初のインハイ決勝を戦った成徳深谷 ひとつずつ「経験」積み上げて選手権で頂点を目指す
成徳深谷はひとつずつ経験値を積み上げて、選手権では埼玉県の頂点に立ち全国へ――。現メンバーにとって初の“全国掛け”となったインターハイ予選決勝は、1-2で昌平に敗れ、準優勝で幕を閉じた。
今大会は準々決勝で正智深谷との『深谷ダービー』を勝利。準決勝ではプリンスリーグ関東1部所属の西武台に先制されながらも粘り強く戦って同点とし、PK戦の末に劇的勝利を飾っていた。
自信をつけ、昌平との決勝に臨んだが、前半は「準決勝と比べて観客の数も違うし、見える景色も全然違う。その緊張はあった」とMF和光翔夢(3年)も振り返ったように、準決勝の350人を大きく上回る2000人が詰めかけた観客や雰囲気に呑まれ、全体的にやや重さも感じられた。
前半18分に失点したが、西武台戦でも後半に追いつくなど1点は返せる自力はあり、1失点は“想定内”だった。しかし、前半終了間際に守備の連係ミスから取られた2失点目が重く響いた。
後半は「日常に戻さなければいけないなと思った」という為谷洋介監督の檄によりスイッチが入り、9分の得点はFW秋本光瑛、FW平井心瑛の2年生2トップが潰れ、そこに和光が飛び込むという成徳深谷としてまさに「狙い通り」の形。1点差に詰め寄ったが、あと1点が遠かった。
GK木村航大(3年)主将は「このメンバーで全国に行きたいという想いはみんな持っていた。HTには監督から活を入れてもらって、後半に入って1点を返せたんですけど、1点返したことによって、より2失点目が重く感じた。それが自分たちの甘さでもあるし、応援に来てくれた人たちもいっぱいいた中で勝てなかったのはすごい残念です」と2失点目に悔しさをにじませた。
それでもこの「悔しさ」はこの舞台に立ったからこそ感じえたことだ。2018年は新人戦、関東予選で2冠を飾った成徳深谷だが、ここ3年は3回戦が鬼門となり上位進出を果たせずにいた。
そういった中で迎えた今年4月の関東予選ではチームとして4年ぶりのベスト4入りを果たし、現3年生たちにとっても初のスタジアムへ。はじめはスタジアムの使い方もわからなかった。
武南に敗れ、決勝進出はならなかったが、大きな経験に。しかし、同時にそれ自体が目的になってしまうような感じもあったという。深谷ダービーを終え、2大会連続の4強入りを果たした後、主将の木村は「チームとしてスタジアムに行って満足みたいな空気感があった」と話していた。
今予選は「スタジアムに行く」ことではなく、「スタジアムで勝つ」「全国に行く」ことを掲げ、DF増子颯竜(3年)や木村を中心に試合毎に切り替えて臨んだ。2度目のスタジアムとなったNACK5スタジアム大宮で行われた西武台との準決勝は先制を許すもチームとしてこだわってきた球際や運動量で呑みこみ、PK戦の末に勝利した姿には関東予選からの成長を感じさせた。
今回の経験もチームをまたひとつ強くしてくれるはず。和光は「次はうまくやるために、チームで練習から質を上げてやりますし、決勝に行ったから終わりじゃない。やっぱり優勝して成徳に帰らないといけないというのは思っているので、練習からやっていくしかない。練習でも監督に言われてからやるんじゃなく、自分たちからもっと積極的にやるしかない」と言葉に力を込めた。
百聞は一見に如かず。百個の言葉よりも、ひとつの経験がチームを変える。またひとつ経験値を重ねた成徳深谷は、今夏各々が感じた課題に全力で取り組み、選手権でもう一度全国に挑戦する。
石黒登(取材・文)