初の埼スタ決戦にも「イキイキ」プレー! セットプレー&堅守、持ち味を遺憾なく発揮した成徳深谷が歴史を動かし、創部初のファイナルへ

第101回全国高校サッカー選手権県予選の準決勝が6日に埼玉スタジアム2002で行われ、成徳深谷と浦和学院が激突。成徳深谷が2-1で浦和学院を振り切り、創部初の決勝進出を決めた。13日の決勝では初の全国大会出場を目指し、インハイで敗れた昌平とのリベンジマッチに挑む。

4年前に埼玉2冠した代も届かなかった決勝進出――。成徳深谷がまた新たな歴史を刻んだ。

為谷洋介監督は「インターハイのところから、ここを目指してきた。日ごとに選手たちが集中していく姿、成長していく姿が見えたので、そういう意味では我々スタッフも自信になっているし、選手も自信になっていると思う。1週間また準備できるのは本当に幸せなこと」と喜びを語った。

初の“埼スタ決戦”にも選手たちは「イキイキできていた」と指揮官は話す。浦和レッズ下部組織出身のGK木村航大(3年)主将は「緊張しました(笑)」と明かしたが、「別にその緊張で固くなったり、そういうのではなかった」と言い、その緊張感を良いエネルギーに変えられたという。

FW秋本光瑛(2年)、FW平井心瑛(2年)にボールを集め、そのセカンドボールを回収する得意のスタイルで相手陣地に攻め込むと前半13分、早々にゲームを動かす。敵陣左中間で獲得したFKからDF鈴木嵐(2年)が正確なキックを蹴り込むとDF辻本晴也(3年)が首を振りながら頭で合わせた。準々決勝の狭山ヶ丘戦でも決勝弾を奪った辻本はこれで3戦連発となった。

さらに20分には前で身体を張ったプレーを見せていた平井がエリア内で倒されてPKをゲット。これをレフティの鈴木がGKの飛んだ逆側に冷静に蹴り込んで、引水前にリードを2点とした。

また守備では相手の強力2トップを徹底的に対策。「やっぱり前線の2トップの良さを消すためにという準備を1週間してきた。10番はものすごくヘディングが強いので例えば前に入ってちょっと動きを封じたり、まず自由にさせないこと。11番はやっぱりドリブルがあるのでカバーを重ねたりとか、そういう2人の良さを消すための準備というのはすごいしてきました」(木村)

強力アタッカー陣に対し、組織的に守りながら、相手のやりたいサッカーを出させない。また、この試合が成徳深谷にとって今大会、初のS1勢との対戦となった中で「S1レベルでの強度の強さというのはかなり強く言ってきた」(監督)というインテンシティの高さも80分にわたって際立っていた。空中戦ではこの日もCB増子颯竜(3年)が絶対的な強さ。埼スタ“凱旋”となった木村は相手のクロスやセットプレーに対して果敢にチャレンジし、決定機を潰していった。

浦和学院は前半、相手の守備戦術にはまり、上田海輝人(3年)、石川真稀(3年)のFWの2枚看板を生かせず、なかなかゴールに迫ることができなかった。後半は幅を使って相手のプレッシャーを逃がしながら、ボールを持っての攻撃も増えた。その中でDF持山凛太朗(3年)のロングスローというアクセントも加えながら、ペースを掴みかけたところもあっただけに「結果的にもう少し前半からできていたら」と村松浩監督も悔やむ。44分、途中出場のMF野中理央(3年)がエリア内で仕掛け、自ら得たPKを決めて1点を返したが、反撃はこの1点に終わった。

成徳深谷は今大会、初戦となった3回戦の西武文理戦こそ苦戦したが、準々決勝、準決勝と選手たちがそれぞれに与えられたタスクをしっかりとこなし、らしさを前面に出したプレーが光る。

躍進のカギのひとつは、今年行っているスタッフなしでの選手たちだけによるミーティングだ。

主将の木村はいう。「インハイで負けて、やっぱり何かを変えなきゃということで、最後みんなで話すようにして、その日の振り返り、何ができて、何ができなかったか、何のためにやっているのかとか、目指す方向性とか、そういうのを毎回確認して、チーム全員が目指しているところ、試合に対する想いが一緒になるようにというのは意識しています」。いくら力を持っていても、全員が違う方向を向いているなら、それは真の力の発現には至らない。全員が同じ方向を向き、同じ考えを共有していることが、チーム力を100%、120%出し切れる現在の形に繋がっている。

就任20年目で初の選手権予選ファイナルに進んだ為谷監督は「あっという間でしたね」と振り返る。これまで決勝に最も近づいたのは2018年。この年は新人戦で県大会初優勝を果たすと関東予選も制して県内2冠を掴んだ。インターハイ予選に続き、選手権予選も準決勝に進出したが、浦和南を前に延長戦の末に敗れた。今年の代は主将の木村も含め、中2の時にその活躍を目撃し、成徳深谷に進学した3年生たちだ。あれから4年が経ち、当時の主将を務めた佐藤蒼太や菊地麟太郎が教育実習で戻ってきた年というのも何か不思議な縁を感じる。プログラムに載るコーチのリストには同じく県内2冠メンバーの藤田温杜も名を連ねる。為谷監督は「OBもたくさん手伝いに来てくれている。そういう想いも、彼らは背負いながら戦っている」と話す。

初の全国を狙うファイナルの相手はインターハイに続き、指揮官が「横綱」と話す昌平となった。

木村は「試合後、「絶対、昌平を倒して」と、浦学の選手たちが言ってきてくれた。浦和学院や、ここまで負けてしまったチームの想いも、やっぱり背負っているんだなというのを感じたので、そういう思いも背負って、来週戦いたい」「インハイは自分たちのミスで失点してしまったところもあったし、逆に後半は自分たちのペースで試合を運べたという印象もあった。そんなに差はないと思いますし、学校初の全国大会というのもかかっているので、1週間しっかり準備して、自分たちの代で全国に行って、また新たな歴史を刻めたら」とリベンジに闘志を燃やす。さまざまな想いを背負って臨む初の決勝。今度こそ昌平の牙城を崩し、初の全国という歴史を刻む。

石黒登(取材・文)

試合結果

浦和学院 0-0 成徳深谷
0(前半)0
0(後半)0