平成30年度全国高校総体サッカー大会 埼玉県予選3回戦 武南 vs 早大本庄

インターハイ予選3回戦。武南高校と早大本庄高校の一戦は、ラストワンプレーで迎えたPKをMF塩崎正巳がしっかりと決めて武南が3ー2で逆転勝利。武南は翌日、優勝した2013年以来の4強進出を狙い立教新座高校と対戦したが、0ー1で敗れ昨年に続きベスト8に終わった。

試合開始から主導権を握ったのは武南だったが、先制したのは早大本庄。前半25分、MF小島遼介の左コーナーキックをファーでMF戸部広大がヘディングで折り返し、最後は1年生DF佐藤大樹が詰めた。少ないチャンスを点に結びつけた早大本庄が先にゲームを動かす。

しかし武南も直後に同点弾。前半30分、FW飯塚翼が仕掛けからエリア内で倒されてPKを得ると、これを「いつもPKは狙う場所を決めていて、そこにしっかり流し込むだけだった。自信を持って蹴れたと思います」という塩崎が思い切り蹴り込んで1ー1で試合を折り返した。

後半も武南ペースで展開。9、10分にはMF永野駿が連続して決定機を迎えると逆転弾は直後。12分、ゴール右斜め前の位置でフリーキックを迎えると塩崎のキックにMF紺野辰也がニアに飛び込んでヘディングで合わせた。「小学校の時から一緒なので塩崎のことはわかっている」(紺野)。C.A.ALEGRE出身コンビの以心伝心ゴールで、ついにゲームをひっくり返す。

しかしゲームはこのままでは終わらない。早大本庄は相手の足の止まり始めた終盤に勢いを持って前に出ていくと、後半32分にセットプレーの混戦を押し込んだのはまたしても佐藤。1年生DFがここぞの勝負強さを見せて、残り10分を切って再び勝負の行方は振り出しに戻った。

そのまま試合はアディショナルタイムに突入。刻一刻と時間が過ぎる中で、誰もが延長戦を覚悟したタイミングで決勝点が生まれた。武南はエリア内で永野が相手選手に乗り上げられる格好となりこれがPKの判定に。後半44分、これを塩崎が得意コースだという右にしっかりと決めて直後に終了の笛が鳴った。二転三転したタフなゲームを制し、武南が8強入りを決めた。

劇的勝利もベスト8敗退… 新体制の鍵は「推進力」

劇的勝利から一夜明け、優勝した2013年大会以来5年ぶりとなるベスト4に挑んだ武南だが、関東大会準優勝の立教新座に0ー1で敗れ、昨年大会に続き今大会も準々決勝敗退となった。

今年4月一日付で45年の長きに渡り武南を指揮してきた大山照人監督体制から、同校OBで選手時代には同級生の為谷洋介・現成徳深谷高校監督らとともに3年間全国を経験した内野慎一郎監督体制に移行。武南伝統のパスサッカーを継承しつつ、「ただ後ろで回しているだけのチームにしたくない。推進力があるチーム、前に出ていけるチーム」(内野監督)を目指す。

それは攻撃に限ったことではない。3回戦はボールを奪う位置が深く、相手の陣形が整った状態での攻撃が多かったが、高い位置でアタックに繋げることができれば両サイドには永野、宮下瑛とスピードのあるタレントが揃う。展開力のある塩崎やこの日はトップ起用だった2年生の青野翔太らボランチの位置から効果的なパスが通れば、それは相手にとって脅威となる。

新体制となって2ヶ月。主将の塩崎は「監督とは話す回数も多い。うまくいかない時にぶつかり合うこともあったんですけど、そういう時でも真剣に自分たちに向き合ってくれる」と話す。全国を知る指揮官とともに話し合って、ぶつかり合って、選手権での巻き返しを誓う。

石黒登(取材・文)

試合結果

武南 3-2 早大本庄

1(前半)1
2(後半)1