平成30年度彩の国カップ決勝 東京国際大学 vs 東京国際大学FC

平成30年度彩の国カップ決勝が12日に行われ、東京国際大学FCが4連覇を狙った東京国際大学を2ー1で下し大会初優勝、天皇杯出場を決めた。東京国際大FCは1点ビハインドで迎えた後半5分にFW中島大智(磐田U-18)の得点で同点とすると、29分にDF宮下航輔(湘南Y)のPKで逆転。最後は宮下らを中心に相手の攻撃をシャットアップし初の栄冠を掴んだ。

3年連続の同門対決となった決勝。まず仕掛けたのは「失うものは何もない。引いてやられるくらいならガチンコ勝負」(中島)と全員で意識を共有していたという東京国際大 FC。セットプレーやMF伊藤駿(甲府U-18)の抜け出しなどから、相手守備に揺さぶりをかけていく。

それでも東京国際大は給水明けの前半25分、中盤でボールを受けたMF浅利航大(水戸Y)がドリブルを開始。エリア深くまで持ち込むと角度のないところから右足で逆サイドネットに流し込んだ。その後は東京国際大がボールを持つ展開も、東京国際大FCもしっかりと守りながらセットプレーなどで応酬する展開に。前半はこのまま東京国際大がリードして折り返した。

ビハインドでハーフタイムを迎えた東京国際大FCだが、「前半はチャンスも結構あった。後ろはしっかり落ち着いて、失点しても落ちなければチャンスはあると思っていた」と宮下。

すると立ち上がりをしのいだ東京国際大FCは後半5分、カウンターから同点に追いつく。相手のセットプレーのセカンドボールを伊藤が奪うと、横パスを受けた中島が一気に左サイドに展開。自らもゴール前に走り込むとFW長島昂平(桶川高)の崩しからのクロスに「来るだろうなと思ったところに来たのでも触るだけでした」とファーサイドでピタリと頭で合わせた。

ハーフタイムには交代も示唆された中で「もう1回冷静になって、自分のすべきことを整理して後半に挑んだ」と中島。準決勝の城西大学戦でもビハインドの場面からの2得点で逆転の口火を切った“気持ちを持っているプレーヤー”がこの日も同点弾でチームを勢いづかせる。

さらに東京国際大FCは後半29分、ロングスローから混戦となると伊藤のシュートが相手のハンドを誘いPKを獲得。これを宮下がゴール右上に蹴り込んでついに試合をひっくり返した。

追う展開となった東京国際大は後ろ2枚を残して全員が敵陣に入るなど猛攻を仕掛けるが、東京国際大FCも高い集中力を持って跳ね返す。アディショナルタイムにはDF小林友也(山梨学院高)のシュートが枠を捉えたが、宮下が至近距離のボールをヘディングでクリア。最後まで声を絶やさずに守り抜いた東京国際大FCが2ー1の逆転勝利で天皇杯切符をつかみ取った。

「僕自身3度目の決勝。2回とも準優勝で今年こそというのはあった。自分自身もトップにいたというのもあり、やっぱりトップに対する感情っていうのは強いものがあった。どうしても勝ちたかった」と主将の中島。3度目の挑戦での天皇杯に「嬉しいの一言」と安堵の表情を見せ、「ここから先はすべて格上。どこまで自分たちがやれるか楽しみ」と本大会を見据えた。

天皇杯は26日に開幕。27日の1回戦で東京国際大FCはOBのGK古島圭人、FW進昂平が所属する神奈川県代表のY.S.C.C.横浜と対戦。勝利すれば2回戦で浦和レッズと激突する。

個で上回る相手に対しチーム力で勝利!

個々の能力で上回るトップチームに対して、東京国際大FCはチーム力で勝利をつかみ取った。

週初めのミーティングでは学年ごとに考えを出してトップ撃破の策を練った。その中で出たのが「最初からガンガンプレッシャーをかけていくこと」「相手に回されるようであれば1枚余らせて1回下がること」「もし勝っている場合は後ろでヘディングが強い選手を揃えてがっちり守ること」。決勝はこの3つを全員で完遂して、まさにチーム力でアップセットを演じた。

この日もプロ選手が揃いのスーツで戦闘モードを高めるかのごとく、上下「TIU」のロゴ入りジャージで揃えて会場入り。宮下は「チームの統一感、チーム力は負けない」と胸を張った。

本家公認「大学界の槙野」は浦和レッズとの戦いを熱望

決勝では相方の本郷克哉(麻布大附高)とともにJ注目のFW町田ブライト(成立学園高)を完封、PKの場面ではいち早くボールを拾いにいくとゴール右上に突き刺して決勝ゴールを奪うなど攻守両面で気持ちを見せた宮下。自身も大学2年次までトップに所属。「見てろよじゃないですけど、やっぱりどうだみたいな気持ちはありました」。終盤は相手の猛攻に遭う中で決定的なシュートをブロックするなど、最後まで声を張り上げながらチームを鼓舞し続けた。

サイドを刈り上げた特徴的なヘアスタイルと、左右色違いのスパイクは憧れの日本代表DF槙野智章を意識したもの。大学1年次には浦和レッズとの練習試合でリカバリーで訪れていた槙野本人から「大学界の槙野」と公認を受けており、「(2回戦の)浦和レッズまでいけたら最高ですね」と笑顔を見せた。槙野との対決はW杯もあり難しそうだが、湘南ユース時代にトップチームでプレーしていたDF遠藤航やMF菊池大介、MF武富孝介との対戦を熱望した。

「やっぱりJ1に勝つことが目標。そのためにもまずは1回戦にしっかり勝ちたい」。1回戦の会場はジュニアユース、ユース時代を過ごした湘南ベルマーレのホーム、BMWスタジアム。これに燃えない大学界の槙野ではない。かつてのホームグラウンドで成長した姿を見せる。

石黒登(取材・文)

試合結果

東京国際大学体育会サッカー部 1-2 東京国際大学FC

1(前半)0
0(後半)2