第99回 全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会 決勝トーナメント1回戦 武南 vs 朝霞西
選手権埼玉予選2次トーナメント1回戦。武南は5-0で朝霞西を下し、2回戦に進出した。
開始1分も立たずにシュートシーンまで持っていった武南は前半6分、左サイドバックの中村優斗のクロス性のシュートがそのままキーパーの頭上を越してネットインして早々に先制。さらに26分にはMF水野将人がPKを獲得し、これをDF斎藤優斗が冷静に沈めて追加点とした。
一方の朝霞西は守りを固めながら、マイボールでは無理に蹴りださずにMF木村尚紀を起点にしっかりと繋ぐスタイルを試みる。前半アディショナルタイムには木村のクロスにDF宮川琉幸が頭で合わせたが、ここは武南GK吉田陸斗の好守に阻まれ、得点とすることができなかった。
後半はギアを上げた武南が終始優勢にゲームを展開。10分にはMF植田彪真の絶妙なスルーパスに抜け出した水野がキーパーとの1対1をきっちりまた抜きで決めてチーム3点目。同27分にはMF青木駿祐が内に切れ込みながら右足で突き刺すと、その2分後にはハーフタイムからピッチに立ったFW萩原康太が右足ミドルでダメを押し、5-0でまずは初戦突破を飾った。
試合後は指揮官から「愛のゲキ」も。後半はセカンドから昇格した選手たちが躍動
5-0で勝利した武南だが、試合後は指揮官からのゲキが飛んだ。「本人たちは初戦の緊張もあったと思うんですけど、そこで何かを変えるとか、雰囲気はこのままでいいのかというような、自分たちを鼓舞するような雰囲気が前半は感じられなかった。悪い時もこれからいっぱいあると思うんですけど、その中で、ゲームを作っていく中で自分たちがどう変えていくのか」。
確かに前半はスペースへの動きやダイレクトプレーなどが少なく攻撃が停滞する場面も。こういった中での自浄作用というのは例年であれば関東予選やインターハイ予選、リーグ戦などを通じて養われてくるものだが、今年は新型コロナウイルスの影響で前者の2大会は中止に、リーグ戦は短縮開催になるなど、真剣勝負での経験値不足というのは否めないところはある。
試合後はあえて厳しい言葉を選んだ内野慎一郎監督だが、それもチームの可能性を諦めていないからこそのこと。「今年はしょうがないなんて俺は全然思っていないし、今年は今年のやり方がある。もちろんタレントは去年の方がいました。でも今年は真面目さだとか、頑張りだったら負けないんじゃないかなと思う。練習にストレスは全然感じないし、すごく一生懸命やってくれるから大切にしたいなと思っています」。まさに指揮官からの愛のゲキといったわけだ。
そういった中で後半はセカンドチームから昇格した選手が躍動した。MF植田彪真は新人戦で出場もあった中でBチーム落ちを経験。それでも腐らずに練習を続け、自分の技を磨いてきた。「一度落ちて自分に関わる重さみたいなものが抜けて身体も軽くなった。津島(公人)先生とかにいろいろアドバイスをもらって、ドリブルで侵入していくシーンも増えていった」。
「自分の長所はやっぱりドリブルで相手の前に入るというのと、あとは長いものも短いものも含めてスルーパスをタイミング良く出せること。前を向いたらチャンスかなと思います」。
アシストはそんな植田の良さが発揮された形。「青木も右から上がっていてどっちも見えていたんですけど、水野が縦に走った時に相手が止まったのが見えたので、もう縦しかないなと思ってスルーパスを出しました」と絶妙なタイミングの配球で水野のゴールを演出。セカンドチームでの経験をしっかりと生かしたプレーに「(セカンドでの経験が)報われた」と喜んだ。
また、途中出場から1ゴールを奪った2年生FW萩原康太やMF井原史也もセカンドから上がってきた選手。今年は公式戦が少ない中で平日から第二グラウンドでS1とS2の紅白戦を多くとり行ってきた。「セカンドにいた時はやっぱりトップを倒そうという気持ちでやっていた。その中でAとBがお互いに良い刺激になって、チーム力が向上したと思います」と萩原はいう。
昨年は1年を通してほぼスタメンが変わらなかった。今年はコロナ禍で固定化まで持っていけなかったという面ももちろんあるが、逆に言えば自由競争の中で大会期間に一気に伸びるという可能性もある。チーム内での「下剋上ゲーム」を勝ち抜き、ゴールでアピールした萩原は「学年関係なく自分を出していって、点を取ってチームに貢献したい」と意欲を燃やしていた。
石黒登(取材・文)
試合結果
武南 5-0 朝霞西
2(前半)0
3(後半)0