「もっと上に」行くために。“チャレンジャー”西武台は強豪揃いのプリンスで全国で勝つための力をつける

去年よりも「もっと上に」行くために―。厳しい環境で揉まれながらそのための力をつける。

昨年末の参入戦を制し、11年ぶりのプリンス関東参入、さらに2005年以来17シーズンぶりの1部入りを果たした西武台。開幕節が延期となり、復帰初戦となった第2節は今年も年代別代表経験者を複数人抱える強豪・浦和レッズユースが相手となった。それでも「僕らからしたら望んでいたところ。うちは地元の地域の子しかいないので、やっぱりレッズが一番というのはわかっているから、やりたくて、やりたくてしょうがない様子だった」と、守屋保監督は振り返る。

序盤はその想いがプレーに乗り、前へ。縦に入れつつ、セットプレーの2次攻撃からDF長谷川智紀(3年)主将がヘディングで狙っていく。前半12分にはMF西村航(2年)が前線でカットしてスルーパス。FW樋口春哉(3年)が触れば1点というクロスを通し、決定機を作った。

するとその1分後に先制点が生まれる。今年のナンバー10、 MF和田力也(3年)が左サイドでボールを持つと、「練習からああいう斜めのアーリークロスで、DFとGKの間のところを見るように言われていた。そういう積み重ねが出た」というように相手ゴール前の空白に絶妙なクロスを供給。これをFW松永隆弥(3年)が走り込みながらボレーで合わせネットを揺らした。

幸先の良いスタートを切ったが、ここは強豪揃いのプリンスの舞台。急造だった左サイドの裏を連続して狙われると、前半27分、36分といずれもクロスからゴールを奪われ、逆転を許す。

後半はフィジカルに長けるFW岡響己(2年)を投入。その岡をターゲットに4分にはセットプレーから松永が決定機、岡自身も4本のシュートを放ち、終了間際にもロングボールのこぼれをMF武笠修也(2年)が狙ったが、ゴールを割ることは出来ず。初戦は悔しい逆転負けとなった。

今年の主将を務める長谷川は「相手はプレミアという舞台でやっていたチームで、自分たちは今年から入ったチーム。チャレンジャーの気持ちでチーム全体で戦おうとしていた中で先制点が取れたのは良かったんですけど、やっぱりその後の2失点。自分たちの得点した後の守備というのは課題でもあったので、そこで点を取られてしまったのは反省しないといけない」と語った。

昨年は関東予選、選手権予選、県リーグの3冠を達成し、関東本大会も11年ぶりに制覇。プリンス参入戦も2連勝で決めるなど栄光も味わった中で、全国では1回戦敗退と挫折も味わった。

長谷川は「やっぱりもっと上に行きたかったなというのはもちろんあって、その中で自分がもっと引っ張っていけていたら、チームも変わっていたのかなとも思いますし、自分も試合に出られて成長に繋がった部分もあった。楽しかったし、悔しかったし、いろいろな感情があった」と振り返る。選手権では「もちろん試合前は全員で「絶対に勝とう!」という気持ちではいたんですけど、勝ちが多かった年なのでどこかに気の緩みがあったのかもしれない」と反省。その上で「もうどのチームに対してもチャレンジャーなので」とプリンスのレベルの高い環境を歓迎する。

3年生がメインだった昨年からは大きくメンバーが替わったが、守屋監督は「いろいろな面で実際にどの子が伸びてくるのかなという部分では、去年以上に面白さはあるんじゃないかなと思う」と期待を寄せる。この日は1年生の谷口輝がいきなりスタメン出場。昨季関東リーグ2部Aで優勝したForza’02出身の俊英でキャプテンの長谷川も「すごいですね、あの子」と絶賛する。

また、2年生にも楽しみな選手もおり、昨年を知る長谷川や和田、DF河合陸玖ら3年生と切磋琢磨しながらどこまで成長出来るかは楽しみのひとつ。そしてそのための環境は揃っている。

もちろん負けが込むこともあるだろう。それでも望めば学ぶ機会は多くある、この環境で積んだ経験はチームをもうひとつ先に進めてくれるはずだ。昨年の成績を越えて「もっと上に」行くために―。“チャレンジャー”西武台は厳しい環境で揉まれながら、全国で勝つための力をつける。

石黒登(取材・文)