南稜が逆転で「公立No.1」の3位に 下部組織的チームも発足、「独自のラインで」成長目指す

高校女子総体予選3位決定戦(13日、浦和駒場)。南稜は松山女子との公立勢対決を延長戦の末に逆転で制し、3位入賞。小椋大監督は「松女の守備が固いのは有名ですし、徳栄にも延長まで行っているので厳しい戦いになると思っていた。その中で最高のピッチで、ポゼッションして、自分たちのやってきたことをやろうと言って、公立No.1の座をかけてということをずっと1週間やってきた中で、失点した後もブレることなくしっかりやってくれた」と言って選手を労った。

立ち上がりから南稜はディフェンスラインから丁寧にビルドアップしながら、ギャップを突いた縦パスからMF四潟心絆(3年)やFW高橋咲来夢(1年)がゴールに迫る動き。それでも松山女子は今大会70分のゲームではわずか1失点の堅守で対抗。特にCBに入った大山望愛(3年)が気の利いた守備で全体をカバーし、攻撃でもひとつ運び出して起点を作ろうとしていた。

すると前半を0で凌いだ松山女子は後半2分、CB森下結里奈(3年)のFKからこぼれ球をMF中村悠愛(2年)が右足をダイレクトで振り抜き、この試合ファーストシュートで均衡を破った。

先制を許した南稜だったが、「今日は南稜のサッカーができていた」と話す小澤楓咲(3年)と成長株の関口愛果(2年)のダブルボランチのところで相手の攻撃を跳ね返しながらゲームをコントロール。さらに後半10分には長身のFW松田涼(2年)を投入し、前線に変化を加える。

少しずつ相手を追い詰めていくと26分、MF池上優香(2年)の左CKから「相手の前に入れれば触れるかなと思った」という松田がヘディングで値千金の同点ゴール。ATにはピンチもあったが、主将のCB中野唯愛(3年)が最後の部分でクリアをし、勝負は延長戦にもつれ込んだ。

そして決勝点が生まれたのは延長前半3分だ。流れるようなワンタッチパスの繋ぎから、中野の縦パスを松田が的確に落とし、左SBの瀬下翠月(2年)がダイレクトで前線の四潟へ。四潟はドリブルで前進すると、一度は相手DFにかかったように見えたが、こぼれ球を奪い返し、左足で柔らかいタッチのシュート。これがゴールネットに吸い込まれ、南稜が逆転勝利を収めた。

四潟は2年前、南稜が総体予選で初の県No.1を獲得した決勝でもゴールを奪っている選手。昨年の選手権予選は怪我に泣いた中で、今年はエースNo.10を背負いチームを牽引する。「(10番は)結構重いですけど、この番号を背負ったからには点を決めるのが自分の仕事」と話す今年のエースは「チームのためになる決勝ゴールを決められて、めっちゃ嬉しかったです」と喜んだ。

南稜は桑山秀家前監督の粘り強いサッカーに加えて、昨年からより高い景色を目指し、攻撃的なポゼッションスタイルに着手。今年のチームは中野や小澤と守備ができる選手もおり、小椋監督就任後3年目で「一番完成度的には高い」という。その一方で「この2年、3年でベスト8ぐらいのレベルがグッと上がってきている」というように、上位はこれまで以上に混戦模様だ。

選手集めにおいても川口市立などと競合になるなど難しい面もあるが、だからこそ「スタイル」を確立することが重要だ。指揮官も「なおさらポゼッションして、自分たちの強みを持ってやろうということをやっていますし、それが後々の選手のためにも繋がるかなと思います」と話す。

2021年からは下部組織的な位置づけとして、ジュニアカテゴリで戸木南ボンバーズの流れを汲むFCスペラールtodaが発足。今年度からはU-15カテゴリもスタートした。公立校ゆえに3年になると共に活動することができないが、新中1しかいない現在は同校でナイター練習をしつつ、練習試合に帯同することもあるという。この日は第1期生の3人が決勝戦を見守った。

「地域を巻き込みながら、そういう子たちが南稜のサッカーを見て、「ここ、いいな」「こういうサッカーがしたいな」と思ってもらえるように、指導も丁寧な良いサッカーをしようということで、地元の戸田市と協力しながらやっている。そういう形が何年かかけてできていけば、公立校ですけど、昌平とか徳栄とはまた違う、独自のラインで頑張っていければなと」(小椋監督)。地域を巻き込みながら、魅力的なサッカーを展開しながら、南稜は南稜のスタイルで成長を目指す。

石黒登(取材・文)

試合結果

松山女子 1(延長)2 南稜