やるからには『究極』でー。ポジション転向を決意した篠田大輝「自分が試合の中心になるくらいのサイドバックに」
開幕節が延期となったため、昌平にとっての今シーズンのプリンスリーグ初戦となった東京ヴェルディユース戦(2-0○)、一番のサプライズは主将の篠田大輝の左サイドバック起用だろう。
サイドバックへの転向を言い渡されたのは、新チームでの最初のミーティングだったという。
「ボードで名前が出されるんですけど、その時に自分の名前がサイドバックにあって、最初「えっ!?」って思ってへこんでいたんですけど…」。高校1、2年とFWとしてプレーし、選手権では2年連続でゴールを奪っている篠田にとって当然「前をやりたい」という気持ちもあった。
それでも様々な人のアドバイスから挑戦を決意した篠田は「サイドバックを磨いて、もう本当に「究極」じゃないですけど、自分が試合の中心になるくらいのサイドバッカーになりたい」と心機一転。また新ポジションに慣れてくることで、個で打開する面白さも感じているという。
前半から昌平に来て一番成長したというドリブルを武器に何度も縦を突破。また「自分がもらったら相手は遅れた状態で来るので、あとはもう自分の間合いで交わせばチャンスになる」というように4人目、5人目として飛び出してくる篠田に対し、相手もなかなか対応できてなかった。
そして前半37分には「引水タイムで監督に終わり方が悪いというか、もっとやりきっていいということを言われて、じゃあ仕掛けてシュートなり、仲間にアシストなりを考えて、そこで高い位置でボールをもらえて、自分の得意角度というか、あそこは自分のドリブルが生かせる場所なので、入り込んだ時にちょうど翼の声が聞こえて、この辺かなみたいな感じで出したらいた」と、あうんの呼吸で弟・篠田翼のゴールを演出し、サイドバックとして初アシストを記録した。
またチームとして運動量が落ちた後半は守備の面で貢献。「自分の売りとして献身性やチームへの貢献というのは常に頭に入れて攻撃も守備もやっている。サイドバックは特に守備のところなので身体を張るというのは意識しています」とクロスをかき出したり献身的な姿勢も光った。
一方でフィニッシュまで行けなかったのはひとつ課題に。「今日はクロスは良いところに出せたんですけど、シュートという部分で1本も打てていないのは今後の課題。武器である決定力というのはサイドバックでも出せると思う。そういうところは意識してやっていきたい」。サイドからの推進力に加え、篠田のここ一番の得点力が出てくれば面白いサイドバックになりそうだ。
藤島崇之監督は篠田の転向について「推進力もあって守備のところで身体を張れる良さもある。アタッカーで去年やっていましたけど、そこよりもちょっと将来的な部分も含めて生きるところはどこかなと。両足で蹴れますし、すごくプラスになるところかなと思います」と話していた。
将来的な、というのはもちろんプロも含めた上のステージのこと。篠田も様々な状況を鑑みてプロの世界の難しさを感じているというが、同時に「ひとつのプランとして高卒でプロになりたいという気持ちもありますし、ひとつのプランとして大学4年間で本当にプロに向かって自分を磨いて卒業後にプロになるという、そういう意識も出てきている」という。どちらにしても今回の転向は目標とするプロに向けて、良いブレークスルーのきっかけになるかもしれない。
今後は各チームがSB篠田大輝を対策してくるだろうが、「研究されても止められない選手になりたいですね」。やるからには「究極」でー。試合の中心となるサイドバックの成長が楽しみだ。
石黒登(取材・文)