「自分が強い武南を復活させる」。FWとして成長を遂げる10番櫻井敬太が1G1A
内野慎一郎監督の「期待できます」という言葉と表情を見れば順調に成長していることが見て取れる。武南の10番櫻井敬太はこの日1ゴール、1アシストを決めてFWとしての価値を示した。
前半5分、MF江川諒太のクロスに抜け出して右足ダイレクトで決めて先制。さらに30分には右サイドでボールを持つと、「切り返した時に小曽戸くんが走ってきていたのが見えた」とオーバーラップしてきたDF小曽戸堅心のスピードを殺さない見事な裏への配球でアシストした。
それでも「もうちょっと取れたなって。自分がシュートを外してしまった場面から流れが変わってしまったので、決めるところで決めないと。まだ全然ダメだなと感じています」と反省した。
もともとはサイドのプレーヤーだったが、今年からFWに挑戦中。春先はまだ迷いも見られた中でFWとしての動きも洗練されてきたイメージだが、本人は「まだまだです。自分は小柄な選手。今日の立教の5番もでかかったですし、昨日の栄にも180cmくらいのでかい選手がいた。そこをしっかりと収められるようにもっと練習しなきゃなと思います」。
またサイドでの180度の景色からFWの360度の景色に変化したことによる難しさも感じているというが、同時に「自分でもらってターンした時に視界が開けるというか、いままで見たことがないような景色が見えて「こんなところにも出せるんだ」、トップ下とかがオーバーラップしてきたら「そこにも出せる」って。そういうところはFWの楽しみ」と日々新たな発見をしながら成長を遂げている。
内野監督は櫻井について「やっぱり身体が使えるし、前への圧力をかけられる人間。そこで相手がドタバタすることは必然的に出てくる」。また「そういう利点があるからこそ矢印の方向を前へ向けてみようというサッカーにしてみたかった」。今年の武南はこれまでの繋ぎながら崩すことに加えて、強豪校との対戦を見据えながら背後への形ということにもフォーカスしているが、それは櫻井やMF水野将人など、前への矢印を出すことのできるタレントがいることもある。
櫻井は前橋育英高の下部組織である前橋FCの出身。3年時にはクラブユース選手権で全国大会に出場し、ベスト32入りを果たした。武南に来るきっかけとなったのはその全国掛けとなった関東予選4回戦の東京武蔵野シティFC戦。前橋FCは1-0で勝利し全国切符を勝ち取るわけだが、ここに視察に来ていたのが内野監督だった。「スピード感があるし、中学校の最高のパフォーマンスだった」と惚れ込んだ指揮官がラブコール。最初は迷いのあったという櫻井も「何度も監督が来てくれた。これは応えなきゃなと思って決めました」と武南への入学を決意した。
「いまは昌平じゃないですか。だから昔の強い武南の時代にしたいと思ってここに来ました」。
今年は2年生ながらエースNo.10を背負うが、「やっぱり武南の10番なのでプレッシャーはありますけど、やっぱりサッカーは楽しむスポーツ。そういうプレッシャーも楽しんであまり気負わずにやれていると思います」とあくまで自然体だ。自分が強い武南を復活させると意気込むストライカーはまずは次戦「是が非でも」勝ち、そして再び埼玉の頂点に武南の名を刻み込む。
石黒登(取材・文)
試合結果
立教新座 1-2 武南
0(前半)2
1(後半)0