西武台が3rdリーグ初制覇!チームとして苦しい1年も、最後はオール3年生で臨み笑顔で締める
埼玉県3rdチャレンジリーグ2023の残り1試合が12月10日に行われ、勝てば優勝の決まる西武台と埼玉栄が対戦。西武台が3-2で逆転勝利を収め、第4回大会チャンピオンに輝いた。
すでに2チームを残し全日程が終了。勝ち点「21」の西武台は勝利すれば同「23」の昌平を交わし、優勝を決定できる状況だったが、「何試合か連勝して、今日も勝てるだろうみたいな、そういうのが前半は出た」(美川笙乃コーチ)。また、「優勝したい」という想いが出足を遅くさせた。
一方、目の前での戴冠は阻止したい埼玉栄は、DF原田空虎、MF嶋家礼人、FW加藤佳大(ともに2年)ら新チームでも核になりそうな選手たちが先発。立ち上がりから前に出ると2分、敵陣右中間でファウルをもらい、加藤のフリーキックから最後はゴール前の混戦を原田が押し込んで先制する。さらに12分にはMF高橋亮太(2年)が追加点を奪って早々に2-0とした。
それでも西武台は20分、MF宮田雄清(3年)の左コーナーキックからニアサイドでFW向井隆人(3年)が潰れ、ゲーム主将のDF森田雅宗(3年)がボレーで決めて1点を返すと、40分には相手ディフェンスがキーパーに下げたボールに対し、チーム得点王のFW行武春輝(3年)が果敢に寄せてブロック。こぼれ球をMF土屋碧史(3年)が決めて同点とし前半を折り返す。
後半は1年を通してやってきたサイド攻撃からニアサイド、ファーサイドと「最後3点に入っていく」攻撃で迫る。追加点もまさにその形で76分、向井が右サイドでボールを持って突破すると、それぞれのスポットに侵入。ニアサイドでパスを受けた途中出場のFW田中聖那(3年)は「出たら絶対に点を決めると思っていた」。冷静にキーパーの動きを見てファーに流し込んだ。これが決勝点となり、西武台が3-2で逆転勝利。3rdチャレンジリーグ初優勝を飾った。
西武台は今季、チームとして苦しい1年に。プリンス関東2部では途中、優勝争いを繰り広げながら4位でフィニッシュしたが、トーナメントではなかなか結果を出すことができず、総体予選はベスト8で正智深谷に、選手権予選は3回戦で市立浦和に敗れた。そういった経緯もあり、「最後3年生を大切にするためにも」ということから守屋保監督もサードの練習を見るなど、この3rdチャレンジリーグでのタイトル獲得に向けて準備。選手権後はオール3年生の布陣で臨んだ。
チーム発足当初から大切にしていたのはサッカー以外の部分だ。ゲーム主将の森田は「チーム戦術もそうですけど、私生活のところだったり、学校生活のところでブレないことは大切にしながらやっていました」と明かす。J入りしたFW黒木謙吾と同期で、主将も務めた2年目の美川コーチは「そこばっかり言っています。“西武台らしさ”というところはそこだと思っていたので、そこは大事にして卒業していかないといけないよねというところは言っていました」と話す。
2点を先行された前半は甘さが出た部分ではあったが、その後、前半のうちに2点を取り返し、勝負を決める3点目を決められたのはサッカー以外の成長が大きく繋がったと森田は振り返る。
青年コーチと選手たちは当初、お互いが真剣だからこそ、ぶつかり合うことも多かったというが、その中で「自分が成長できて、美川さんの言っていることもわかるし、ああしろ、こうしろと言われても美川さんのやりたいことはなんだろうと受け止めて、それをまず第一に考えて今日取り組めました」(田中)。表彰式後には選手たちに呼ばれる形で美川コーチが3度宙を舞った。
これで3年生たちの戦いは終了。それぞれの未来に向けて旅立つ。美川コーチは「サッカーで学んだことを思い出して、少しでも高校時代の記憶を人生に行かしてほしい」とエールを送った。
石黒登(取材・文)
試合結果
西武台 3-2 埼玉栄
2(前半)2
1(後半)0