大宮U15GK岡村泰志、頼れる守護神が好守を連発し決勝導く! 本格的にGK始めたのは中学から、「尊敬している」江角GKコーチと目指す日本一

最後尾のこの男の奮闘がなければ結果は違うものになっていたはずだ。大宮アルディージャU15の頼れる守護神・岡村泰志(3年)は「最終的に1-0で勝ったんですけど、1点決められたら相手のペースになっちゃうっていう試合展開で、とてもタフな試合で、フィールドの選手もみんな足が攣ってしまったり、動けない選手がいる中でやっぱり自分はまずは声でチームを鼓舞して、無事この試合をクリーンシートで勝てたことがまず一番嬉しいこと」と試合を振り返った。

「ベンチに入れない人の分まで、自分が止めればチームが負けることはないので、クリーンシートを常にみんなで達成するぞっていう想いで試合中も呼びかけていますし、試合に入る前もセンターバックとコミュニケーションを取って、まずは0で抑えることを意識してやりました」。

準決勝から舞台は聖地・西が丘に。それに伴い、観客の数も準々決勝から倍以上に増えたが、緊張はあまりなかったという。「周りの空気に呑まれないで、自分自身のプレーを発揮できるのが一番の武器。小学校の頃から結構、「大きい舞台であまり緊張しないのがお前の良いところだ」と両親からも言われ続けていて、それがうまくこの全国の舞台でも発揮できたと思います」。

あくまでも自然体で臨むと前半33分、ゴール前の混戦から相手の決定的なシュートに好反応を見せ、飛びついて掻き出すビッグセーブ。「やっぱりなんとしても最初決められちゃうと、そこで相手に乗っかられてしまう部分もあるので、前半のあの決定機のシーンで止めたのが一番自分の今日良かった部分かなと思います」と話す、試合の流れをひとつ引き寄せたプレーだった。

その後、1-0で迎えた後半32分にはPKストップでチームを救った。「日々の練習で、PKの練習を高円宮杯の前で毎回、毎試合練習試合で取り組んでいて、そこでも自分の良いパフォーマンスを発揮できたから、あとは試合でやらなきゃ意味がないっていうことで、その部分で気持ちで止めました」。ハートは熱く、頭はクールに。PKのシーンでは相手の目線や軸足の向きもしっかり注目しながら駆け引きし、「うまく左に蹴らせた」。こぼれ球を自ら掻き出すと大きく咆えた。

「1対1のシュートストップだったり、ハイボールだったり、メンタル的な部分でチームをカバーする、コーチング力は自分の武器」。その後も相手10番との1対1で果敢に前に出て止めるなど好守を連発し、3試合連続の完封で勝利に貢献した守護神に丹野友輔監督も「岡村様々ですね」と讃えた。岡村も「まだまだここで満足してはいけない部分もある」としつつ、「でもまずは今日は自分を褒めて、また試合映像を振り返って明後日の試合に進めたい」と笑顔を見せた。

大宮アルディージャと提携するさいたまシティーノースの出身でジュニア時代はセンターバックでナショナルトレセンにも選出されるなどフィールドプレーヤーとしても評価された選手だ。チーム事情から4年生の頃にキーパーをやったことはあったが、5、6年はセンターバック1本で勝負。一方でシュートへのスライディングのうまさや熱い気持ちなど、キーパーとしての素養も高く評価されており、両方で試験を受け、最終的にキーパーとしてアカデミーの門を叩いた。

「習い始めたのが中1になる4ヶ月くらい前だったので正直不安はあったんですけど、コーチがうまく自分の良いところを伸ばしてくれた。キーパーの基礎がまだ全然できなかったので、まずは基礎を中心に伸ばしてから、自分の得意である瞬発力とか、そういうのを伸ばしてくれた」。

「両親からは「本当に悔いがないのか?」とか言われていたんですけど、自分の中では「もう最高のポジションだな」と思っていて。とても楽しめていますし、チームを救った時の嬉しさがもう半端じゃないので。なによりチームを助けられるポジションになれたことが良かったです」。

そのキーパーとしての楽しさを教えてくれたのが、大宮アルディージャでも活躍し、現在はU15のゴールプレーヤーコーチを務め、岡村が「理想のゴールキーパー像」と話す江角浩司コーチだ。

「とても熱いコーチで、自分を本当にプロにさせてくれるような人なので、本当に尊敬しています」。最初の出会いは小学校4年の時。「キーパーの練習を1回受けさせてもらったんですけど、本当にもう自分がまだ何も知らない状態で。そこでもミスしても怒らないで「全然いいよ!」とか、もう自分を第一に考えてくれたので、そこは一番嬉しかったですね」。中学年代では二人三脚でキーパーの基礎から教わりながら、中学年代最強を決める舞台の決勝に立つまで成長した。

いまの目標はキーパーでプロになること。そのうえで「自分は日本で止まるんじゃなくて、世界で通用できるキーパーになりたいので、本場のドイツで活躍できる日を目指しています」と話す。

その前にまずは中学年代で日本一を掴む。「歴史を変える意味でも2位じゃ終われない。最後はアントラーズですし、関東リーグでもやっているので、そこはもう絶対に勝ってやるという気持ちで優勝させたいと思います」。歴史を塗り替えるためにも、仲間たちと最高の最後を迎えるためにも、そして恩師に成長した姿を見せるためにも、決勝も無失点に抑えチームを勝利に導く。

石黒登(取材・文)