5年ぶりの全国大会「予選リーグを突破してベスト8を目標にしたい」坂口照幸(GRANDE FC代表)インタビュー
第33回日本クラブユース選手権(U-15)大会で5年ぶりの全国大会に挑んでいるGRANDE FC。総監督も務める坂口照幸代表に関東大会のこと、久しぶりの全国への意気込みを訊いた。
――5年ぶり2度目の全国出場おめでとうございます。
何度か行くチャンスがあって、今回久しぶりに行けることになって、やってきたことが少しずつ実ってきているかなというのが感想です。いまやっていることが間違いないということ、子供たちが着実にレベルを上げてくれているので、チームとしてはすごく嬉しく思っています。
いまの3年生は1年生の時に自分たちがU-13の関東リーグを落としているんですね。関東2部でほぼ勝てなくて、県に落としている子たちなので、やはり後輩たちに関東リーグを残したいという想いと、それにプラス、グランデの新しい歴史じゃないですけど、自分たちで新しい未来を切り開いていきたいという想いがすごく強い。僕も今年に入ってずっと、少しでも先輩たちが成し遂げなかった成績を残すようにということは伝えているので、関東大会ベスト4に入ったのもそのモチベーションというか、目標設定があったからなのかなというのは感じます。
――今回の関東大会を総括していただけますか?
選手に競争意識と連帯感を持たすために、毎試合3、4名メンバーを変えたことがこの大会で良い結果をもたらしたのかなという感じですね。トレーニングで好調な選手はどんどん先発で出してという形で毎試合変えていました。特に前橋FC戦と鹿島アントラーズ戦が2日連チャンだったので、その2試合で攻撃的な選手を5枚先発から変えて、それがやっぱり良かったかなと。そこからメンバーに入っているみんなが一丸となるというか、いつでも試合に出る準備をしてくれたので。そこの中で出た選手が活躍してくれたというのが一番大きいですかね。
――戦える選手が多いと。
当初この代が始まった時はやっぱり14、15人しかちょっと戦える選手はいなかったですね。1、2年生の間でモチベーションが落ちてしまった選手であったり、やっていく中でメンタル的に疲れている選手だとか、もう諦めている選手だとか、そういったところがやっぱりあったので3年生のスタートの時に競争をまた1からさせたというのが一番大きいですかね。
いまはもうほぼ誰が出ても、というような状況になっています。いろいろな選手が使えるということで、様々なシステムや戦術が子供に応じてこちらも計画を練れるので、そういった部分では大きかったですね。いままではシステムに選手が当て嵌まっていくという感じだったんですけど、いまはどちらかというとコンディションの良い選手を中心に、どういうシステムでいくかということで毎試合変えながらプレーができています。それが一番相手にも研究されずに絞らせづらい。それがチームの良い成績に結びついているのかなというのは思いますね。
――その状況になったのは関東大会を戦いながら?
戦いながらが一番大きいですね。関東大会を戦いながら、1回戦、2回戦とメンバーを変えていった中で、やっぱり出る選手、出る選手が得点を取ってくれたり、守備もしっかり守ってくれたりという状況があったので、やっぱり責任感もひとりひとり出てきたのかなと思います。あいつがいるからとか、あいつ頼みとかというのはもうないような感じですかね。良い意味で攻撃的な選手は自分が点を取りにいく、守備の選手は自分が守備の中心として守るっていうのがいまはできているので、11人の中の個ですけど、やっぱりその個がひとりひとり大きくなり始めているというか、そこが一番の関東大会で大きく成長したところでもありますかね。
先日出場したカップ戦でも前半と後半でメンバーを全員入れ替えているんですけど、高校の先生からは誰がスタートかわからないと言われるくらい選手間も縮まっているというか、高いレベルで競い合うことができているので、そこは出ている選手もうかうかしていられないです。逆にいま出ていない選手も頑張ればチャンスがあるということを理解しているので、チームが良い方向に向かっている中であまり僕が特に言うことはなくなりましたね。子供たちが自分で気づいて、子供たちが自分でやるようになってきていると思います。それはもう3年生のスタートの時にも伝えていて、やっぱり自分で考えて、自分で判断できる選手になってほしい。何も考えないでサッカーをしないようにというのはずっと言っているので、自分たちで相手の組織に対しても対応できるようにもなっていますし、相手の戦術も理解しながら自分たちでこうしようということも、ある程度できるようにはなってきていると感じます。
関東大会前はリーグも勝ったり、負けたりの中位だったので、子供たちが少し自信をなくしていた部分はちょっとあるのかなと思います。でもその不安のメンタリティっていうのが試合を追うごとになくなって、自信を持ってプレーをしだしたので、最後の方はもう勝てるなというのはベンチから見ていても感じました。子供たちがメンタル的にもサッカー的にもディフェンシブだったのが、攻撃的になってきたと思っています。それまでは自信がない分、負けないようにと受け身になっていたところが、やっぱり徐々に徐々に自信も出てきて、受け身からどちらかというと前から積極的にボールを奪いにいくようにもなりましたし、攻撃にも人数をかけるようになってきています。そこは子供たちが自分たちで成長している部分。言われてやるというより、自分たちでそういうふうになっていったことが大きかったですかね。
――今大会のターニングポイントになった試合を挙げるとするといかがでしょう?
2回戦の三郷Jr Youth戦と3回戦の前橋FC戦ですかね。三郷Jr Youth戦は0ー2から後半ロスタイムに2点取ってPK戦で勝った試合です。1回戦の横浜FC鶴見戦も積極的に前からいっていたんですけど、やっぱり三郷戦は受け身に回ってしまった。それで開始20分くらいで2点を取られてしまって、その後攻めたんですけどなかなか点が取れず。そこからやっぱりどの試合もキックオフと同時に積極的に受け身にならずにいくようになりましたね。やっぱりあのゲームで先制点をくらって、その後2点連続で早い時間帯で失点をしてしまったので、そこで子供たちが何か感じてくれたのかなと。あのゲーム以降、みんな考え方が変わったような気がします。
前橋FC戦は今度は逆に前からいきすぎて失点して、後半子供たちにいついくか、どういくかをもっと考えないといけないと伝えてました。後半2点取って逆転して勝ったんですけど、そこからやっぱり子供たちが攻撃に関しても自分たちでいくタイミングであったり、暑い中でどう仕掛けるか、どうやって攻撃を組み立てるかっていうところが、自分たちで判断できるようになってきたのかなと。そこが一番大きいですかね。いかなかったら失点、いったらいったで失点というところで、子供たちが考える機会があったので、そこでまたミーティングをして、どういうふうなサッカーをしようと。僕の方からもこういうサッカーがしたいという話を子供たちに伝えて、子供たちもそこに対して同じような考えを持っていてくれたような感じでしたね。
――準決勝で横浜Fマリノスに破れましたが、あの試合からはどんなことを感じましたか?
あの試合も前半は良い入りだったんですね。ロスタイムに失点して、後半も自分たちのゲームでポストが2、3本あったんですけど、結局取れずにまた後半のロスタイムに1点取られて。
どうスタートさせて、どう終わらせるのか。0ー0だったら最後どう1点を取って終わらせるのか、0ー1ならどの段階で取りにいって、どうやって最終的に1点取って逆転で終わらせるのか。やっぱり負けているんだったらいかないといけないし、勝っているんだったらそのまま終わらせるのか、もう1点取りにいけるんだったらいくのか、そこの判断も子供たちの中でしっかりとさせているので、それがだいぶあの後、子供たちは感じていますね。
1試合を通してどうやって勝つかは1年生の時からすごく大事にしているんですけど、やっぱりサッカーを理解するということが重要だと思っています。1点取って、じゃあ次、2点目に人をかけて取りにいって同点にされてしまったら意味がないですし、2点勝っているのにわざわざ攻めて1点くらう必要もない。それを理解しないでやっているチームも多いですし、それを理解しないでやっている個人も多い。やっぱりサッカーの流れの中でどうするか、1試合通してどうするかなので、そこをトータルして見ることが大事かなと思っています。
――今年の代が2度目の全国までたどり着いたというのはどの辺りに要因を感じていますか?
一番は子供たちがやっぱり自分たちから全国に行きたいという想いを発していたこと。あとは本当にそこに対してやらなきゃという強い想いがあったのかなというのはすごく感じますね。やっぱり全国大会が近づくにつれてリーグ戦も良くなっていきましたし、子供たちが自然と自分で力をつけているのかなというのはすごく感じます。子供たちも自分たちがうまくなっているというか、良くなっているということを実感できている気はしますね。
あと今回3年生はスペイン遠征に行ったんですけど、それも大きかったかもしれないですね。向こうのエスパニョールと練習試合をしたりする中でやっぱり自分たちのレベルと、同年代でもこれくらいできるのかというのを感じたことによって、すごくそこから学ぶ姿勢が増えた子は多いですかね。サッカーを理解しようと、より思ってくれたかなと。ひとつ伝えることによって、やっぱり多くのことを自分で考えてくれるようになったかなと思います。
例えば日本でパススピードが遅いと言っても実感しづらいですけど、やっぱりエスパニョールと戦った時にスピードがもう全然違うのでそこで言われていたことがわかったり。子供たちはやっているつもりですけど、同年代でもっとパススピードもプレースピードも速い選手たちを見た時に3年生みんながやっぱりまずいって思ったんですね。基準がまだ見たものしかなかったので、僕らがもっと速くと言っても「速くしてますよ!」、もっとトップスピードだよって言っても「いや、走ってますよ!」って。でも向こうに連れていったら「これか!」と。だから言われたことに対しても、もっとやらなきゃというのも感じたと思います。
高い要求ができるように、要求をしていたんですけど、そこに子供たちが向いてくれるようになりましたね。見せるまでは高い要求をしていても「やってますよ!」みたいな感じだったんですけど、スペインに行ってからそういう要求に対しても素直に入っていくようになりましたね。それがひょっとしたら今回の結果で一番大きい理由なのかもしれないですね。
――最後に2度目全国に向けて意気込みをお願いします。
やっぱり前回の全国大会をもとにチーム作りをしているので、足りないところや全国で上に行くために必要なこと、それが今年の子たちがどこまで全国でプレーをできるのか、全国でどの程度までいけるのかによって、次のチームのチーム作りが変わってくる。
まずは5年前の全国をもとに作ってきたチームでどのくらい戦えるかというところを試したいですね。いまの子供たちが最大限に発揮してくれれば予選リーグを突破して決勝トーナメントにもいけるとは思っているので、ベスト8を目標にしたいですね。
予選はセブン能登ジュニアユース、愛知FC U-15、サンフレッチェ広島F.Cジュニアユースと同じグループFとなる中で、初戦はセブン能登に4ー1と快勝スタートを切ったGRANDE FC。大会2日目となる16日はグループステージ突破をかけてサンフレッチェ広島と対戦する。
石黒登(取材・文)