令和2年度新人体育大会準決勝 埼玉栄 vs 東松山松山

令和2年度新人体育大会・準決勝。埼玉栄は3-1で東松山松山を下し、決勝進出を決めた。


決勝行きをかけた一戦はいきなり動いた。前半2分、埼玉栄は敵陣右エリア前で受けたMF櫻井悠琉が左にスライドしながら横パス。これをMF多田野航汰が左足で決めて早々に先制した。

さらに前半12分、コーナーキックからの攻撃は実らなかったが、クリアを前でDF髙橋宗悠がカット。DF原田空虎につけると、背番号4は左足を振り抜いてネットを揺らし、追加点とした。

一方、出足を突かれた松山も前半22分、大型ボランチの石塚真士がセンターでボールを奪うと、俊足MF小倉璃翔にスルーパス。小倉はスピードに乗ったドリブルで抜け出し、1点を返す。

後半も埼玉栄がペースを握った中で松山も中盤で奪って途中出場のMF山崎篤樹らにシンプルに叩いて押し込む場面も。それでもここをディフェンスラインを中心にしっかりと凌いだ埼玉栄はアディショナルタイム、原田の1本の縦パスからFW加藤佳大が独走し、最後は左足で流し込んで勝負あり。3-1で勝利した埼玉栄が昨年泣いた準決勝を突破し、埼スタ行きを決めた。

「山場だと思っていた」(滝井友和監督)という準々決勝のさいたま大原中とのPK戦に及ぶ激闘を制しての準決勝。「準決勝は去年も負けているのでリベンジだと思って、そういう想いはあって戦えたかなと思います」と指揮官はいう。去年は原田、加藤、FW金井裕世、MF浅倉孜音らがこの舞台を経験。そういった中で壁を破ったのは、やはり2年生たちの活躍だった。

決勝に向けては「良いゲームができると思う。プレッシャーがある中で守備も攻撃もお互い良いサッカーをやりながら、最後は勝負にこだわってやりたい」と頂上決戦に向け闘志を燃やした。

キャプテンDF原田空虎が決勝弾! 埼玉栄は自信を深める「チーム力」で13年ぶりVを狙う

準々決勝の大原中戦は0-0からのPKと厳しい試合を勝ち上がってきた埼玉栄だが、この試合はMF多田野航汰のゴールで早々に先制。すると決勝点となる2点目を奪ったのはCBコンビ。

前半12分、コーナーキックからの攻撃はキーパーに防がれたものの、クリアボールをDF高橋宗悠が前線でカット。そこからセットプレーのキッカーを務めたDF原田空虎にクロスが入る。

「コーナーキックはミスキックになってしまったんですけど、すぐにみんなが取り返してくれた。ミスした分を取り返さなきゃなと思った」と原田。もともと小学校時代は中盤の選手。中学ではチーム事情もあってCBを主戦場にするが、シュートやキックには自信があった。左足を振りぬくと、低空の鋭いシュートがゴールネットに決まった。先制はしていたものの、まだどちらに転ぶかわからない中での主将の一発に滝井友和監督も「あの2点目が大きかった」と話した。

後半は押し込まれる時間帯もあった中で原田がリーダーシップをとってディフェンスラインを統率。終了間際にはFW加藤佳大が終盤の疲れを感じさせないランを見せダメ押し点を奪った。

今回はさいたま市予選を優勝し、本命のひとつとして県大会に臨んでいるが、「(市予選は)確かに優勝しようという気持ちはあったんですけど、まさか本当に優勝できるとは思っていなかったんです」と原田は明かす。それでも「やっぱり優勝したからこそそれを自信に変えて、自分たちが代表だという自覚を持って、そういうプレーをしっかりできればということでやってきた」。

迎えた今大会はくじ引きの結果、1回戦からのスタートとなった中で滝井監督も目を細めるほどに選手たちは試合毎に大きく成長。そしてついに県決勝の舞台にたどり着くまでに至った。

2回戦の越谷千間台中戦後に原田は「個人個人というよりは「埼玉栄というチーム」をしっかりと見てもらいたい」と話していた。テレビ放映される決勝はそのチームを見てもらう絶好の機会。

「解説の人とかはやっぱり個人個人に注目して、あの選手が良いとか言うかもしれないですけど、やっぱり最終的には(埼玉栄という)チームを見てもらって、試合が終わった時に「このチームは素晴らしいチームでしたね」と言われるようなプレーをして終わりたいと思います」。

決勝の相手は抜群の「個」を誇る南浦和中だが、「チーム力」という部分では自分たちも負けてはいない。決勝もチーム一丸となって戦い抜き、13年ぶりとなる優勝トロフィを持ち帰る。

石黒登(取材・文)

試合結果

埼玉栄 3-1 東松山松山
2(前半)1
1(後半)0