何度も立ち上がる不屈の精神 昌平の鉄人SB柳田は2回戦以降の4試合フル出場で貢献

試合を追うごとに包帯やテーピングの数を増やしていった背番号12だが、心は最後まで決して折れなかった。昌平の鉄人サイドバック・柳田亘輝は負傷を抱えながらも持ち前のファイトで2回戦以降の4試合でフル出場を果たし、高い運動量でチームの優勝に貢献した。

「自分は(須藤)直輝とか(小見)洋太みたいにすごい個人技があったり目立つタイプの選手じゃない。やっぱりチームのために走って、身体を張ってというのは自分の取り柄だと思うので、そういうところで貢献できたらいいなというのは自分の中に持ってプレーしています」。

腰に痛みを抱える中で迎えた今大会は2回戦からスタートに復帰。3回戦の武南戦では左目の上をカットし、包帯を巻きながらプレー。準々決勝の正智深谷戦では右腕を負傷、準決勝の聖望学園戦では競り合いの際に頭から落ちてしまい軽い脳震盪を起こして一度はピッチを離れたが、その数分後には再び舞い戻った。試合を追うごとに負傷箇所を増やしていく姿にチーム内でも「(チームの不幸を全部)背負っているのでは」といった冗談も出てくるほどだった。

もうピッチに倒れて楽になりたい。少しでもそう思ったことはなかったのだろうか。「そういうのは0ですね。自分がそこで潰れるじゃないですけど、自分が身体を張ってチームのためになれるんだったらそこで自分が身体を張りたいと思いますし、もちろんフルで出たいっていう気持ちはある。途中でダメだなとか、心が折れたことは、ここまで1試合もなかったです」。

3回戦、準々決勝では頭に包帯を巻きながらプレーする姿に昨年の主将・関根浩平(青山学院大)を思い浮かべた人も多いだろう。「去年はスタンドで見ていたんですけど、関根くんが目の上を切って、応急処置のためにピッチアウトしていないところで失点したのを見て、やっぱり一番辛かっただろうし、自分も今回同じ状況になって、去年メンバーにいたわけではないですけど、借りを返したい気持ちはありました」。決勝には関根をはじめとする去年の3年生たちも応援に駆けつけた中で先輩たちから受け継いだ魂を持ってプレー。「その自分の気持ちっていうのはいろいろな人に伝わっているとは思うので今後も頑張りたいと思います」。

もちろんその不屈のスピリットは選手権でも変わらない。「(全国でも)倒れたとしても多分またすぐに起き上がると思います」と柳田。その姿は必ずやチームに勢いをもたらすはずだ。

石黒登(取材・文)