埼玉平成がまたしても快挙!成徳深谷下し、初の関東本大会へ 技巧派集団に加わった守備のひとつまみ
守備の意識も兼ね備えた埼玉平成が初の県4強に続く快挙。26日、令和5年度関東高校サッカー大会準決勝が浦和駒場スタジアムで行われ、埼玉平成が1-0で成徳深谷を下し、関東本大会(5月26~29日/東京)進出を決めた。30日の決勝では初優勝をかけて武南と激突する。
この試合でも埼玉平成は個々が高い技術力を発揮。ディフェンスラインから丁寧にビルドアップしながら、相手のプレスをいなして前進。10番MF大久保夢牙(3年)、MF中島昂大(3年)、アンカーのMF三木響介(3年)のトライアングルはこの日も違いを作り出していた。
また、準々決勝を終えて三島伸也コーチは「相手を見て、相手の嫌なことをやり続けようと日頃言っている。よく繋ぐとか言われるんですけど、相手が繋がれたら嫌だなという時に繋いだり、後ろが空いていたら後ろに入れたり」と話していたように常に選択しながらプレーする。
すると試合が動いたのはロングフィードから。前半14分、CB清水聖那(3年)主将が前線に送ったフィードが相手守備陣の連携ミスを誘い、これを「今日は結構動けていた」(三島伸也コーチ)という右WGの納谷崇(3年)が蹴り込んで先制点。結果的にこれが決勝点となった。
また、守備面でもロングボール攻勢にもしっかりと対応。相手の強力2トップに対しても「一発目にガツンと行くことを意識していた」という清水がしっかりとプレッシャーに行き、相方のCB落合楓(2年)は守備範囲の広さを生かしたカバーリングや空中戦で強さを発揮。GK岡田大夢(2年)も雨の中安定したセーブを見せて0で抑え、初の関東本大会出場を掴み取った。
三島コーチは「正直蓋を開けてみないと分からなかった中でHTに帰って来た時に武蔵越生さんとの試合がすごい経験値があったみたいでそれとリンクさせて、選手たちがいろいろ対応したり、チャレンジしたりというのを話し合っていたので、これは行けるかなというのがあった」と話す。2回戦では新人戦準優勝で成徳深谷と似たタイプの武蔵越生と対戦しロングボールへの対応は履修済み。清水は「ムサオゴ戦で自分たちができたというのは自信にも繋がったと思いますし、そこでは成徳にも自分たちがやれるというのは実感していたと思う」と明かした。
今大会は4試合で失点は「0」。10年目を迎えた浦田尚希監督のもと、「止めて、蹴る」にフォーカスし、個の技術やショートパスを繋いで崩す、攻撃サッカーが売りの埼玉平成だが、これまでは点は取るが、取られることも多く、トーナメントではなかなか結果を残せていなかった。
三島コーチは「うちはうちのスタイルみたいな時期はあったんですけど、勝つことで日の目を浴びるじゃないですけど、見てもらえる機会が増える。失点0というのはいままで平成にはなかったこと。そっちの方向に方向転換するつもりはないんですけど、よりいろいろな経験値を詰める試合を踏めるように、最低限の守備っていうのもできたらなと思っています」と話す。
自分たちのサッカーをより高い舞台で表現し、経験値を積むために。技巧派集団に加えられた守備のひとつまみ。選手たちも手応えを感じており、清水は「取られた後の切り替えの部分だったり、取られた後、そこでもう一回取り返せばまた攻撃ができるというのに気づいたというか、攻撃を何回もやるためには、やっぱり守備があるから攻撃はできるよというのを三島コーチが教えてくれて、みんなの守備の強度の高さにも繋がっていると思います」と自信を見せた。
一方、初出場だった2018年以来2度目の本大会を狙った成徳深谷・為谷洋介監督は「立ち上がりがすべて。過剰に力が入りすぎていて、良い緊張感じゃなかった」と試合の入りを悔やむ。
前半の速い時間で連携ミスから失点。市立浦和戦でハットトリックを記録したMF福島叶都(3年)を早い段階の投入することを余儀なくされた。10番のMF福島雪翔(2年)が前半終了間際に放ったシュートは惜しくも枠右に。後半はGK緑川徠雅(2年)が好守を見せるなど最少得点差で味方のゴールを待ったが、なかなか最後までリズムを掴むことができなかった。
石黒登(取材・文)
試合結果
成徳深谷 0-1 埼玉平成
0(前半)0
1(後半)0b