埼玉平成FW伊藤岳、夏前にトップ落ちも経験。「サッカーに対する気持ち」を再確認したFWがチームを乗せる先制弾

「サッカーに対する気持ち」を再確認したアタッカーがチームを乗せる先制弾。0-0の時間が続いた中で埼玉平成FW伊藤岳(3年)が前半終了前に入れたゴールがチームに勢いを与えた。

「自分の長所はゴールに向かう姿勢とか決めきるところ。最近練習で得点を意識していて、練習でもたくさん取れていたのでイメージはあった」。前半39分、DF落合楓(3年)主将のアシストから抜け出すと、最後は左足で冷静にゴールに蹴り込んで欲しかった先制点をもたらした。

浦田尚希監督も「うまく崩せずに手こずったんですけど、1点取って少し楽になった」と分岐点に挙げたゴール。このゴールを契機に埼玉平成は後半に4得点を追加して5-0で勝利した。

ゴールで勝利に貢献できた一方で「正直あんまり自分ではボールに関われなくて。あんまり満足の行く試合ではなかった」。この日は相手が5バックで守ってくる中でボールを引き出せずサイド偏重になったことを反省。次戦は得点はもちろん、前線でしっかりと起点になることを誓った。

今大会チームの初弾を飾った伊藤だが、これまでなかなかトップのレギュラーを掴むことができていなかった。1年次は「一番下のカテゴリ」からのスタート。2年次はセカンドチームに所属し、最高学年となった今年はトップチームでプレーしていたが、夏前にトップ落ちを経験した。

それでもそこで「もっとサッカーに対する気持ちとか、大学でもサッカーをやるので考え方も変わりました」。夏休みが終わると同時に再びトップに復帰すると「それからはもう試合に出ることだけしか考えていなかった」。選手権前の最後の公式戦となったS2リーグ第15節・国際学院戦で復帰後、初スタメンとなると、迎えた選手権予選1回戦も引き続きスタメンで出場して、結果を残した。

「まだエイトの壁を越えられていないので、エイトの壁を越えてスタジアムまで行って、最終的には昌平と決勝で当たって優勝したい」(伊藤)。回り道はしたかもしれない。それでもそこで「サッカーに対する気持ち」を再確認したFWがゴールを決め続けてチームとともに駆け上がる。

石黒登(取材・文)