剛柔併せ持つ魂のストライカーが決勝の舞台で2発!プレミアでも存在感見せる昌平FW鄭志錫が夏の全国で主役になる可能性
魂のストライカーが決勝の舞台で2発――。昌平FW鄭志錫(3年)は初戦となった3回戦の西武文理戦で決勝弾を含む2ゴールを奪うと、続く準々決勝の細田学園戦でも1ゴール。しかし、準決勝の浦和学院戦はチームとして5得点が生まれたものの、鄭自身は無得点に終わっていた。
「(ゴールを決めたい気持ちは)人一倍持っていたし、やっぱりチームが勝っても自分が決めないと、その1週間っていうか、次の試合まで腑に落ちない部分っていうのは自分の中でもずっと感じていた。自分が決めて勝って、気持ちよく終わろうというのはずっと意識していました」
すると前半21分、DF中松陽太(3年)の左コーナーキックにニアでヘディングで合わせゲット。「練習から陽太にあそこに蹴ってほしいっていうのを伝えていて。もうボールに飛んだ瞬間にドンピシャだなっていう感覚はあったので、本当に反らすだけでした」。「ゴールを決めたら吠えると決めていた」。魂のストライカーは大きく咆哮。この一発がその後の試合の流れを決めた。
さらに29分には中央で収めると右サイドのMF山口豪太(2年)にパス。「去年は攻め急いだり、真ん中、真ん中って感じじゃないですけど、今年は幅と深みをしっかり使えて、うまさの中にもみんなシンプルにプレーできるので本当にやりやすい」。味方からのクロスを信じポジションを取ると右SB安藤愛斗(2年)のクロスの入れ直しをファーで再びヘディングで仕留めた。
後半は前線で起点となりながら昌平のアタックを引き出すプレー。「自分が決めるっていうこともそうなんですけど、今年からアシストも増えてきて、どんどん周りが見えてきているというか、周りをシンプルに使えることができているのかなと思います」。40分にはMF大谷湊斗(3年)の縦パスをしっかりと収め、前線へ走り込んだ大谷にリターン。チームの5点目をアシストした。
ハットトリックとはならなかったが、決勝の舞台で2ゴール、1アシストの活躍。「自分を表現できたし、ポストプレーや横からの強さっていうのを見せられたので良かった」と笑顔を見せた。
今季はプレミアEASTでも世代別代表などにも選ばれるの有力CBを相手にボールを確実に収めるなど、存在感。「自分も日に日に成長している実感もありますし、だからこそ、この埼玉では誰が相手でも圧倒しなきゃいけないと思いますし、ノーミスで全部自分が勝たなきゃいけないなっていうのは感じています」と話していた今大会もやはり前線で圧倒的な力を発揮した。
「(中学校年代で所属していたFC)ラヴィーダの個人技も生かしつつ、足元だけじゃなくて、自分はパワーだったり、力強さ、ダイナミックな部分も自分の武器としては持っているので、そこをうまく掛け合わせて、両立できはじめているのかなっていうのは自分でも感じています」
1年時からプリンスリーグ関東1部を経験した中で、チームとしてプレミアに昇格した昨年は「もういろいろ全然通用しなかった」。前期はなかなか試合に出場することができなかった。それでも後期は徐々にプレー機会も増やし、プレミア2年目を迎えた今季は「チームとしても、個人としても、そのプレミアのトップレベルの水準に慣れてきたのかなと思います」と明かす。
また、昨年はFW小田晄平(東海大1年)の存在があった中で「少なからず晄平頼りというか、晄平がいるからみたいな思考だったのかもしれないですけど、今年3年生になって、自分たちが最高学年という自覚が芽生えましたし、自分がやらなきゃという責任感が芽生えた」「(自分のところで)収まらないと攻撃が始まらないですし、自分がこのチームの攻撃のカギを握っていると思うので、本当にそこは自覚というか責任は一番感じています」と一番の成長に責任感を挙げた。
玉田圭司監督も「得点に関してはまだまだ自分でも(改善の)余地はあると思っていて、僕も思っているんですけど、それ以外のプレーの幅っていうものが広がりましたね。味方を使うとか、味方に対して自分がどうすれば味方がうまくやれるのかっていうことを理解しながらサッカーができている。その辺を理解してるからこそ、僕は使い続けている」とその信頼を話していた。
今大会はその得点の部分でも5得点。「全部の部分で圧倒しなきゃっていうのは県大会前からずっと意識してやってきたので、毎試合点は取れなかったですけど、5ゴールっていう形でチームに貢献できて良かったです」と鄭。「全国のどの相手でも自分が全部圧倒して、どんな劣勢な状況でも自分が点を取って勝たせられるようなストライカーになれるように頑張ります」。急成長を見せる魂のストライカーが「集大成」と話す夏の全国大会で主役になる可能性は十分にある。
石黒登(取材・文)