中盤を活用した攻撃がなかなかできない。再現性の高い攻撃の構築はジュニア年代による積み上げが必要だ!

【特別寄稿】 WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」

ドイツサッカー連盟公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)を持ち、15年以上現地の町クラブで指導を行う「中野吉之伴」。帰国時には、全国で指導者講習会やサッカークリニック、トークイベントを開催し、各地を回る。その中で日本の育成が抱える問題や課題にも目を向け続けています。この企画は、ジャーナリストとしても活動する中野が主筆するWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」が月一で寄稿する育成コラムです。

中盤を活用した攻撃の起点づくりはできているか?

カテゴリーが中学校に上がると、11人制サッカーになる。

小学校で行われる8人制サッカーから何を積み重ねるべきなのだろうか。ちょうど3月にレアル・マドリードのカデーテBが参戦した「U-15 キリンレモンCUP 2018」を取材した。海外からは同クラブだけの参加だったため、図式としては「レアル×日本クラブ」だが、海外のトップクラブとの違いを考察できる機会も少ないので一事例として取り上げたい。なお、日本クラブのサッカーについては4月の「U-12ダノンネーションズカップ」と5月の「東京国際ユース(U-14)サッカー大会」も参考にしたので補足しておく。

レアルの選手たちが披露したDFラインから「中盤」を経由し、FWへとボールを展開するサッカーはオーソドックスなものだった。しかし、状況に応じてしっかりとロングボールを使い分け、U-15年代ながらすでに大人びた印象を受けた。それは相手の出方によって判断が伴ったプレーを個人でもチームでも行っていたからだ。基本的には「中盤」をうまく活用し、上下左右へと動くボールは相手が空けたスペースの穴を突いており、自主的に試合を動かそうとする意思が感じられた。

一方、レアルと対戦した日本のクラブはボールがなかなか「中盤」を通らず、ただUの字型に単調に回るだけだった。時折、チームごとに自分たちの得意なパターンにハマれば驚くほどのスピードとテクニックを見せるが、その再現性は乏しく、レアルが慣れるほどトーンダウンは否めかなった。その中で、最も気になったのは「8人制から11人制に切り替わっているのに団子サッカーの延長線上にあるようなサッカーが展開される」ことだった。

守備時は全体的に選手がボールサイドを中心に中央へポジションを絞るのでまだ理解できる。しかし攻撃時にも変わらぬ光景が広がり、ボールを奪ってもレアルのプレス範囲から外に抜け出せないため、結局また奪い返されるか、ボールをDFラインに下げるかのどちらかにとどまっていた。

その原因は「中盤を活用した攻撃の起点づくり」というサッカーに必要不可欠な概念が抜け落ちているからだ。日本の多くはビルドアップやゲームメイクをする上で、どうやって「起点」を作ればいいのかをトレーニングされていない、もしくは理解していないチームが多い。

レアルは「1-4-3-3」の中盤3枚で上手に「攻撃の起点」を作る。

その作り方は見事だ。例えば、中盤3枚のうち1枚がボールを受けに行く。しかし当然マークに付かれるため、その瞬間に違うスペースへとすぐに流れる。そうすると、その周辺のスペースを利用するために別の中盤の1枚が入ってきてボールを受ける。残りの1枚はボールから遠ざかるようなポジションを取り続け、残りの中盤2枚がプレーできるスペースを自分のマークを引きつけながら空けている。

ジュニアを中心に育成年代を取材して感じていることだが、日本では「攻撃の起点を中盤の真ん中に位置する選手が作るものだ」と勘違いしているように思う。

だから、中盤には攻撃の起点となる選手が一人しかないことが多発する。もちろん間違いではないが、起点を一人で作ろうとすると負担が大きい上に、相手に読まれてしまう。確かにレアルの中盤3枚は「1-2」になっており、日本的な表現をすると「アンカー1枚+インサイドハーフ2枚」だ。しかし、状況によって中盤3枚は攻撃の起点となるために味方同士で状況を見ながらバランスよく動き、ボールを受けてからスムーズに「ゲームメイク」へと移行する。いずれにしろ中盤には攻撃の起点となる選手が必ず存在するようにチームとしてプレーしている。

日本のクラブがビルドアップやゲームメイクにおいて単調なのは「攻撃の起点づくり」を小学校年代から中学校年代へと積み重ねた指導がなされていないからだ。だから、身体的な成長を遂げる中学校年代に入ると、守備のズレを起こさないように頻繁にポジションのスライドを行える体力がつき、攻撃側はその圧力に負けて「中盤」を活用したゲームメイクができない。

その結果が3〜5月にかけて取材した大会で、各チームが見せた芸のない攻撃だったと感じている。少し具体的に説明すると、サイドバックからサイドハーフへと縦パスを送り、まっすぐに攻撃を仕掛けてセンタリングを上げることばかりに終始していた。そこにはサイドチェンジやクサビを使ったバリエーションある攻撃はあまり存在しなかった。

中学生年代ともなれば、チーム全体で狙いを持って攻撃の起点を作り、しっかりとゲームメイクを行った上で相手の守備組織を崩せるようになりたい。実際に、ドイツでは小学校年代から攻撃の起点を作るための「ビルドアップ」、そして相手を意図して崩すような「ゲームメイク」を学ぶ。

ビルドアップとは「攻撃の入口=攻撃の起点」を作り出すための大事な段階だ。サッカーはゴールの数が勝敗を決めるスポーツだ。だから、シュートチャンスを創出することが不可欠! そのシュートチャンスを作るためには、有利な状態にボールを運ぶ段階が必要で、そのボールを運ぶ段階を作るためには、そのための準備をする時間と空間が必要になる。

すなわち、ビルドアップとは攻撃を完結させるために自分たちのリズムを作り出し、攻撃のチャンスを増やしながらも不用意なボールロストで失点の危険性を減らすためのものだ。ビルドアップは「構築」と訳されるが、それはボールを回すことが目的ではない。ボールを回しながら味方が最適なポジショニングを取り、狙いを持った攻撃を仕掛けるための時間とチーム全体の攻撃の土台を作ることが目的なのだ。そうしたビルドアップで「攻撃の起点=攻撃の入口」を作り出した後は、ゲームメイクで相手守備を揺さぶることが重要になる。

では、ゲームメイクとは何だろうか?

DFラインからFWへ直接パスが通り、一気にゴール前にボールを運べたら苦労はしない。しかし、自分たちが主導権を握って攻撃を作り出そうということは、裏を返せば相手はそれに対応した守備組織を作り出そうとしているとことでもある。「攻撃の起点=攻撃の入口」ができたからと、ただ闇雲に攻め込んでも、逆にボールを失う可能性を増やしてしまうだけだ。そこで、チームとしての駆け引きで意図的にボールを動かし、相手が守りにくい状況を生み出す。これが「ゲームメイク」の真意だ。

例えば、何度も右サイドばかりで攻撃を仕掛けても相手は予見しているので対応してくる。だから、どこかのタイミングで相手チームが右サイドに寄せて来た瞬間、急に逆サイドへとボールを展開すればチャンスメイクへと可能性が広がる。また、相手がサイドチェンジを警戒し、右サイドの守備で圧力を強めてこなかったら同サイドでスピードを上げて突破を図ることが可能になる。そうしたチームでの駆け引きで、より自分たちに有利な状況「チャンスメイクへとつなげる攻撃の出口」を作るのが「ゲームメイク」というわけだ。

ビルドアップ時は両サイドを広く使ってボールを動かすが、ゲームメイクの局面では縦パスや斜めパスやドリブルを組み込むことが重要だ。そうすることで相手守備のズレを引き起こすことができる。また、すぐ隣にいる味方にパスを出す「各駅停車」のパスワークでは相手がスライドして対応しやすいので、1つあるいは2つ先にいる選手に一気にボール届けられたら相手守備に揺さぶりをかけられる。

これはレアル・マドリードのカデーテB、FCバルセロナのインファンティルBの監督から出た共通した言葉だが、「日本チームの守備は組織的にしっかりと動き、統率がとれている」と語る。たとえお世辞でも守備は世界トップクラブが「日本のいいところ」として挙げているのだから、その守備を崩せるようにジュニア年代から「再現性の高い攻撃の構築ができる」ようになれば一段上のステージに上がれるのではないだろうか。

そのためには、指導者のさらなる研究が必要になる。

文・木之下潤(WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」管理人)
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