[高校女子]川口市立が花咲徳栄との激闘を制し、初の決勝進出! PK戦ではGK吉田が躍動

川口市立が初の決勝進出! 高校女子の令和6年度学校総合体育大会埼玉県大会は6日、準決勝を行い、第2試合では川口市立がスコアレスからのPK戦で前回覇者の花咲徳栄を下し、前身の川口総合時代を含め初のファイナルを決めた。11日の決勝では初優勝をかけ南稜と対戦する。

これまで何度も跳ね返されてきた高い壁。「本当に嬉しいでしか表せない。いままでずっとベスト8らへん止まりの学校って周りから思われていたと思うんですけど、今年は新人戦から優勝を狙おうってなって、新人戦は昌平に負けて悔しい想いをして、インターハイこそはなっていて、初めての(決勝進出を懸けた)相手が去年選手権で負けた徳栄だったので余計燃えたっていう感じもあります」(川口市立・小磯遥香)。連覇を狙った女王を下し、川口市立が歴史を塗り替えた。

ともにフィジカルの強さと縦に入った時の迫力のある攻撃を特徴とするチーム。昨年の選手権予選準々決勝も1点差のゲームだったが、この試合も立ち上がりから一進一退の展開となった。

最初のチャンスを作ったのは花咲徳栄で前半20分、中盤のこぼれ球に今大会左のストッパーを務める10番DF井上らら(3年)が果敢にロングシュート。無回転気味で蹴られたボールが枠上部を捉えたが、ここは川口市立の2年生キーパー、吉田亜未が上に弾き出して決定機を防いだ。

川口市立・堀達也コーチも「うちは前に前に行くしかない。徳栄さんも身体が強いところがあるし、球際で負けないようにということで何回も負けているんですけど、最後の最後、前半1本シュートを打たれたところで、キーパーがうまく弾けたところで、キーパーは流れに乗れたので最後まで良い流れでいけたかなと思います」という好セーブがひとつゲームの流れを引き寄せる。

攻撃面では花咲徳栄の3バックの両脇のスペースを突くべく、左MF原葵子(2年)、右MF長谷川成美(2年)が張る形に。「走力だったり、ボールの質、若干風もあって、なかなか狙い通りの攻撃ができない場面もあったんですけど、何回か意図した通りにできて、自分たちでできるっていう印象を持った」(コーチ)。33分には原のアーリークロスから長谷川が迫り、さらに後半開始直後にはキックオフから再び原のクロスを長谷川が完璧にヘディングで捉える。いずれも花咲徳栄の守護神・長谷川実乃里(3年)の好守に阻まれたが、サイドからチャンスを作った。

後半は互いに攻め合う中で川口市立はDF星春那(2年)や本職は右サイドバックだが、今大会は星とともにセンターバックを務め「一緒にCBをやっている子が指示とかをいっぱいしてくれて、自分も気持ち的にもずっと安定した状態でプレーができた」と話すDF沖井彩華(2年)を中心に相手の力強いアタックやセットプレーに対しても破綻することなく無失点で切り抜ける。

延長戦では川口市立が攻勢を強め、縦に刺すパスからゴールに迫ろうとするが、花咲徳栄はキーパーの長谷川が果敢にボールにアタックし、ゴールは割らせない。逆に花咲徳栄は延長前半8分、FW柾谷雫(1年)の横パスから中に絞っていた左WBの宍戸楓花(3年)が決定的なシーンを迎えたが、「相手のキーパーもすごい止めていて、それに影響されて「自分もいくぞ!」となった」という吉田がビッグセーブで止め返し、試合の行方は90分を超えてPK戦にもつれ込んだ。

迎えたPK戦ではその吉田が躍動。「初めのプレーでもう勢いに乗っていたので、これはもう最後までやるしかないっていう気持ちだった。堀先生にも1本目から「勢いよく飛べ!」「思い切って飛べ!」と言われていた」。直感を信じ、踏み込むと1、2本目を連続ストップ。蹴っては後半途中からは足を吊らせながらも「もしPK戦になったら自分が絶対に1番手を蹴りたいなと思っていた」と話すDF小磯遥香(3年)主将をはじめ4人全員が成功し、歓喜の瞬間を迎えた。

小磯はその瞬間について「涙が止まりませんでした」と話す。「周りを見てもみんな泣いてるし、初めての決勝進出で新しく歴史を作れたような感じがして。本当に辛いこともたくさんあったんですけど、頑張ってきて良かったなって思ったし、いままでの試合の中でも一番ベンチからもメンバー外の選手からも声を出してもらったので、全員で戦って掴んだ勝利かなと思います」。

その「全員」の中には岡本鈴音もいる。岡本は新人戦まで主戦のセンターバックを務めていたが、新人戦の準決勝で前十時靱帯断裂の大けが。今大会はマネージャーとしてチームを支えている。岡本とは「すごく仲が良い」と話す小磯は「その子のためにも絶対に勝ちたいなって思っていたし、インターハイ期間はその子に絶対、キャプテンマークを巻いてもらうようにしていたので、本当に勝てて、良い報告ができて嬉しいなって思います」と笑顔。親友の献身に結果で応えた。

2021年には人工芝グラウンドが完成。昨年からはU-16トレセンダイレクターも務める堀コーチも加わった。堀コーチは「もっとできるかなと思うんですけど、今回こうやって勝ち上がれたし、新人戦でもベスト4に入って3位になれた。今回もう一個上に行けたっていうことで、選手たちが普段やっていることに対して少し自信が持てるようになればまた変わってくるかなと思うので、もっとできるかなっていうところを少しずつ、また次の試合であったり、リーグ戦も含めて、いろいろな大会に向けてやっていけるようになるといいかなと思います」と期待する。

悲願の初優勝へ、残す戦いはあとひとつ。小磯は「公立対決なので余計燃えますし、新人戦でもベスト4をかけた試合で戦っているので、もちろん絶対に負けたくないですし、相手は昌平に勝って来て勢いがあると思うんですけど、私たちも負けずに自分たちのサッカーをして、最後笑って終われるようにしたいなって思います」。もうひとつ勝って、チームにまた新たな歴史を刻む。

石黒登(取材・文)

試合結果

南稜 2-0 埼玉栄
0(前半)0
2(後半)0