昌平MF篠田翼、流れを引き寄せる2ゴール! プロ入り、日本一ともうひとつ叶えたい想い
鋭い抜け出しから流れを引き寄せる2ゴール。昌平MF篠田翼(3年)は「最初の方は自分たちのサッカーが出来なかったというか、落ち着かないというか。そんな中で自分が点を取れて、ちょっと昌平ペースになったというか、流れが変わったというのは良かった」と言い笑顔を見せた。
立ち上がり、昌平は星稜の速いプレスとシンプルにロングボールを使ってくるサッカーに少なからず苦しんだ。篠田も「星稜は結構守備でかけてきて、こっちも蹴って相手ボールになってみたいなので、自分たちのサッカーじゃないのをずっとやっていて難しい試合だった」と振り返る。
そんな状況を一変させたのが、篠田のゴールだった。前半34分、中盤深くでボールを持ったMF土谷飛雅(2年)と一瞬目が合う。「飛雅は本当にキックの質が高くて、呼んだらそこに来るみたいな感じ。ちょっと目が合って、『あっ、来るな』と思ったので走ったら本当に良いボールが来た」。最高のタイミングで抜け出すと、GKとの1対1を冷静に右足のアウトにかけて沈めた。
主将のDF津久井佳祐(3年)は「1点目が決まった瞬間に『あぁ、もうこれ大丈夫だって』。あの裏の取り方からして行けるなという感じがした。みんなが共通して、そういう意識を持てたので楽に試合が出来たかなと思います」と話す。先制点に勇気づけられたイレブンは後半、前半の流れが嘘だったかのように、“らしい”コンビネーションプレーから連続してゴールに迫った。
篠田も引き続き、ゴールに迫る動きを見せる。すると1点を追加し迎えた後半18分、DF石川穂高(2年)のコントロールパスに抜け出し、右足で流し込んで大きくガッツポーズを握った。
2点を決めた殊勲の篠田だが、「ほぼ飛雅のボールのゴール」「ほぼ穂高のボールのゴール」と言い、「自分はごっつぁんというか、ちょっと入れただけみたいな感じなんですけど、でも良い抜け出しが出来たかなとは思います」と遠慮がちに語った。確かに今年の昌平は石川や土谷ら良い出し手がいるのは事実。でもそれは良いアタッカーがいることの裏返し。出し手もきっと「翼がいるから」と篠田の動き出しを信じてコンマ単位で出しているからこそ、ゴールに繋がっている。
「去年の大会では自分は全然ゴールを取ってなくて、チームを勝たせられなかったので、今年は自分のゴールで、自分がチームを勝たせられるようにという想いでやってきた」。昨年は大事な場面で決めきれず、悔しい想いをしてきた。そんな中で県予選・決勝では、1年時の全国高校サッカー選手権で得点したNack5スタジアムで先制弾を奪い、4年ぶりの夏の全国出場に貢献。本大会に向け「主力として出る全国大会が始めてなので、ここで結果を出したい」と話していた。
迎えた1回戦の生駒戦は、前半18分にクロスバー強襲の鋭い一発を放つなど、両軍最多の5本のシュートを放ったがノーゴール。だからこそ今日はどうしても取りたいという想いがあった。
また、篠田には果たしたいことがある。それが親の前でゴールを見せ、感謝を示すこと。1回戦は見に来てくれていたというものの、見せられず。それでも「週末にもう一度来ると言っていたので、『絶対に勝ち残ってゴールを決めるところを見せるね』というのを言っていて。決勝まで残って、また見に来てもらった時に親の前で結果を出せるように頑張りたいと思っています」。
目標とするプロ入りに向け、「1試合1点以上」を掲げる篠田は、3回戦、準々決勝、準決勝とゴールを決め続け、30日のファイナルで「日本一」と「Vゴール」をプレゼントする構えだ。
石黒登(取材・文)