昌平のスーパー2年生、MF長璃喜が決勝で世代屈指のFWから主役を奪う2G1A 「もっと70分を通して存在感を出せるように」成長誓う

世代屈指のFWから主役を奪う2G1A。昌平MF長璃喜(2年)が初の決勝の舞台で輝いた。

昌平は神村学園に2度先行を許す苦しい戦いだったが、そのたびに2年生アタッカーが力強く流れを引き戻した。チームは前半16分に失点。それでも昌平は長が前半のうちに同点弾を奪う。

前半もATに入った36分、MF山口豪太(2年)の右クロスに対し、「豪太がクロスを上げるのがわかったので、前に突っ込んだら良い感じのところに豪太が出してくれた」。あうんの呼吸で斜めに走り込んだ長がまるでカンフーキックのようなジャンピングボレーで決めて追いついた。

今大会は「準決勝まで全然うまくいかなくて。ボールに関わる回数とか、ポジショニングとか、全然良くなくて、ドリブルの回数も少なかったです」というようになかなか調子が上がってこず、ここまでノーゴール。その中で「得点を意識しました」というファイナルで初得点を引き寄せる。

39分には左SBの上原悠都(3年)のカットインからMF三浦悠代(3年)のワンタッチパスを長がひとつ切り返し、惜しいシュート。後半も互いに決定機を作る一進一退の攻防が続く中でクーリングブレイクに際し、玉田圭司監督は長と山口の2年生コンビにこう声をかけたという。

「(神村学園の)14番(名和田我空)と比較させてもらって、14番は素晴らしいけど、お前らがそれくらいの存在にならなきゃいけないと」。「14番」をつける名和田と言えば昨年のU-17アジア杯で得点王&MVPを獲得。今大会も9点で得点王となった世代屈指のFWだ。そんなFWを引き合いに出して、それを求めるのだから2年生コンビに対する指揮官の信頼がうかがえる。

長は「特に意識はしていなかったんですけど、ここまでみんなが連れてきてくれたので結果で返したいと思っていた」としながらも、その期待自体には「やっぱり気持ちが上がります」。昌平は後半29分にセットプレーから決められ再びリードを許したが、ここでも長が流れを引き戻す。

失点のわずか2分後の31分、自陣でボールを預かるとドリブルを開始。「最初のファーストプレーで意外とドリブルが抜けたので。(あの場面は)シュートを意識したのでシュートを打てるようなドリブルをしました」と長。一気に運び出すと最後は右足で豪快に叩き込んで同点とする。

さらに34分には試合を決める決勝アシスト。ゴールエリア左でボールを持つと最初はシュートを意識しつつ、打てないとみるや横にずらしてクロスを選択。「『センタリング待ってる』みたいにずっと言われていて、中にチソが見えたので左足でクロスを上げたら合わせてくれました」。ふんわりしたボールをファーサイドに送り、FW鄭志錫(3年)の決勝ヘッドを演出してみせた。

世代屈指のFWから主役の座を奪う2ゴール1アシストの活躍で全国優勝に大きく貢献。今大会も「ドリブルは通用した」と手応えを見せた一方で、「玉田さんにも言われたんですけど、もっと70分を通して存在感を出せるように」。この冬、成長した姿でもう一度日本一に挑戦する。

石黒登(取材・文)