2

優勝:西武台 ※4年ぶり8度目
全国高校総体出場:西武台 ※4年ぶり11度目
(今年度より埼玉県代表は1校のみになりました)