平成30年度 埼玉県高校サッカー新人大会準々決勝 成徳深谷 vs 西武台
高校サッカー新人大会準々決勝。西武台高校(西部支部1位)は前年覇者の成徳深谷高校(選手権4強シード)をスコアレスからのPK戦の末に下し、2年連続のベスト4に駒を進めた。
早くも昨年の決勝カードが実現する中、相手のストロングで上回った西武台が借りを返した。
立ち上がりから成徳深谷の得意とする個々の球際や空中戦で積極的に勝負を仕掛けていくと、前半8分にはMF今田剛のクロスに合わせたFW大川和貴のシュートがクロスバーを直撃する。その後も相手のお株を奪うようなロングスローやセットプレーからゴールを狙っていった。
対する成徳深谷は1トップの戸澤雄飛が単騎で仕掛けるが、西武台も集中して守って主導権は渡さない。この状況に成徳深谷は前半32分に1枚目のカードを切って10番のFW北原港を投入。すると北原は直後のファーストプレーでいきなり決定機を迎える。相手ディフェンスのクリアボールを寄せて奪うと、そのまま抜け出して右足で狙ったがシュートを惜しくもサイドネット外。前半は互いに1本ずつの決定機を作り出して、スコアレスでハーフタイムを迎えた。
西武台は後半15分にコーナーキックから、21分にはDF森下怜のフリーキックが枠をとらえたが、いずれもGK鳥羽凌太がファインセーブ。成徳深谷は後半にもう一枚の切り札、FW間中実来を投入し勝負に出るが、両チームともに決定打を打つことはできないまま90分を終えた。
成徳深谷は延長後半7分、北原が仕掛けてシュートを放つが、これはクロスバーに阻まれてゴールならず。勝負の行方は奇しくも昨年の選手権と同じく、PK戦に委ねられることとなった。
互いに3人全員が成功して迎えた4本目。西武台はGK仲山晃平が相手のキックを完全に読み切って左に飛んで止めると、成徳深谷は続く5人目のキッカーが失敗。4人すべてがネットに運んだ西武台がリベンジを果たし、7度目の優勝に向け、2年連続の準決勝進出を決めた。
相手のストロングポイントで上回った西武台 一方で見えた課題も
戦前は昨年同様堅守速攻を貫く成徳深谷に対し、西武台がいかにそこを連携で外していけるかに注目が集まっていたが、蓋を開けてみればピッチに描かれたのは予想とは違う形だった。
序盤からあえて成徳深谷の得意とする空中戦や球際で勝負をかけていくと、セカンドボールでも優位に立ってカウンターの機会を許さず。主将のDF佐野慧至は「まずは相手の長所から上回っているぞと、長所を潰すつもりで入った。相手にあまり打たせなかったのは良かった」としたが、同時に「その中でワンタッチのプレーだとか、そういうのをもっと利用していければもっと展開できたり、もっと自分たちに良い流れができたと思っています」と反省を語った。
守屋保監督も「青森山田は流経のハイプレッシャーの中、ワンタッチでセカンドボールを繋げる視野と能力を持っている。セカンドボールをワンタッチで味方につけるのか、それともスペースへしっかりと繋ぐボールを出すのか、それともバックパスでもしっかりとワンタッチで繋いで、次のやつに良い判断をさせるのかというのが、まだできていないのでそこはやっていきたい」と、プレッシャーの中でも意図的なワンタッチパスを繋いでいけるかを課題に挙げた。
1年時の序列は一番下 「ひたむきさ」で上り詰めた仲山が呪縛終わらせるPKストップ
昨年先輩たちが泣いたPK戦で西武台GK仲山晃平が暗い記憶を明るい記憶に塗り替えた。
PKを意識し出したのは延長後半に入ってから。気持ちを整えて臨むと、相手の4人目のキッカーが右に蹴るのを完璧に読み切ってストップし、応援席に向けてガッツポーズ。その後、成徳深谷の5人目が外して勝負が決まると、勢い余った仲間たちに押し倒されて、もみくちゃになりながら勝利の瞬間を味わった背番号12は「みんなに迷惑をかけていたので」と喜んだ。
昨年の選手権予選3回戦・成徳深谷戦は応援席から見守った中でチームはPK戦の末に敗退。8強入りを逃し、悔し涙を流す先輩たちの姿をピッチ外から見つめることしかできなかった。
もともと1年時の序列は13人中の13番手(1年生は4人)と一番下。同ポジションでは同級生の高橋クリスがひとつ上の学年でデビューを飾る中でなかなかトップチームには縁がなかったが、持ち前の「ひたむきさ」で練習でも常に最後まで残ってトレーニングに打ち込むと、新チームからトップチーム入りを果たし、そのまま1枠のレギュラーポジションを掴み取った。
ちなみに新チーム始動後、公式大会での2敗はいずれもPK戦によるもの(東京ユースマクロンカップの日本大学戦とニューバランスカップの横浜創英高校戦)。昨年から続くPK戦の呪縛を終わらせたキーパーは大一番の準決勝・昌平高校戦に向け、大いに自信を深めた様子だった。
石黒登(取材・文)
試合結果
成徳深谷 0(3PK4)0 西武台
0(前半)0
0(前半)0
0(延長前半)0
0(延長後半)0
3(PK)4