[選手権]細田学園、“苦しんだ代”がついに掴んだ初の4強。エース離脱も乗り越え、6度目の挑戦で歴史動かす逆転劇
苦しんできた代が細田学園初の8強の壁を突破した。第104回全国高校サッカー選手権埼玉県予選準々決勝2日目が2日に浦和駒場スタジアムで行われ、細田学園が2-1で浦和東に逆転勝ちし、6度目の挑戦で初のベスト4に進出した。細田学園は9日の準決勝で武南と対戦する。

「最初からゲームコントロールはしっかりできて、相手を動かす、ボールを動かすっていうところができたってことははゲームとしても良かったんじゃないかなと思います」(上田健爾監督)
ともに3-4-2-1でスタートした試合。細田学園は186cmの長身DF高久琉我(3年)主将を筆頭としたディフェンスラインやMF佐久間征斗(3年)、MF中村圭佑(3年)のダブルボランチを中心にボールを動かし、相手のプレッシャーをうまくいなしながら攻撃を展開する。
一方、浦和東はFW金響生(3年)、MF谷口大河(3年)、MF藤井慶太(3年)の前線3枚を中心にハイプレス。ロングボールや切り替えの早い攻撃で相手ゴールに迫ろうと試みる。前半14分には中盤でボールを捕まえ、谷口と繋ぎ、藤井が中央から運び出し左足シュートを見舞った。
細田学園はシャドーの柴崎陽斗(2年)がライン間に落ちてボールを引き出し、状況の打開を図ろうとする。また、右WBの小野寺快斗(2年)がスピードという武器を発揮。20分、佐久間のロングパスに抜け出してシュートまで繋げると、33分には再び裏抜けからゴールに迫った。
浦和東はブロックを作りながら、DF塩谷龍哉(3年)やDF足立雅空(3年)を中心とした粘り強い守備で前半を無失点で切り抜ける。一方で技術の高い相手に対し、前半の中盤以降は3トップのプレスがかからない状況もあり、後半の開始から4-2-3-1のシステムを変更する。
すると後半は立ち上がりから押し込み、そこで連続してチャンス。2分に藤井が左サイドを抉り、クロスから10番MF永田隼(3年)主将がシュート。5分には藤井のFKから足立がヘディングで迫る。これは惜しくもゴールとはならなかったが、10分、MF滝川弦生(3年)の右CKから足立がヘッド。こぼれ球を追撃したMF佐々木佑輝(3年)が押し込んで先制に成功する。
それでも細田学園はここで崩れず。16分、右CKからのこぼれ球をDF辻葵仁(2年)が中央に折り返すと、1トップのFW松本隼翔(2年)が頭でプッシュしてすぐさま同点に追いつく。
さらに20分には中村のパスを受けた小野寺が右からカットイン。新座二中時代は全中にも出場した157cmの俊足ドリブラーは細かいタッチで相手DFを交わすと左足で流し込み、これが結果的に決勝点となった。2-1と逆転勝利を収めた細田学園が選手権で初の4強入りを決めた。
今季、細田学園はトーナメントで結果を残せず、S1も前期は未勝利と苦しい時期を送った。10年目を迎えた指揮官も「良いゲームはしてるんだけど、勝てない状況が続いていた」と話す。
その中でも「本当に精神的な成長っていうのはめざましいものがあって。前期は本当に苦しい状況だったけど、人のせいにせずに、自分たちに向き合ってっていうところは取り組んできて自分たちの力になっていった部分だと思う。そういう代ではあったので、今日のゲームも彼らを象徴するような内容、ゲームだったんじゃないかなと思います」と上田監督はチームの成熟を語る。
チームとして決して他責にせず、常に自分たちに矢印を向けながら、1人1人が「5%の無理をしよう」というところで取り組み。空中分解しそうな状況で、逆にチームは1つにまとまった。
「チーム一丸になれたっていうところ、チームで戦えるっていうところは今年のチームの良さでもある。それがやっぱりあそこで失点しても崩れないっていうところに繋がったんだろうし、1点返すというエネルギーになった。あそこがバラバラだったらエネルギーにならなかったと思うんですけど、1失点した後に選手たちの様子を見ているところで「これは行けるな」みたいなところがあった。彼らが自分たちでエネルギーを持って、相手コートに向かうっていうところができたのが良かったんじゃないかなと思いますし、それが勝因には繋がったかなと思います」
この試合の前日には昨年、国スポにも出場した10番のエースMF三上蓮恩(3年)が前十時靱帯損傷で離脱が発表されていた中でも、ブレることなく、チーム一丸となって歴史を動かした。
石黒登(取材・文)
試合結果
細田学園 2-1 浦和東
0(前半)0
2(後半)1


