選手権直前インタビュー!「選手権は一戦一戦決勝戦のつもりで戦う」守屋保(西武台高校サッカー部監督)

全国高校サッカー選手権出場3回、インターハイ出場10回を誇る、西武台高校。この西武台高校を強豪校に育てた守屋保監督に、指導理念、選手権の魅力、今大会にかける思いを13日から始まる高校サッカー選手権埼玉県大会決勝トーナメントを前に語っていただいた。

西武台・守屋保監督

指導において大事にしているこだわり

―守屋監督が1987年に就任されてから早30年以上になりますが、指導する上で心がけている部分はどんなところでしょうか。

そうですね。早いものでそのくらいの年数が経ちました。これまで指導をしてきて、自分が監督でやっている以上、自分が見ていて楽しくなかったら、自分の教えが悪いんだろうなというのは感じますよね。自分が考えて描いていることを子供たちが表現して、尚且つ、一番嬉しいのはその子たちが大学やJリーグクラブから「うちに来ないか」と声をかけられること。勝つとともにそれを実現するのが、やっぱり指導者の最高の喜びなんじゃないかなと思います。

いろいろなカラーがあっていいと思うんですよ。でも監督があっちのサッカーをやる、こっちのサッカーをやる、これじゃあ勝てないから蹴りまくるといったら、勝負にならない。逆にうちなんかはそれでも勝負にこだわって、ボールを動かすだとか、突破だとか、3人の関係までの崩しだとか、サイドからしっかり入り込んでいくだとか、積極的に穴を開けてもオーバーラップさせるだとか、その辺があって初めて見ていて面白いと自分が感じているので、パワープレーで点を取った時には非常にラッキーだな、でもこれは自分たちの勝ちじゃないなと思います。サッカーですから、たまたま勝ったという時もありますし、その辺はしっかりと見極めていきたい。ただ勝つだけじゃなくて、どういう勝ち方だったのかというのはこだわっていきたいですね。

いまそれにプラスをして子供たちにも考えさせる時期に入ってきました。やっぱりこちらからやらせるだけでは、そこは自分発信じゃないから限界がある。もうとことんダメだったらダメでも我慢して見なきゃいけないし、考えさせなきゃいけないなと。まず自分の力、自分のサッカーを知るということにいまはアプローチをさせています。自分のプレースタイルを知るっていうことがわからない子たちが多いですよね。わからないから努力もしない。結局自分のプレーで良いところ、自分のプレーで足りないところ、それをとことん自分で知って行動すればそこが努力に変わると思うんですけど、「お前ここができてないだろ」「これがこうだからダメなんだよ」というと「いや、俺にはこれがあるから別にいいです」みたいな感じになりますよね。

そうするとそれ以上の成長はないから、何しろ考えさせなきゃいけない。もう本当に叱るのは2割くらい。下手すれば1割叱って、ほとんど褒めて、教えるのも2割くらいに変わってきましたね。この1年ずっと自分たちのストロングポイントと相手のストロングポイント、どういうところに次の試合は注意して戦わなきゃいけないか、それを勝っても負けても自分たちで反省して黒板に残しておけということで、終わった後に書いて、話し合わせています。これを見て、ここは気が付いてくれたからここの練習はもっとさせて意識させた方がいいなとか、ここは自分たちでもできたと思っているんだから、じゃあここをどんどん褒めてやろうかなという材料にはさせてもらっています。そういうことも初めてですね。いままでそういったアプローチはしてこなくて、こちら側でこうだろ、ああだろという形でチャレンジしていたんですけど。だから今年はリーグ戦の中でどうにか負けも少なくできているのかなと思います。

ただトーナメントに関しては相手に呑まれて、いままで負けたことのない1回戦、2回戦で今年は負けている。新人戦は準優勝まで駆け上がって、それは自分たちのやりたいことだけやってある程度は通用したというのはありますが、関東、インターハイではマークされる中でストロングポイントを消された試合をしてしまった。自分たちにどこが足りないのか、どういうことをやっていかなきゃいけないのかっていうことを目指しながら、いまちょっとやっている最中です。その結果がどうなるかは、まだ自分でも未知の部分ですが、そのことをやらせたことによって逆にモチベーションを下げたり、子供たちが暗くなっているっていうことは少ないなというのは感じます。

―指導のアプローチも変わってきていると。先ほどのミーティングには指導者も参加しているのですか?

そこには入りません。まず自分が話をしてあげて、あとは自分たちでどう考えるのか。終わった後にそれを見て、次の試合はもっとこういったところを出そうだとか、やれるところをもっと精度を上げていこう、スピードを上げていこう、もっと人数を増やして関わりを増やしていこうと。ひとりで決められないんだったら、3人で決めるしかない。決定力についても誰に頼るんじゃなくてということも練習の中で話をするんですが、そうするとその試合で決定機を外した子が落ち込んでということより、やっぱりみんなもそれをサポートしなきゃといけないんだという話になります。

以前までの「もっと練習しろ」「ヘディング100本でもやっておけ」というアプローチから、なるべくそういうのは少し避けて、じゃあちょっと一緒にやるかと、こういう形で打ってみなとかっていうふうには時間があった時にはするようにしてあげてというのが今年っていう感じですね。やっぱり本当に変わっていかなきゃダメだろうなと。いままでやってきたことだけで進めても自分にも成長がないだろうなというのと、練習の内容とかそういったものも同じことじゃなくて、去年とは全く違うようなことをやったり、自分でいろいろな本を読んだりとか、いまのサッカーを見たりとか、雑誌の中からひとつ言葉を探したりっていうのをやっぱりもう一回やらなきゃいけないんだなと。指導者が勉強をしていかないと、子供たちもなかなか乗ってこないっていうのは絶対にあるんじゃないかなと思います。

選手権は3年間の思いをぶつける大会

―「見ていて楽しいサッカー」という言葉が出ましたが、インハイ準優勝時や初めて選手権を決めた時はやはりそういう形を体現できていたという感じだったのでしょうか。

そうですね。練習した形で守れたり、練習した形で崩せたりだとか、これで勝負だろということが全面的に出せて、そういう試合になるのはやっぱり気持ちいいですよね。選手権に3回行った中でも1回目と3回目はこっちが描いていた子供たちの能力を活かせたというのはありますね。2回目は逆に生かせずにもう本当に考えさせるというより、これをしなかったら負けるぞという方が多かったですね。やっぱり何回かの経験の中でこういうことができたら絶対に勝てるからっていう、こっちにも自信がみなぎってくるっていうんですか。やっぱりそれが選手に伝わるんだろうなというのは、いままでも感じてきたところかなというのはあります。

指導者も人間ですからやってきたことがあっているのかどうか、多少ブレるところもあったりすると思うんですけど、何かを変えたり、考えるっていうことは子供たちにとっても指導者にとっても成長だと思います。だから考えて悩んで、どうしたらそういうプレーができるのか、どうしたらもっと良い形でいまの子たちのレベルを上げられるのか。この子たちでこれしかできないじゃなくて、まだできるぞというスタンスでこっちがいないと子供たちも一緒なんですよね。まだいけると思うのと、もうダメと思うのと、全然そこが違う。まだいけると思えばもっとやる、でももうダメというと絶対にやらなくなると思うんですよね。そこのところの責任もこちらにあるんじゃないかと。まだ俺たちはできるよと、そういうふうに選手に思わせる。

ここが面白いところで、大学でも自分の望んだところでもう一回サッカーをやろうっていう強い気持ちを持った子と、いまサッカーに全力をかけてやってやろうっていう子たちがいる時というのは不思議と選手権が取れますよね。そこはもう上でやってやろうという志というか、意識の違いですよね。よく意識が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格も変わる、人格が変わっていけば人生も変わるみたいなことを言いますけど、そこまで伸びて行く子っていうのは見ていてやっぱり頼もしいですよね。そういう姿になっていって、選手権に出るのが僕は高校サッカーの一番の在り方なんじゃないかなと思いますよね。ここでいろいろと試合をしたり、大学のセレクションを受けたり、自分の学力もわかってくる中で、自分っていうものはやっぱり選手権というものがあって、3年生のこの時期になってやっとわかってきますよね。

―3年のこの時期までは本当の意味では自分を理解できていないと。

まだわからないで、自分の弱いところや、できないところにトライしていないから「自分はできる」で来ちゃいますよね。勉強も一緒で「俺ここまでやったのに」「もうダメだ、勉強も伸びないや」っていう奴はやっぱり進路も学力も向上してこないですよね。「いや、俺、足りない」という子たちはサッカーに関しても、人間的にも勉強にもすべてがここでグッと上がってきますよね。それが選手権なんじゃないかなと。それを上げたチームが勝ち上がってくる。

そこはサッカーだけじゃなく全部が繋がってくると思いますね。そこまでやってやろうという努力をどのチームが一番する子たちがいるのか。当然やっぱりサッカーが大好きで、プロを目指して全寮制に入って、とことん朝から晩まで俺はサッカーをやるんだっていう子たちもその気持ちがもうひとつあるかどうかですよね。逆に勉強ができて、サッカーと両立させたいんだっていう子がそれを最後の最後まで実現させようとしているかどうかですよね。それをしている子たちっていうのは夢がありますから、「俺は法政に行ってサッカーをやるんだ」「俺は早稲田に行ってサッカーをやるんだ」というイメージを持って毎日を意識しながら生活していますから、やっぱりそれは繋がっていきますよね。その辺りは見ていてすごく感じますね。

いまうちのチームでもそれが半分に分かれていますね。6大学を受ける子も「先生、ダメだったら国士舘でも僕サッカーをやろうと思っているので」と。逆にせっかく良い大学から声をかけられてその力があるのに、なんらかの理由をつけてそこの厳しい環境ではやりたくないと。大学でもあまり厳しさがないところだったらやりたい、でも朝から晩までサッカーで頑張らせる、鍛えていくという学校から声がかかったら自分はそこだと……と。そこでもどこでもやるというのがやっぱり必要なんですよね。そこで選んでしまうというところに、試合でも勝ち負けを選んでしまうんじゃないかなと。もう最後までやってみなきゃわからないという精神も心の中には欲しいですよね。この選手権というトーナメントはみんなが本気で戦う最後の試合ですので、やっぱりインターハイともリーグ戦ともまったく違うものに変わってきますし、本当に3年間の想いをひとつの試合にぶつける大会だと思いますので、見ている方も夏の甲子園と冬の高校サッカー選手権はやっぱりいろいろな感動が生まれてくるんじゃないかなと思いますね。

ここで頑張らなかったら俺らはこれで終わりだろみたいな、まだ俺らはいけるぞ、やるぞといった時にチームってガッと力を発揮して、やってきたことを信じることになって、仲間を信じることになってということに繋がってくるんだと思うんですよね。その中で1試合1試合成長していく大会でもあるのかなと。(選手権2回戦以降は)1週間ずつ空きますよね。この1週間が一番面白いんですよね。選手権っていうのは勝った次の1週間が最高に面白い練習ができますよね。ひとつ勝つと本当にその1週間がもう目を輝かせて、それでまたひとつ勝つとまたその1週間がもう熱いものに変わっていってというような気持ちの良さはありますよね。だからやっぱり指導者は何歳になってもやめられない人たちが多いんだろうと思いますよね(笑)。

選手権は一戦一戦決勝戦のつもりで戦う

―その1週間の煌めき、伸びというのは楽しみなものがありますよね。

いろいろなことにも真剣にトライしますし、自分たちのプレーだけじゃなくて、相手のプレーもやっぱり分析して、これをさせないぞとか、こうしてやるぞっていう戦いになりますからね。コンディションもそうですし、練習中の怪我もそうですし、いろいろなストレスを感じながら成長していく場所じゃないかなというのはありますよね。練習しなきゃ勝てないし、本気でやらなかったら試合にもならない。でも本気でやるとやっぱり怪我のリスクもあるし、疲労度もたまってくるし、本気だからこそ喧嘩する。いままでの練習の中だったら「いてーな、この野郎」っていうくらいで終わったのに、ムキになってやられたらやり返しに奪いにいくだとか、良い意味でファイティングスピリッツがお互いにも生まれてきますよね。それまではちょっと当たられただけで倒れて起き上がらない奴がやっぱり最後と思えば0.1秒でも早く立ってと、そういうような気持ちで練習も始まるように徐々に徐々になってくる時期だと思いますしね。

本当にいろいろな子たちがまだまだ100%じゃない中で、どうしたらいいかと考えて、みんなでやっていく。ベストメンバーが組めなかったり、いろいろなことがありますけど、最高の試合をするためにそれをどうにかみんなで埋めていく。夏の大学との試合では本当に自分たちの描いているプレーができたというのはいくつかありますよね。でもその子ひとつ欠けた時というのが必ずあるので、それを今度はより成長して追い越していかなきゃいけない。いないからダウンするんじゃなくて、逆にいなければ引き上がってくるという、やっぱりそこは選手の層もあるのかもしれないですけど、そこも一番大事なところかなと思います。

そういう面では、正直なところ、昌平が一番高いレベルにやっぱりあると思いますね。インターハイの試合を見ていても、変わる選手がどんどん次から次にレベルの高い選手が出てこられるというのは、やっぱり一番のチームじゃないかなと思います。

それ以外でもいろいろなやっかいなチームがありますよね。成徳深谷も本当に勢いがあって、為谷(洋介)先生もいま40歳くらいですよね。やっぱり一番やりがいのある、そんな想いの年代がいま一番熱く、(昌平の)藤島(崇之)先生ですとか、為谷先生ですとか、この辺が本当に勢いを今後増してくるんだろうなというのは、自分の時を思い返せば当然な流れですよね。自分もやっぱり35歳で準優勝して、40歳に入って選手権に出て、本当にこの35歳から45歳くらいっていうのはもうサッカーをやっていて楽しくて、楽しくて。もう本当に子供たちと何時間いても飽きないという年代だと思うんですよね。だからその熱い気持ちがやっぱり脅威になってきますので、それは成徳もそうですし、浦学もそういう気持ちで戦ってくるだろうし、浦和東も指導者を変えてという形でどういうふうにのせてくるのかっていうのはありますよね。

あとは本当に我々がそこに対してどういうふうな形でもう一個成長を見せられるか。生徒だけじゃなくて、そこは指導者もまた同じように戦わないといけない。正智深谷も正直なところ、駒としては1番手、2番手に入ってくるでしょう。でもそれを我々も倒すために身長170cmいかない子たちでどうやって今年は勝負をするのか。成徳深谷もヘディングは強いし、パワーがある。その中でこの子たちで「やってやるぞ!」というのを見せなきゃいけないし、いないからっていうのは言い訳にはできないですよね。やっぱり1年間預かっている以上、子供たちの夢と時間を預かっておりますので、本気で納得するところまで戦わせたいですね。

―この夏は大学生相手に練習試合を行って強化に当たったと。

やっぱり小さい子たちだったので、大学に行けば185cm以上の子が1チームにどんなことがあっても3、4人はいますよね。それに対していち早く自分たちのボールにして、拾って、逃げずに動かすかということはやって、ある程度これだけ喰らいつけるんだなと。最後ヘディングでやられたとしても、下に打たせないとかね。こぼれ球に対しても、浮き玉に対しても0.1秒でもいいから先に飛んで相手に振らせないだとかというのはやっぱりそのためにやってきた経験。インターハイにも出られなかったので、より、そういったところで一旦モチベーションだとか、自分たちが何か経験したというものは与えておきたいなという形でやってきましたね。

―そういったところの成果も出てきている?

そうですね。そういった面ではやっぱりリーグ戦の中でも、「いや、俺らこのぐらいの当たりで負けてなかったじゃん!」「もう一回しっかりやろう」といって逆転に繋げた試合が多かったですよね。いままでは最後やられて終わってしまうというのもあったんですけど、最後の最後まで戦えて、最後多少圧倒できたっていう試合が、追いつかれたりしたところもありますけど、ゲームの支配率からするとその辺はだんだん試合の中で改善する能力、自分たちで考える能力っていう部分の成長もあったんじゃないかな思います。だからここまではよく本当に頑張って子供たちは自分たちでも悩みながら、苦しみながらでも、思う結果が出なかったとしても、そこにはトライした努力は認めたいなというのはありますね。本当によくここまで毎日考えながら、自分たちで改善しようとしたところは、非常にチームとしても、S1の子たちにしてもS2の子たちにしてもすごい成長したなっていうのはあります。だから今度はその子たちがひとつになって、またどういうふうに化学反応を起こすのか。それをもう一度見たいんですけどね。

―今年も埼玉予選は混戦模様です。

そうですね。聖望も乗ればどういうふうになるかわからないチームだと思いますし、立教新座もやっぱり力がある。慶応志木も何を起こすのか試合を見ていてわからないなというのはありますし、春日部東にしても地味だけどリーグを見ているとすごい安定しているなと。もう本当にボケッとしていたら足元をすくわれるチームが出てきたなというのはありますね。

ただ選手権で優勝っていうところにはまだ至らないかなというのは正直なところありますね。いま昌平のやっているテンポ、これも鋭いものがあるんですけど、もっと早くしていかないと桐光や山梨学院、こういったところには押し込まれてしまう。本当に嫌なサッカーをしてくるチームが全国にはまだありますので、その辺とのレベルをもっとつけられるような、埼玉の中で競り合いながら成長もしていきたいと思っていますし、昌平というチーム、武南というチームがあり、本当にこれを超えなければ自分のサッカーじゃない、自分が考えているものには変わっていかないという中でやってきて、もういまは超えられているのでそれをやっぱりまた超えなきゃいけないというふうには思いますよね。ただその前に成徳深谷ですとか正智深谷、浦和南のパワー、そういったところにもやっぱり立ち向かえるようにしてはいきたいなと。

ただ全国でも勝つというだけじゃなくて、そこから3、4人がJで活躍するような選手も作っていかなきゃいけないのが現状じゃないかなと思います。勝つことで選手が集まります。でも集まってもその子たちを本当にどれだけの選手にしていってあげる道をちゃんと作ってるのかなっていうのも、やっぱり考えなきゃいけないんじゃないかなっていうのは感じるところはたくさんありますよね。ぜひそんなところも高校サッカーが少しずつ変わって、ユースのチームよりもっとより鋭いサッカーをやって、ユースとはまた違う形で戦えるチームが少しでも出てきてくれればなというのは感じますよね。

―今年のチームというところに関して言えば、関口(崇太)くんや若谷(拓海)くん、大塚(悠平)くんなど前線のタレントは揃っています。

その辺りが本当に献身的にボールに関わるということがこの選手権でもポイントになると思います。その子たちが攻守にわたって何人関われるのか、何人連動できるのか。特に守備の時の連動があれば子供たちが近くにいますので、ボールを動かすことができますけど、それが守備をせずに待っていたらひとりひとりになってしまう。そんなにパワーとスピードがあるわけじゃないので、ドリブルだけになった時にはやっぱりうちのリズムにはならないんですよね。

そこのところで見えている数をどれだけ増やせているか。やっぱりいま見ているとボールと敵とくらいしか見えなかったり、ボールとスペースしか見てなかったりというのを、それがボール、敵、スペース、キーパーまで見えたりとかね。もしくはセンターバックの位置も見ながらサイドで崩せて、関われる選手がそこに入っていたりだとか3つ目、4つ目の目線じゃないかなというのは夏が終わってだんだん感じてきたところです。

―特に大塚くん辺りには期待値も高い分、厳しい要求も課してきました。

いまも大塚に関してはもう少しハードワークだとかが必要だと思っているんですけど、それを後ろで打ち消していたのがイディアゲリ(康介)なんですよ。大塚もパスコースを切ったり、たったりは自分もパス出せる選手なので上手なんですけど、それを振り子のように2回、3回と追いかけることがやっぱり乏しい。逆にひとつコースをたって、余ってきた選手にイディアゲリがパワーを持ってガッと行って身体をつけてねじ込むのが上手だったんですよ。大学とやっていた時も非常に評価を得ていたんですが、8月の金沢遠征で後ろから根こそぎスライディングされて骨折してしまったんですよ。そこからチームもちょっと崩れているんですよね。

今年は怪我で出遅れた中でインターハイはまだ噛み合わない部分が多かったですが、それでもやっぱりだんだんリーグ戦、夏休みを通じてイディアゲリが戻ってきてくれたことによってディフェンスのバランスが整い始めていて。ものすごくしゃべる子で、熱い子で、余計乗せるんですよ。そういう部分でもチームの精神的な部分でイディがいるとモチベーションが上がるみたいな感じで非常に良かったんですよね。だからそこの部分ははっきり言って非常に残念です。ただ先ほども言いましたが、これをどうにか乗り越える奴を作っていかないといけない。うちには他の選手もいますので、そいつを鍛え上げて、信じてあげるしかないなと思います。

―選手権に向けて奮起を期待しているプレーヤーは?

正直なところはやっぱり大塚のさらなる成長ですよね。それとS2で活躍する遠藤悠太、この子なんかがやっぱり気持ちも強くて、イディがやっていたようなモチベーションを上げるような声かけを同じようにできる子なので、その子をチームの中にマッチアップさせて引き上げていきたいなというのはありますね。あとはセンターフォワードで押谷(伊吹)というのはちょっとうちのフォワードにないカラーと言いますか、本当に飛び込み役というか、潰れて点も取れる子なので、その子の使い方というのも大事になってくるんじゃないかなという感じです。

―最後に選手権に向けての意気込みをお願いします。

今回の予選は国際学院、狭山ヶ丘、そして成徳深谷、この3つを乗り切れるかどうかというのが一番のポイントで、そこを本当にどう乗り越えるか。一戦一戦本当に決勝のつもりで戦わない限り、乗り越えることはいまの現状は難しいだろうなと思います。ただそれを乗り越えた時には彼らにはすごい大きな夢があると思うんですよ。そこに本当に繋げてあげたいなと。夢が実現できるように、やっぱり繋げてあげたいという想いはありますね。それが自分の役割でもあるし責任。本当に今年はものすごく重い責任を背負っているなというのは痛烈に感じていますね。

―今年は特に?

特にですね。新たなチャレンジなので、本当にそれが実現できるのかと。いままではセンターフォワードにパワーがあって、(清水)慎太郎みたいな子がいてとか、そういうので助けられていた部分もある。うちが3年前に新人戦、関東、インターハイと県を取って、県のリーグ戦と選手権を落とした時があるんですよ。その子たちに匹敵するくらいテンポは良いプレーはできると思うんですね。ただそれがそれ以上のもうひとつ守備ラインにまだパワーがないというのが、もっとチャレンジに繋がっていて、やっぱりその子たちで選手権を取れなかったので、今年は本当にそれに同じようなチャレンジで、よりレベルアップしていかない限りその時代とは違うので何か本当に見せられればなというのはあります。それに対しては大塚をどういうふうに使うかによっても変わってくるといまちょっと感じていてトライしているところです。

―やはり彼がキーマンになってくると。

そうですね。ボランチで使うのか、トップで使うのか、トップ下で使うのか。いろいろなところで彼の能力っていうのは使うことができると思うので、彼をもうひとつチャレンジできればなというのもあります。リーグ戦もここへきて1位になりたいというのが子供たちの中にも出てきた。(週末の正智深谷戦は)本当に良い部分でチャレンジしていきたいなと思いますね。

 

7日のS1リーグ第16節、正智深谷戦は前半戦で唯一土をつけられた相手に3−1で勝利。首位・昌平と勝ち点2差の2位をキープし、選手権に弾みをつけた。清水慎太郎を擁し、全国8強に入った2010年以来8年ぶりの大会制覇を狙うべく、まずは1回戦の国際学院高校戦に臨む。

石黒登(取材・文)

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