決勝弾の宇草、2得点の樋口ら付属中出身5人が主軸務める埼玉栄が3大会連続の16強に!
選手権埼玉県大会2回戦。埼玉栄と伊奈学園の一戦は3-1で埼玉栄が勝利し16強に進出した。
立ち上がりから攻め込んだのは埼玉栄だった。開始50秒でフリーキックからいきなりDF宇草太一(3年)がヘディングで決定的なシーンを作ると、その後もボールを繋ぎながらトップ下の鈴木祥(3年)や左SHの樋口有斗(3年)が積極的に前を向きながら仕掛けて相手を押し込む。
「ボールを持つ時間は長くなるだろうというのは想定していた中で、じゃあどういうふうな流れの中で相手を崩していくのかということも確認はしていたんですけど、そのあたりがなかなかやっぱり崩しきれないというのは1回戦に続き、反省事項となった」(埼玉栄・稲垣忠司監督)
34分にMF沖中愛斗(2年)が前線で収め、DF増島琉聖(3年)のクロスを樋口がドンピシャのヘディングで決めて先制したが、前半は多くのチャンスを迎えながらこの1点に終わった。
一方、「プランとしては前半無失点で行って、後半の途中から中田を前に出して点を取りに行きたい。80分の中でゲームを決めたい。そういう考えがありました」(岡田泉監督)という伊奈学園も後半から勝負に出る。「技術的にも、高さも、彼はこのチームでいろいろなことが出来る」という10番のDF中田悠介(3年)をCBからトップに上げて攻撃にシフトチェンジを図る。
すると伊奈学園は中田が何度もドリブルで持ち出してチャンスメイク。相手に傾いた流れを一気に引き寄せる。そして後半28分、中田とFW武野柊大(3年)が前線からプレッシャーをかけて高い位置で奪うとボールを持った中田がドリブルで前進し、たまらずディフェンスが倒してしまいPKに。これをMF遠藤冬樹(3年)主将がしっかりと蹴り込んで同点に追いついた。
伊奈学園としてはまさに狙い通りの形。埼玉栄は追いかけられる中で同点に追いつかれ嫌な流れも吹きつつあったが、それでも「事前のスカウティングで今日はセットプレーがひとつポイントになるんじゃないかというのがあった」(稲垣監督)という『セットプレー』が勝負を分けた。
後半32分、コーナーキックを獲得すると、MF蓜島圭(3年)の正確なキックに合わせたのは前半から迫力を持って飛び込んでいた宇草。「本人もディフェンスでロングボールを跳ね返すというのは自信を持ってやってくれていますし、競り合いのところで相手に負けないという想いを強く持ってやってくれている。そのあたりはセットプレーの時のゴール前への入り方なども含めて自信を持って入ってくれていると思う」(監督)という頼れる主将が決めて再び勝ち越し。
その4分後には樋口がこの日2点目を決めて3-1とし、3大会連続のベスト16入りを決めた。
今年は主将の宇草や2ゴールのほかに仕掛けの部分でも特徴を放った樋口、質の高いプレースキックを蹴った蓜島、DF関蓮也(3年)、DF徳山賢悟(2年)と付属中の埼玉栄中出身者5人がスタメンに。途中出場したFW小鷹雄生(3年)も含めれば6人がこの日はピッチに立った。
「例年2、3人弱ですが、今年は多い。それは中学校の滝井(友和/監督)を始めとしたスタッフが本当に一生懸命、丁寧に指導してくれている成果だと思いますし、そういうふうなところで繋がって一貫で出来ているというような良さは今後も含めて出していければと思っています」。
稲垣監督も中学校の試合にも多く足を運んでおり、「そこの繋がりというのを大事にしないといけないし、逆にそれをひとつのストロングにしていかないといけない。今後も含めてうまくコミュニケーションを取りながらやれればなと思います」。現在高校サッカー界は中高一貫がひとつのトレンドとなっているだけに、より連携を強めながら、強化にあたっていく必要性を語った。
2大会ぶりの8強をかけた一戦は西武台との試合が決まった。「本当に今年の西武台はトップレベルのチームだと思いますし、関東大会でも優勝している実績もある。それに対して我々がどこまで通用するか。少しでも相手の嫌がるようなことが出来るように、この1週間いろいろなことをしこんで、何をしてくるんだ、と思われるチームで次のゲームを出来ればと思っています。
どこまで出来るかわかりませんけど、ただ3年生はなにがなんでも、という気持ちでいてくれているので、その意味ではどういう形のゲームになろうとも最後の最後までしっかりやりきって、少しでも面白いゲームになれるよう頑張りたいと思います」と、指揮官は大一番を見据えた。
今年はリーグ戦でも前期は特に苦戦するなど、「時間のかかった学年」(監督)だというが、この日も相手に傾きかけた流れを中で声を掛け合いながら跳ね返したように、ここに来てチームには3年生を中心に「一体感」も生まれつつある。西武台戦はその集大成をぶつけて勝利を掴む。
石黒登(取材・文)
試合結果
埼玉栄 3-1 伊奈学園
1(前半)0
2(後半)1