包囲網を突破し、4年ぶりの夏の全国へ! 昌平が身につけた「うまくいかない中」でも勝利を手繰り寄せる勝負強さ 

まだ本領発揮とは言いがたい。それでも各校の“昌平対策”の網を突破し、昌平が夏の全国へー。令和4年度全国高校総体県予選・決勝が19日にNack5スタジアム大宮で行われ、昌平が2-1で成徳深谷を振り切り、2018年以来3大会ぶり4度目となるインターハイ出場を決めた。

当時1年生だったMF須藤直輝(金沢)らを擁し、3位に入った2018年以来の夏の全国を狙う昌平は4-2-3-1の布陣。GK上林真斗(3年)、4バックは左から武村圭悟(3年)、今井大翔(3年)、津久井圭祐(3年)主将、上原悠都(1年)、ダブルボランチは土谷飛雅(3年)、佐藤海空斗(3年)、2列目は左MFに佐々木琥太朗(3年)、右MFにFC東京内定の荒井悠汰(3年)が入り、トップ下は篠田翼(3年)、FWは初起用となった平叶大(2年)が入った。

一方、関東予選で4強、今大会では正智深谷、西武台などを下して決勝進出を果たし、初の全国を目指す成徳深谷は中盤ダイヤモンドの4-4-2システム。GK木村航大(3年)主将、守備は左SB鈴木嵐(2年)、CB増子颯竜(3年)、CB小久保伊吹暉(2年)、右SB辻本晴也(3年)、中盤は1ボランチに高橋流(3年)、右SHに安野心富(3年)、左SHに松田陽瑠(3年)、トップ下にMF和光翔夢(3年)、2トップは秋本光瑛、平井心瑛の2年生コンビが並んだ。

昌平は前半18分、敵陣中央でボールを持った篠田が持ち味の推進力を発揮して、ドリブルでスルスルと持ち出す。そこから荒井のカットインシュートは相手DFのブロックに遭ったが、こぼれ球を起点となった篠田が右足でエリア右の角度のないところから豪快に蹴り込み、先制した。

その後も土谷や津久井の正確なフィードから33分、36分と荒井が連続して裏に抜け出して相手に圧力をかける。するとラストプレーとなった43分、土谷のロングボールに対し、成徳深谷はGKとCBが痛恨の連携ミス。裏に走った平が右足で決めて追加点を奪い、前半を終えた。

成徳深谷はこの日も鈴木のロングスローが脅威となっていたものの、2000人が詰めかけた観衆やスタジアムの雰囲気に呑まれ、なかなか踏み込むことが出来ず、出足が重かった。HTには為谷洋介監督から「お前ら何をやっているんだ!」「ここに何をしに来ているんだ!」渇が入った。

「まずは日常に戻さないといけないなと思った。戦術云々よりも根本的なところをまず言って、全然やれるのに戦えていないよ、やろうとしていないよと。これだけ人が来てくれているのに何をしてるんだ、ということをちょっと強く言って、そこでスイッチが入ったかなとは思う」

すると後半は成徳深谷が息を吹き返す。正智深谷、西武台戦と同じように球際で粘り強く戦って前へ出る形を増やす。9分にはこの姿勢が実り1点を返したが、得点はまさに成徳深谷が狙いとしてきた形だ。秋本が潰れ、平井が泥臭く繋ぎ、10番の和光が冷静にワンタッチで流し込んだ。

しかし、追撃はこの1点のみに。その後も終盤にかけて成徳深谷がロングスローやロビングから襲いかかったが、昌平は津久井主将を中心にこれを跳ね返し続け、2-1のままゲームを締めた。

まだまだ本領発揮とは言いがたいのかもしれない。藤島崇之監督も「今日のゲームに関してはちょっとうまくいかない状況を我慢しながらかなと思っていた」と難しい試合になることを予想していたという。それでも「こういうところで粘り強く勝ちきれるというのもチーム力を向上させるひとつのきっかけになるのかなと。うまくいかない中でも勝つというところの大切さもありますし、次のステージでまたしっかりチャレンジが出来るというのはすごく良いこと」と話す。

昨年はこの「うまくいかない中」での試合をものに出来なかった。年代別代表選手も複数人抱えて、大きな期待を受けた中で夏は正智深谷に、冬は武蔵越生に敗退。昨年よりの主力で今年キャプテンマークを巻く津久井は「去年は決勝にすら行けなくて、もう本当に悔しかった」と振り返る。

今大会は昨年以上の包囲網を敷かれる中で準々決勝の狭山ヶ丘戦以降、武蔵越生、成徳深谷戦と3戦連続の1点差ゲームとなったが、「県内だと昌平対策で引いてくるチームもあって、プリンスと相手も全然違う戦い方をしてくる中で切り替えて、セットでも点を取れたし、今年はいろいろな色がある」と主将もいうようにセットプレーなどこれまでと違った色も見せながらの戴冠。プリンス参戦3年目となり、強豪との戦いの中で培われた多様性は勝負強さに繋がっている。

「僕らもやっぱり“昌平らしさ”というふうに、客観的な捉え方をされている部分もありますけど、そこに力強さだったり、個の打開力という部分に関しては、今年はすごく楽しみな選手も多い。とはいえやっぱりボールを動かしながら、しっかりと主導権を取るという状況に関しては、よりまた強調しながらやってもいいかなと。リーグ戦だったらこういう戦いはもしかしたらしないかもしれないですけど、今日は(全国掛けのところで)ちょっとやっぱり勝負にこだわってというところの中で選手の判断にある程度、ゲームの中でのジャッジを大切にしようと思っていたので、そういう部分に関しては粘り強くやったというのはひとつの収穫かなと思います」(藤島監督)

4年ぶりの夏の全国へー。前述の通り4年前は3位に、またMF松本泰志(広島)、MF針谷岳晃(北九州)がいた2016年も3位と、過去4度の出場で2度の3位と夏の全国は得意とする。

「チームとしては本当に優勝出来て良かった。でも、個人としては全然納得していないので、全国でもっと活躍出来るように頑張りたい」と全国での捲土重来を狙うエースの荒井は「日本一を狙っている。1試合1試合大事にして、自分も得点で絡んでいきたい」と意気込みを示した。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 2-1 成徳深谷
2(前半)0
0(後半)1