[選手権]「ひっくり返してやろうぜ!」恐れず自分たちのスタイルで戦い強敵撃破! 聖望学園が総体王者・昌平との打ち合い制し4強進出
夏の総体全国王者を下す大金星で聖望学園が2年連続の4強進出! 第103回全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会の準々決勝が2日に行われ、昌平と聖望学園が対戦。聖望学園が4-3と打ち合いを制し、ベスト4入りを決めた。聖望学園は10日の準決勝で正智深谷と激突する。
昌平は今夏のインターハイで初の日本一を達成。清水内定のU-17日本代表GK佐々木智太郎(3年)やU-18日本代表MF大谷湊斗(3年)主将、ともにU-17日本代表のMF山口豪太(2年)、MF長璃喜(2年)などを擁し、今冬の選手権でも夏冬連覇も期待されるチームだった。
その昌平に対し、聖望学園は真っ向勝負。山本昌輝監督は「本当に今日この日を迎えるまでに全国、埼玉県、誰もうちが勝つなんて思ってないよというのを言い聞かせながら、それを「ひっくり返してやろうぜ」と。勝つと思ってるのは俺たちだけだよね、だから自分たちだけを信じていけばいいんだよと言って、みんなのモチベーションを上げていけた」と会心の勝利を振り返った。
先制したのは昌平だった。この日も小気味の良いパス回しから前進し、MF本田健晋(3年)がクロスバー強襲のシュートを放つなどゴールに迫ると前半9分、左サイドでボールをキープした長のパスから左SBの安藤愛斗(3年)が切り込み、右足を振り抜いてネットに突き刺した。
一方、聖望学園も「とにかくもう昌平に対して引いて守ったら、もう何もできないで終わっちゃうかなっていうのがあったので、もう行けるところまで前から行こうと」(山本監督)。全国でも屈指の攻撃力を誇る昌平に対し、中盤をコンパクトに保ちつつ、恐れずに前からプレス。先に失点したが粘り強く戦うと、今年のチームの十八番であるセットプレーからゴールをこじ開ける。
16分、MF遠藤浬(3年)の右CKからファーサイドで185cmの長身FW太仲貴哉(3年)がヘディングで折り返すと、今季リーグ戦16戦12発と得点の取れるボランチへと進化を遂げたMF小山晃也(3年)が頭でプッシュして同点ゴール。さらに22分には再び遠藤の右CKからこちらも183cmと長身のCB菅野陸斗(3年)主将が大外できっちり頭で中にリターンし、太仲のヘディングシュートのこぼれをDFペイトン有玖主(3年)が押し込んで逆転に成功する。
勢いは止まらず、さらにその3分後の25分には敵陣でセカンドボールを回収すると、右SBのペイトンが果敢な攻め上がり。「自分の武器はスピードを生かしてのオーバーラップ。練習でもあそこのゾーンからファーは結構練習していたので、だいたい狙い通りっていう感じです」。遠藤のパスをトップスピードのまま受けると、右足でゴール左隅に突き刺して、リードを広げた。
山本監督も「奪ってからのショートカウンターとセットプレー、ここはもううちの強みだから、それで点を取りにいこうっていうので、出来すぎですけど、言った通り点を取れたっていうのは大きかった」「もう前半の出来がすべて」という聖望学園が2点をリードして前半を折り返した。
昌平は30分に中松陽太(3年)が迫り、32分にはクロスから10番の山口がヘディングで惜しいシュート。34分にはMF三浦悠代(3年)がエリア内で決定機を迎えたが、前半は相手の守備を前に決めきることができなかった。それでも後半7分、中盤のギャップでボールを受けた大谷が前線に絶妙なスルーパス。これをエースFWの鄭が右足で対角に突き刺して1点差と迫る。
後半も昌平は大谷が起点となり、山口や長がアタック。聖望学園は押し込まれる時間が増えたが、「そこはちょっと徹底してやってきました。とにかくシュートコースに入るのをスピードを上げて、1人交わされても2人目、3人目っていうのはもうイメージしながらやってきた」(監督)というように、菅野やCB武田渉吾(3年)、ペイトンなどが、相手のシュートシーンでは複数枚で入ってブロック。16分の三浦の決定機はGK網野晃平(3年)が横っ飛びで掻き出した。
すると勝負を左右する次の1点を決めたのは聖望学園だった。22分のMF沖田拓(2年)の決定機は佐々木に阻止されたが、24分、フリーキックから相手DFがヘディングで弾き返したこぼれ球に「自信を持って、思い切って振ることができました」という遠藤が右足を一閃。名手・佐々木も反応していたが、ゴール右上隅のここしかないコースに突き刺して貴重な1点を奪う。
終盤も昌平が猛攻を仕掛けるが、聖望学園は交代選手も含め全員がハードワークを徹底。昌平は45分、鄭のシュートのこぼれ球を大谷が右足シュートで決めて再び1点差と迫ったが、最後まで集中した守備を見せた聖望学園が4-3で逃げ切り、今大会屈指の番狂わせを演じてみせた。
総体予選では昌平と対戦することをひとつのターゲットにしていた中で16強で敗退し叶わず。「今回も近くに昌平が組まれていたので、「もう絶対に今年の昌平とやりたい!」って。もちろん日本一のチームなのでリスペクトもありますし、でもそこにぶつかってやっぱり勝ちきりたいっていうのが彼らのモチベーションでもあったので。だからやっと昌平とできるっていうのが、彼らの正直な気持ちの中にあったと思う。もちろん今日、昌平とやれて良かったねじゃないよと、昌平に勝ちに来たんだよっていうのをみんながわかっていることだったので、本当に彼らが勝とうとした気持ちが全面に表われたゲームだったと思います」と山本監督は選手を讃える。
今年のチームは現在S1リーグでも首位を走るなど力のある代。「プリンス、プレミアにいるようなチームとやっても、今年の子たちは全然ビビらないで、腰を引かないでやれる子たちだったので。夏にいろいろな強豪校さんに胸を貸してもらいましたけど、どの強豪さんにも「今年の聖望だったら、昌平と良い勝負ができるんじゃない?」と言ってくれたのは自信になりながら今日まで来ている」(監督)。その有力代が歴代最強との呼び声もあった昌平に対し初勝利を飾った。
初の県タイトルまであと2勝。この日攻守に奮闘しMVP級の活躍をした小山は「昌平に勝って満足していても次はないと思う。自分たちも最後の年ですし、ここで結果を出さなきゃ成功に貢献できないので、しっかり準決勝を勝って、決勝も勝って全国に行きたいと思います」と意気込み。強敵撃破で一際注目を浴びるが、緩むことなく一戦一戦を勝ち抜いて新たな歴史の扉を開く。
石黒登(取材・文)
試合結果
昌平 3-4 聖望学園
1(前半)3
2(後半)1