チームを蘇らせたHTの名将の喝、「自分たちがやってきたこと」を徹底した浦和南がプレミア昌平を下し、決勝へ!

「自分たちがやってきたことをやるだけっていうのをこの大会を通してずっと言われてきて、この結果はそのやってきたことができて、徹底できたのが良かったと思います」(橋本優吾主将)。

「自分たちがやってきたこと」を徹底し、強敵撃破。令和5年度全国高校総体・県予選準決勝が14日に行われ、プレミアEAST所属で前回大会覇者の昌平と浦和南が激突。互いに譲らず、PK戦にもつれ込んだ中で浦和南が本命とみられた昌平を下し、4大会ぶりの決勝進出を決めた。

立ち上がりから昌平は、準々決勝の狭山ヶ丘戦と同じように10番MF長準喜(3年)やMF大谷湊斗(2年)、MF前田大樹(3年)の2列目が果敢にドリブルで仕掛け、フィニッシュを狙う。すると前半16分、長を起点にエリア内に潜り込んだMF土谷飛雅(3年)が1人外し、抉ってクロス。これはGKに弾かれたが、こぼれをFW小田晄平(3年)が頭で詰めて先制した。

その後も昌平が猛攻を仕掛け、何度もゴールに迫る。浦和南は守護神の金悠聖(3年)の好守やクロスバーにも助けられ、最少失点で耐えたものの、「前半は実際、自分たちの思っているようなプレーもできなくて。みんなが固くなっていた」と橋本主将が言うように防戦を強いられた。

そんなイレブンにHT、野崎正治監督から喝が入った。「ハーフタイムに監督から「何をしに来たんだ!」とかなり渇を入れられて。そこでみんなやっぱり引き締まって、やってきたことをもう一度やろうとなって、後半は良い形で入れたと思います」。これが選手たちの心に火をつけた。

1回戦から登場の浦和南は初戦から12日間で5試合目。それでも練習で走ってきた量はどこにも負けない。「自分たちは絶対相手よりもきついことをやってきているし、体力面では自信があった。絶対に後半になったら自分たちの方が動けると話していた」と自信を持って後半を迎える。

球際で戦いながら徐々に前へ。すると8分、10番MF伊田朋樹(3年)が右サイドを仕掛けてFKを獲得する。これを自ら蹴ると、ファーサイドのタッチライン際で橋本が足を伸ばして食らいつき、そこで生まれた混戦を最後はFW掛谷羽空(2年)がプッシュして同点に追いついた。

浦和南は14分にも伊田のFKから掛谷が決定機。そして25分、追加点もまたセットプレーからだった。伊田の右CKは相手DFによって弾かれたが、「ゴール前では絶対ボール止めないで、ダイレクトで打てというのはいつも言われている」(橋本)というように、跳ね返りをエリアすぐ外に構えていたMF牛田晴人(3年)が左足でボレーでゴールに流し込んで逆転に成功した。

今大会初めてビハインドを背負った昌平は、直後にFW鄭志錫(2年)を投入して2トップに変更、攻撃の枚数を増やす。35分には長準のパスに抜け出した大谷が1対1を迎えるもここは金がストップ。時計の針はATに突入したが、その中で昌平は40分、長の展開から左SBの田尻優海(3年)のクロスをファーサイドで大谷がヘディングで合わせ土壇場で同点に追いついた。

延長戦では鄭や同じく途中出場のU-16日本代表MF長璃喜(1年)が個人技からゴールに迫ったが、浦和南も金やDF齋藤旺徳(3年)らがシュートブロックに入ってゴールを許さなかった。

互いに譲らず勝負の行方はPK戦に突入。昌平は先攻の相手の1人目をGK佐々木智太郎(2年)が先に止めてリードを奪う。それでも浦和南は中盤の3本目、4本目をこの試合でも好セーブを連発していた金がストップし咆哮。最後は5人目のDF木村孔亮(3年)が流し込んで激戦に終止符を打った。金は「実は…」と話すと、「(1本目を終えて)ベンチを見たら濱田(駿)先生が「こっちだ」と指さしていて。2本目以降は全部コーチの指示です」と影の殊勲を明かす。2本目も含め、3本すべてがコース一致。濱田コーチも試合後、したりという表情を見せていた。

全国4強メンバーを多く残す昌平を下して決勝へ。それでも橋本は「相手は関係ない。まだ次もあるので、これで勝って満足せずに、また次勝たないと。ここで勝っても次勝たないと意味がない。次もう1回勝って北海道に行けるように頑張って行きたい」と一層気持ちを引き締めた。

故・松本暁司監督に率いられ、1969年に史上初の高校3冠(高校総体、国体、高校選手権)を達成。その逸話をもとに制作された梶原一騎作のサッカー漫画「赤き血のイレブン」は大ヒット作となった。「南高魂」と呼ばれる守備のメンタリティはもちろん、そのDNAを継ぐ選手たちは「自分たちがやってきたこと」を徹底し、2018年以来5年ぶりとなる夏の全国を目指す。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 2(2PK4)2 浦和南
1(前半)0
1(後半)2
0(延前)0
0(延後)0
2(PK)4