「全国の借りは全国で」夏に続き、17年ぶりの冬の全国を狙う武南が武蔵越生を撃破!

「全国の借りは全国で」、武南がまずは初戦を突破。「第102回全国高校サッカー選手権 県大会」3回戦が21日に行われ、新人戦、関東大会予選、総体予選に続くタイトルを狙う武南は今大会初戦で難敵・武蔵越生を2-1で振り切った。武南は29日の準々決勝で市立浦和と対戦する。

武南と武蔵越生は昨年も3回戦で激突。武南は攻め込みながらも得点を奪えず、0-1で敗れた。

「自分はベンチで見ていて、すごい悔しかったですし、ベンチですけど結構思うことはあって。今年は同じ相手と、この新しいグラウンドで、ホームで初戦を迎えることになって試合前に監督が「去年はここで散った」と、そういう言葉でより一層気持ちも入りましたし、やっぱり去年の3年生の分までっていう想いになりました」(前島拓実主将)。この日はOBたちも駆けつけた中でその想いも背負いながら、今年新しく完成したホームで迎える選手権初戦を勝利で飾った。

立ち上がりは相手に合わせる部分もあった中で、髙橋秀太(3年)、宮里丞(3年)のボランチコンビのところが回収率を高めつつ、髙橋秀の展開から武器のサイドアタックで相手を押し込む。すると前半17分、序盤からスピードに乗ったドリブルを見せていた右SHの飯野健太(3年)が得意の切り返しからPKをゲット。これを「1年間を通してPKを任されてきて、いろいろ研究されているっていうのもわかっていた中で、自分の中でも練習の中からたくさん蹴り込んでっていうのはあったので、しっかりそれが今日出せて良かった」という10番MF松原史季(3年)がキーパーの飛んだ逆サイドに蹴り込んで今大会武南のファーストゴールを挙げた。

後半は松原が中盤に入る形でゲームをコントロール。飯野や推進力のある右SB齋藤瑛斗(3年)がゴール前に迫る。22分には宮里の縦パスから抜け出したFW戸上和貴(3年)が相手ディフェンスを引き連れながらシュート。こぼれ球をMF川上旺祐(3年)が詰めて2点目とした。

守備的に構えてくるチームに対し、そこをどう崩していくというのはトレーニングでやってきたテーマ。「どこにゲートができて、どこに間が空いて、そこを通せるかというところはずっとやってきた」(内野慎一郎監督)。2得点目はもちろん、意図的にゲートを作りながらそこにサイドからギュッと入っていく動きに対し刺すようなパスや、右サイドから飯野への縦パスで背後を取るプレーで相手の守備を崩しに。内野監督も「いままでみたいに武南は足下、足下みたいなところからひとつまた真価を加えられたところなんじゃないかと思う」とチームの成長を語る。

武蔵越生は前半、攻撃が3トップ頼りになってしまい、決定的な形を作ることができず。井上精二監督も「そこでやりきれれば逆にうちがマウントを取れたのかもしれないけど、やっぱりあそこで跳ね返されて、なおかつ相手のボランチの6番(宮里)、8番(髙橋秀)のところでセカンドボールを回収されて、うちの二次攻撃ができなくなってしまった」と中盤の攻防戦を悔やむ。

それでも後半は1回戦の浦和戦で残り10分間から2得点を挙げ逆転勝利に導いたFW黒沢佑樹(3年)、10番MF岸田琉誠(3年)をハーフタイム明けから投入。すると36分、MF森大地(3年)のコーナーキックから岸田が繋ぎ、黒沢が右足のシュートを打ち込んで1点差と迫る。

さらにアディショナルタイムには岸田の左足のミドルシュートが枠上を捉えたが、ここは武南の守護神・前島拓実(3年)が好反応を見せてファインセーブ。内野監督は「今日の反省は良い時間帯になったにも関わらず、失点を与えてしまったことでバタバタきた10分間」としたように自分たちの流れになった時にあと1点、2点と追加点を奪えず、逆に終盤の相手の逆襲を許してしまったことは反省点ではあるが、昨年のリベンジを果たす形で武南がベスト8に進出した。

今夏は10年ぶりにインターハイで全国出場を果たした中、初戦で無念のPK負けという結果に。試合前の円陣では主将の前島から「全国での借りは全国でしか返せないぞ!」と檄が飛んだ。

「金光大阪に負けた後にコーチの仲村(浩信)さんから言われた言葉で、その言葉がすごいみんなに響いていて。インターハイであの負け方をして、すごいみんな悔しい想いをして、夏も和倉もそうですし、対外試合も、練習もいろいろ頑張ってきて、選手権に対する想いはすごく大きい。もう一回武南高校が全国に出て、あの場で、全国で勝ってという結果を残さないと不完全燃焼で終わってしまう。そういう意味を込めて、みんなにもう一回気合いを入れるために言いました」

松原も続く。「もちろん去年、一昨年の借りを返すっていうのもありますけど、やっぱり自分たちの夏の借りっていうのは自分たちで返さなきゃいけないので、そこでしっかりもう一回冬選手権に出ること。今年はスタジアムでは1年を通して駒場もNACKもやっていて、やっていないのは(決勝の行われる)埼スタだけなのでそこに行ってしっかりと勝つ」と気合いを込めた。全国の借りは全国で。2006年以来遠ざかっている選手権出場に向け、武南の戦いが始まった。

石黒登(取材・文)

試合結果

武南 2-1 武蔵越生
1(前半)0
1(後半)1