小学校から段階的に守備を学ぶべき! 団子サッカーをうまく活用しながら全員で守ることの楽しさを知る。

【特別寄稿】 WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」

ドイツサッカー連盟公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)を持ち、15年以上現地の町クラブで指導を行う「中野吉之伴」。帰国時には、全国で指導者講習会やサッカークリニック、トークイベントを開催し、各地を回る。その中で日本の育成が抱える問題や課題にも目を向け続けています。この企画は、ジャーナリストとしても活動する中野が主筆するWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」が月一で寄稿する育成コラムです。

ボールスポーツだからこそ守備意識が練習の質を高める

サッカーはボールスポーツであるがゆえに、ボールを保持した状態目線のトレーニングが多くなる。つまり、それは攻撃力向上を目的とした練習を積み重ねることになる。しかし、個人とチームの力を底上げするためには、同時に守備力も高めなければならない。

それは質の高い守備を相手にするからこそ質の高い攻撃力を身につけられるからだ。

ようするに、自分たちが主体的にボールを動かして質の高い攻撃を仕掛けるためには、その状況ごとに対応できる守備者がいなければトレーニングは意味をなさない。そう考えると、ジュニア年代で見られる「団子サッカー」を、どの年代からどうメスを入れるかはサッカーをプレーする上での基礎を学んでいくために重要なことだ。

もちろん状況によるが、攻撃は「ビルドアップ → ゲームメイク → チャンスメイク → ゴールメイク」という4つの段階を追うことが一般的に理解されている。だから、各チームが自らの成長過程に応じてそれぞれのテーマを設けてトレーニングを行なっている。だが、守備目線でそれぞれのトレーニングを見ると、各段階で守備に関する内容がトレーニングの中に落とし込まれているかどうかは疑問だ。

そこで、例えばビルドアップの段階を守備目線で考えてみよう。守備者にとってどんなことを仕掛けられたら嫌だろうか? その答えは次の3つだ。

1.FWが単独で抜け出せるロングパス

2.FWや攻撃的MFへのクサビのパス

3.ボランチが前を向ける状況のパス

3つに共通する嫌なことは「守備者にとって背中を取られるパスである」ということだ。つまり、守備側は少なくともこの3つをさせないための対処を知っておかなければならない。では、1〜3をどのように対処すればいいのだろうか。

1.ボール保持者に体を寄せ、精度の高いパスを出させない

この時、不用意にボールに飛び込んで簡単に交わされると、結果としてそれはその局面に連動して動く味方を苦しめることになるので、ボール保持者に対してはコントロールされたアグレッシブさで守備をする。

2.ボランチやインサイドハーフへのパスコースを消す

攻撃から守備に切り替わった瞬間はそれぞれの選手がその局面に応じたポジションを取る。しかし、攻撃側は常にボールを動かすから、最初に取った守備位置に立ち止まっているだけだと、ただのアリバイ守備になる。だから、終始後ろのチーム全体で守備陣形を確認しながら全員がポジショニングを修正することが大事だ。

3.常にディフェンスラインはロングボールを警戒する

守備の切り替わりから常にボールを遠くに蹴りそうな状況を予見しておくことが重要だ。なぜなら必然であろうが偶然であろうがディフェンスラインにボールが入ってしまうとピンチになるからだ。だから、いつもディフェンスラインは速やかに全体でラインを下げられるように、そしてGKは前へと飛び出せるように準備しておく。

このように、特に攻守の切り替え時に関係するビルドアップに対する守備の対応を文字化してみると、前線、中盤、ディフェンスラインとボール保持者からの距離に応じてそれぞれの準備の仕方があることに気づく。その中でボールが横に動けば、それに応じて各ポジションの選手もボールに対してプレスをかける選手とスライドしながらそれをサポートする選手が変わっていく。

ただ絶対的に一つ言えることは、「チームとして秩序だった守備をしなければ組織にズレが生じてスペースが生まれ、相手にチャンスを与えてしまう」ということだ。しかし、それをジュニア年代から細々と教えても子どもたちはまだサッカー全体のメカニズムを理解していないからわからない。そこにはメンタル的な発育・発達の段階が関係しているから当然、年齢に応じた指導が必要だ。

そこで、ドイツで指導者として活動を行う中野は「各年代に応じて次のようなアプローチをしてはどうか?」と提唱する。その説明の前に、ドイツの育成では年代に応じて推奨された試合環境があるので、それを記しておきたい。これは「認知→判断→決断→実行」をプレーとして表現する上でどう11人制サッカーへと導くかという観点でドイツサッカー連盟が打ち出した考えだ。

年代に応じた試合環境

ドイツ日本人数サイズオフサイド有無
U15以上中学校以上11人制フルコートあり
U13高学年9人制ペナルティエリア間あり
U11中学年7人制ハーフコートなし
U9低学年5人制4分の1コートなし

5人制サッカーのU9(小学校低学年)では、守備時に互いが近づき合ってコンパクトになること、そこからボールや相手に向かってチームで一緒に守りに行くという感覚を身につけることが重要だ。ボールに当たる選手、そこに加勢する選手、後ろをカバーする選手と、まずはボールを中心にエリアと状況に応じた役割があることを知る。その一方で、この年代では「積極的にボールを取りに行く」という姿勢が肝心だ。それだけに「引いて守るのではなく、コンパクトになりながらみんなで奪いに行く」という姿勢で積極的に守ることが望ましい。その理由は、U9ではプレーに関わる気持ちを尊重しながら育成することが大事だからだ。

次に、7人制サッカーのU11(小学校中学年)では、少しずつ「抜かせないための守り」と「奪うための守り」を使い分けられるようになってほしい。ボールサイドにスライドしながらマークを受け渡し、後ろのスペースをカバーしながらボール保持者にアプローチしていくことは、この年代であれば問題なくできる。味方同士の距離感を大切にしながら動き、ボール付近で数的有利になったら躊躇せずに奪いに行けるような選手を育成してほしい。注意してほしいのは、成人サッカーのようにプレッシングのやり方を事細かく練習するようなことだ。メンタル的な発育・発達を考えると、確かにU11あたりから指導者の考えを理解できるようになる。だからといって一気に詰め込まれても子どもは対応できない。だから、最初の段階として「プレッシングがかけられる状況はどういうものかを知ることが大事」であり、練習のミニゲームや試合の中で失敗をさせながらチャレンジできる環境づくりを意識してほしい。

最後に、9人制サッカーのU13(小学校高学年)からはオフサイドが適用されるので、ディフェンスラインの上げ下げにトライさせたい。「コンパクトに守る → ボールサイドにスライド → 相手の選択肢を狭めたらプレッシングを狙う」という守備のサイクルをさらに深めていく。

私自身の考えでは、オフサイドトラップばかりを狙う守備はあまり勧められない。その理由の一つはディフェンスラインを上げて守ろうとすることで、一本のパスでピンチになりやすい上にミスジャッジに敏感になってしまうからだ。また、いつどのようにどこへディフェンスラインを下げるべきかを学ぶことができないことも、育成年代での積み重ねという観点から勧められない理由だ。オフサイドトラップ自体は大事な守備戦術の一つであり、うまく活用することで相手の攻撃をコントロールできる。

しかし、育成年代で考えるべきは「将来どのような技術・戦術が求められるか」ということだ。オフサイドラインをかいくぐる術を持った相手と対戦すること、オフサイドラインの10m後ろからスタートしてもスピードでぶっちぎれるスペシャルな選手と対峙することもある。だからこそロングボールを蹴られてから対処するのではなく、そのボールをあらかじめ予見してクリアできる位置に戻り、セカンドボールを拾えるようにスペースを埋めるという動きをまずはできるようになることが大切だ。

繰り返しになるが、攻撃と同様に守備も段階的に学ばなければならない。一気には組織的な守備、エリアと状況に応じた個々の守備プレーをできるわけではないのだから普段の練習や試合の中で一つずつ身につけることが大切だ。だから、ジュニアでは団子サッカーで育まれる「ボールに対して!」を尊重しながら、徐々に「みんなでどう守るか」を身につけていくことを段階的に教えてほしい。

文・木之下潤(WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」管理人)
WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」