全国高校サッカー選手権埼玉県2次予選準々決勝 浦和学院 vs 浦和東

選手権予選準々決勝。ベスト4最後の椅子をかけて浦和東高校と浦和学院高校が対戦した。試合は浦和学院が先制したものの、浦和東は後半37分に同点弾を叩き込むと延長前半にFW小川翼が決勝弾。劇的な逆転勝利を飾った浦和東が2年ぶり15度目の4強進出を決めた。

両チームともに開始直後から決定機を迎えた。ファーストチャンスは浦和東。相手のディフェンス陣形の整う前の前半開始30秒、後方からのクリアボールを小川が競ると、こぼれ球に飛び込んだMF根本駆のシュートは惜しくもポスト右に当たってゴールとはならず。浦和学院は4分にコーナーキックから森山泰行監督も「(ヘディングの)レベルは一個上」と話していたMF安居海渡が頭で狙っていくも、これもクロスバーに弾かれて先制点にはつながらない。

浦和東は小川にシンプルにボールを供給し、そこからのセカンドボールやサイド攻撃からチャンスをうかがう展開。対する浦和学院はFW田中和樹の前への推進力や個々の高いスキルでゴール前に迫っていく。しかし、浦和東、浦和学院ともに前半40分はディフェンス陣が高い集中力を持って先の2つ以外は決定的な場面を作らせず。試合はスコアレスのまま折り返した。

後半も両軍ともに序盤から攻めの姿勢を見せる。2分にはMF市村悠太朗のロングスローから小川のヘディングは枠を捉えたかに見えたが、わずかに右にずれてゴールポストを直撃。その1分後に浦和学院は田中の個人技からの強烈なミドルシュートがゴール右に逸れた。

そんな一進一退の攻防が続く中で先制点したのは浦和学院だった。後半11分、左サイドの信太英駿がハーフウェイライン付近からするすると上がっていくと相手を十分に引きつけてスルーパス。これに反応した田中がキーパーに当てながらも右足でゴールネットを揺らした。

一方の浦和東は持ち前の走力で相手の運動量が落ち始めた後半25分から押し込む時間帯を増やしていく。28分には途中出場のMF青木兵吾、小川とつないでMF中野音央が遠い位置からシュート。その1分後には左からの展開から「攻撃のリズムや勢いをつける意味でもあの位置からのシュートは効果的だと思った」という小川が再び距離のあるところから狙っていく。

ディフェンス陣も片岡瑞樹、宍戸俊太のセンターバックコンビ、GK高草木天平を中心に浦和学院のアタックを耐えながら最少失点を維持。後半34分には右サイドバックの小林雄太のクロスに小川が絶妙なポジショニングからダイビングヘッド。ボールは惜しくも枠を捉えることができなかったが、継続してドアをノックし続けると、ついに同点ゴールが生まれる。

再びスコアが動いたのは後半37分。左コーナーキックを獲得すると、市村の右足のキックにファーサイドから飛び込んだ片岡がタイミングばっちりのヘディングをニアに叩き込んだ。

「自分のマークのミスで失点してしまったので」(片岡)。後半11分の場面では田中に振り切られて先制点を許した。「絶対に取り返してやる」。そんな想いでいた終盤に迎えた最大のチャンス。普段はコーナーキック時は上がらないというが、キーパーの高草木と相談して前線へ上がるとチームを窮地から救う同点弾。「本当に嬉しかったですね」と顔を綻ばせた。

そのまま試合は4分のアディショナルタイムを終えても決着がつかず。第1試合の浦和西高校対正智深谷高校戦に続き、第2試合も勝負の行方は10分ハーフの延長戦に突入した。

そして迎えた延長前半5分に逆転弾が生まれる。青木から右サイドのMF前田祥玲にサイドチェンジが通ると、後ろから駆け上がった小林がキーパーとディフェンスの間に絶好のクロスを供給。これを小川が倒れこみながらも身体ごと押し込んだ。

「クロスからの形は練習してきたのでそれが生きた。両方が感じ取れてボールもよかったし、俺も飛び込めたので」と小川。「(当たったところは)もうわかんないです。とにかく気持ちで押し込んだ」ゴールだった。

これが決勝点となって浦和東が2ー1で逆転勝利。2年ぶりの選手権4強は今シーズン初めてのベスト4進出となった。一方、FC東京特別指定選手の田中や齋藤、安居らタレントを擁し、今冬の全国行きを狙った浦和学院は志半ばのベスト8で姿を消すこととなってしまった。

100分間を戦っても最後まで運動量は落ちなかった。浦和東・鈴木豊監督は「そこを取ったら話にならない」と苦笑いを浮かべながら、「(交代カード)5枚を使ってもさらに足のつっている子がいる中でしっかりと動けたことが一番。その中で自分たちのサッカーがしっかりとできた。慌てなかったことと、最後まで動けたこと」が勝因とタフな一戦を振り返った。

決勝点の小川はこの日最多の6本のシュート。183cmの長身を生かし、前線で起点になるなど、浦和学院守備陣を相手に身体を張り続けた。指揮官も「試合になるとやっぱり力強いし、競り勝てる。まだ2年生なのでその点はまだまだ伸び代があるかなと思っている」と期待を寄せている。チームを準決勝に導くゴールにも「自分はエースじゃない。エースはもっとしっかりしていますよ」。自他共に認めるエースになるために背番号18は成長を続ける。

準決勝は浦和西高校との「浦和東西ダービー」に。今年は新人戦支部予選決勝、インターハイ予選準々決勝で対戦し、浦和東の2敗となっている。「何かの縁か。今年は2回負けているので、このままやれずに2連敗で終わるよりも最後もう一回決着をつけたい」と鈴木監督。

選手たちも想いは同じだ。主将の高草木は「この選手権で借りを返して全国に行きたい。(2回の対戦は)決定力が課題だった。それに関してはひとりひとりが自主練で改善してきたことが今日の結果につながったのかな」と手応え。また、高身長が揃う浦和西に対しキーになってきそうな小川は「自分も決めて尚且つ、人を生かすプレーをしていきたい」と意気込んだ。

今年最後の東西決戦。ライバルを下し、鈴木監督就任後初のファイナル進出となるか。

石黒登(取材・文)
椛沢佑一(写真)

試合結果

浦和学院 1-2 浦和東

0(前半)0
1(後半)1
0(延前)1
0(延後)0