[選手権]正智深谷、聖望学園との接戦制し決勝進出! エース不在の難局も『一致団結』し、8年ぶりの冬の全国へあと1勝
第103回全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会の準決勝が10日にNACK5スタジアム大宮で行われ、正智深谷と聖望学園が対戦。正智深谷がFW小西聖七(3年)弾で1-0と勝利し、8大会ぶりの決勝進出を決めた。同年以来の優勝を目指し、17日の決勝で浦和学院と激突する。
準々決勝で総体覇者の昌平を下し、初のファイナル進出へ勢いに乗る聖望学園は185cmの注目FW太仲貴哉(3年)を起点に攻撃。相手の3バックの脇のスペースを突きながらゴールに迫る。
7分、10番MF田中翼(2年)のパスに抜け出た場面は正智深谷の守護神・森穂貴(3年)がブロック。13分にもFW野元里晟(3年)のスルーパスに太仲が抜け出して決定機。右足のシュートはわずかに左に逸れゴールとはならなかったが、立ち上がりに2度、大きな見せ場を作る。
正智深谷は10番MF近藤七音(3年)が累積警告で欠場。攻撃のリズムを作る司令塔不在の中で守備から入るべく、リーグ後期の聖望学園戦と同じ3バックでスタート。押し込まれる時間が続いたが、森やDF佐藤飛友(3年)、DF岸田永遠(3年)を中心に粘り強い守りを見せる。
16分には中盤で奪い、MF吉田匠吾(3年)の縦パスに走ったFW小西聖七(3年)がエリア右で切り返し、左足のシュートでゴールに迫る。そしてこの日も鍵となったのがセットプレーだ。
35分、右CKを獲得すると、今年のチームの得点源となっているDF鹿倉颯太(3年)の左足のキックから敵味方入り乱れた混戦となった中で最後に決めたのは小西だ。1本目の右足ボレーは相手に防がれたが、「ここで決めたら流れが変わると思ったので。しっかりゴールを決めることを意識した」と諦めずに左足シュート。これが相手選手に当たる形でゴールラインを割った。
先制を許した聖望学園は41分、MF小山晃也(3年)を起点とした攻撃で太仲が三度抜け出し。正智深谷は森が入れ替わられピンチを迎えたが、相手のシュートに対しディフェンスリーダーの佐藤がヘディングでブロック。さらに追撃のシュートはオフサイドの判定だったが、スライディングで食らいついて掻き出すなど気合いのこもった守備を見せて1点リードで前半を終えた。
正智深谷は前半、3バックの左脇のスペースを執拗に突かれていたこともあり、ハーフタイム明けからはこの日アンカーとしてスタートしたDF外山達也(3年)を一列下げて、後ろを5枚にしてはっきり相手エースの太仲に対応。まずは守備を安定させたうえで、攻撃面では今大会、“スーパーサブ”として流れを変えるプレーで魅せるMF白岩龍(3年)を後半開始から投入する。
9分には白岩が左サイドを鋭いドリブルで抉りラストパス。MF赤川空音(3年)のシュートは相手ディフェンスのブロックに遭ったが、代わって入った9番がいきなりチャンスを作り出す。
白岩は17分にも果敢に切り込み、カットインシュート。聖望学園は23分、小山がエリア内に侵入しシュートを狙ったが、正智深谷は佐藤、外山がカバーに入り、森ががっちりと収めた。逆に正智深谷は24分、中盤でMF大和田悠(3年)主将が回収し、鹿倉の左クロスからうまくディフェンスを外した赤川が走り込みながら左足で狙ったが、枠を捉えきることができなかった。
正智深谷はなかなか勝負を決める2点目を奪うことができなかったが、自陣ゴール前では森が相手のセットプレーやクロスなどのハイボールに対し、抜群の安定感を見せてやらせなかった。そのまま1-0で抑えきった正智深谷が2016年以来、8年ぶりとなる栄冠にあと1勝と迫った。
正智深谷は3戦連続で1点差のゲームを勝ちきっての決勝進出。小島時和監督は「なかなかスカッとはできないですね」と苦笑いしたが、「でも、内容よりも勝ったっていうことが次に繋がる。本当にみんな頑張ってくれたと思いますし、応援も含めて『一致団結』していたんじゃないかと思います」。主将の大和田も「自分たちのスローガンである『一致団結』がしっかりできているから決勝に行けたのかなと思っているので、もう全員の勝利だと思っています」と強調した。
エース不在の難しい状況も、誰がスタメンで出ても、誰が途中から出ても、という状況を作ってきたというチームは崩れず、それぞれが与えられたところでそれぞれの働きをまっとう。試合に出られない中でも声援をくれる応援団の想いも背負い、全員で繋がって決勝進出を果たした。
全国大会へあと1勝。大和田主将は「しっかり勝てるように全員で分析すること、あとは練習の強度やセットプレーのところ、こだわれるところをしっかり1週間引き締めて全員でやっていきたいと思います」と意気込み。決勝も『一致団結』し、8年ぶりの冬の選手権出場を掴み取る。
石黒登(取材・文)
試合結果
聖望学園 0-1 正智深谷
0(前半)1
0(後半)0