第97回全国高等学校サッカー選手権大会 埼玉県1次予選会 2回戦 栄北 vs 浦和麗明

選手権1次予選会2回戦。栄北高校と浦和麗明高校の一戦は、浦和麗明が開始1分で先制するも、前半の最後にFW岩吉補高の2得点で試合をひっくり返した栄北が後半さらに1点を重ねて3ー1で逆転勝ちし、代表決定戦に駒を進めた。栄北は代表決定戦で杉戸高校と対戦する。

試合はいきなり動いた。先制は浦和麗明。前半1分、相手守備がまだ整い切る前の一瞬の隙を突いたFW金澤健斗がループ気味のシュートをネットに流し込んで、早々に1ー0とした。

立ち上がりに痛い一発をくらった栄北だが、その後は慌てずに落ち着いて対応しながら時間の経過とともに徐々にチャンスを増やしていく。すると前半35分に岩吉の果敢な突破がエリア内で相手のハンドを誘いPKを獲得。これを岩吉が自らきっちりと左下隅に決めて同点とする。

これで勢いに乗ると直後の前半38分には、MF深野涼介の左コーナーキックを岩吉が今度は一瞬の身のこなしからマーカーを外し、力強いヘディングで突き刺してこの日2点目。背番号10の電光石火の連続得点で栄北が2ー1と試合をひっくり返すことに成功して前半を終えた。

後半2分には前半から左サイドでスピード感のある突破を見せていたMF中村颯汰がドリブルで相手ディフェンスを振り切り、角度のないところから右足のアウトで決めて栄北が追加点。

なんとか1点を返したい浦和麗明は後半19分にDF水野隼佑が遠い位置から狙っていくも、これは栄北GK岩田大輝が外に弾き出してゴールとはならず。終盤は交代枠をフルに使いながら、ゲームをコントロールした栄北がそのまま危なげなく締めて代表決定戦進出を決めた。

「少し想定外のスタートだったんですけど、慌てないで試合を運べたことが大きい」と栄北・武田直樹監督。早々に失点も、そこから前半のうちに逆転したことは「大きな収穫」とした。

一昨年のインターハイ予選で県大会に初出場。次の代表決定戦に勝てば初の選手権決勝トーナメント進出が決まる。武田監督は「なんとかシード校を倒すためにやってきたので勝たせてあげたい。少しでも相手の嫌がるようなサッカーをして勝てるように頑張りたい」と意気込み。

キャプテンの深野は「今日は入りの弱さが出てしまったので、次は入りからガンガンあげていって、まずは0で抑えたい。(県大会のことは)あまり考えないで、いまできることをしっかりとやって勝てたらいい」と必要以上に気負わず、「楽しくサッカーをしたい」と語った。

岩吉が2ゴールで逆転劇の主役に! 2点目は相棒・深野のキックをドンピシャヘッド

「絶対に取れると思っていた」という岩吉。前半終了間際の2得点で逆転劇の主役となった。

同点弾は前半35分。自ら得たPKをセットすると「プレミアリーグのハイライトを見てPKのイメージもあった。誰のキックかは覚えていないんですけど、めちゃくちゃ間を置いている選手がいて、俺も自分の空気を作って、1回シーンとさせてから蹴ろうと思っていました」。一呼吸置いて自分のペースに引き込み、冷静にキーパーの逆を突いてゴールに流し込んだ。

するとそのわずか3分後には深野のコーナーキックを「いつも良いボールを蹴ってくれる。あとはドンピシャで合わせるだけだった」と力強く頭で叩きつけて逆転ゴールとした。岩吉と深野は幼稚園からボールを蹴ってきた仲。中学校で一度離れたが、市の選抜チームなどでは交流があったそうで「一緒の高校だとわかった時にはすごく嬉しかったですね」と深野は明かす。

現在3年生は岩吉と深野のみ。他の部員たちは受験勉強などもあり、インターハイ後に引退の道を選んだが、「自分は本当にサッカーが大好き。サッカーはやめたくなかった。自分は誰がいなくなっても続けようと思っていました」と強い想いを持ってこの選手権に懸けてきた。

「本当に県大会に行きたい。自分が最後に点を取って、しっかり勝ち切って、良い締めくくりをしたいと思います」。有終の美はまだ早い。勝って初の決勝トーナメント行きを決める。

初の公式戦に臨んだ浦和麗明 1年生チームは課題と収穫も持ち帰り来年の新人戦へ

今年4月から共学化を果たし、最初の公式戦に臨んだ浦和麗明サッカー部。試合は早々のゴールで先制するも、その後3失点を喫して、初の選手権予選は初戦の2回戦敗退に終わった。

第1期生ということで27人の部員すべてが1年生。U-16の試合などは経験していたものの、上級生を含んだ公式戦はこれが初めてだった中で浦和麗明・鄭立舜監督は「単純にやっぱりすべてにおいてまだまだ未熟。集中力や一個一個の切り替えの遅さが目立った。形作りも含めて本当にベースのところからもう一度チームを作っていこうかなと」と、この一戦を振り返った。

キャプテンのDF塚越啓剛は「一番はしょうがないんですけど、体格やスピードの差を感じた。でもセカンドボールの回収は相手よりも勝てていたところがあったのでそこは収穫。どんどん修正していけば勝てないような相手ではないと感じた」と課題と収穫を実感したようだ。

他部と兼用のグラウンドは普段3分の1ほどしか取れないというが、「まずは負けない身体から作ること。あとは狭いところを逆に利用してパス回しのクオリティーを上げていきたい」と塚越。「足りなかったところを修正して、ストロングポイントをどんどん強くしていって、新人戦では優勝を目指して頑張ります」。目標は高く全国。その高みに向けて、この第一歩を次に繋げるべく、今冬のトレーニングに臨む。

石黒登(取材・文)

試合結果

栄北 3-1 浦和麗明

2(前半)1
1(後半)0