第99回 全国高等学校サッカー選手権大会埼玉県大会 一次予選ブロック決定戦 入間向陽 vs 深谷第一

選手権1次予選代表決定戦。O組は深谷第一がPK戦で入間向陽を下し、2次進出を決めた。


序盤は一進一退の攻防という中で深谷第一はしっかりと跳ね返しながら徐々に攻めの時間を作っていく。一方の入間向陽もFW坂村航太の縦突破やFW小宗遼雅の抜けだしなどで中盤以降は前に出る時間帯を増やしていくが、互いに決定機の創出までは至らず、0-0で折り返した。

後半はともに1本ずつの決定機。入間向陽は24分、MF宮澤仁がエリア内でフリーで受けたが、シュートはGK木暮希が弾き出してゴールは許さず。深谷第一はアディショナルタイムに浮き球のパスをFW川田裕翔が落とし、MF武田伊央が抜け出すが、これは好判断を見せたGK平山敦士がストップした。勝負は0-0のまま延長戦でも決着がつかず、ついにPK戦に突入する。

入間向陽は相手の2本目を平山が左に飛んで防ぎ先にリードを奪ったが、深谷第一も木暮が4本目をストップしてタイに戻す。運命の5人目、先行・深谷第一が決めたのに対し、入間向陽のシュートがポストに嫌われ勝負あり。深谷第一が激闘を制し、2次予選への切符を掴んだ。

深谷第一は2回戦の三郷戦に続き、2戦連続の100分を戦ってのPK勝ち。キャプテンのDF川田悠暉は「もう何回するんだというくらいラントレはやってきている。何があっても走り負けない、競り負けない、そこの1対1とチームとしての持久力には自信があります」と胸を張る。

三郷戦では「自分たちはチャレンジャー」という認識を再確認し、それがこの日の勝利に繋がったが、2次予選に向けて弱気になるわけではない。川田悠は「強豪が揃っているのは承知なんですけど、自分たちにも引けを取らない強みがある。自分たちの良いところは生かして、相手のウィークポイントを徹底的について、先輩たちの残した記録を塗り替えたい」と意気込みを語った。

GK木暮希の活躍で2戦連続のPK勝利。持ち前の明るさで仲間も鼓舞するファインプレーも

PK戦はひとつ織り込み済みのプランだったという。そしてこの戦い方ができたのもGK木暮希の存在というのも大きいだろう。背番号1は2回戦でもPKを3本セーブするなどのっていった。

1点ビハインドで迎えた相手の4本目、「1本目から相手のキックがすごくうまいというのはわかっていた。下手に飛んだら届かないと思ったので、しっかり思い切って飛びました」と木暮。

実際にシュートはコースついた中で守護神はこれを指先で弾き出し、土壇場でスコアをタイに戻して大きくガッツポーズ。5本目は「しっかり先に声で威嚇したり、自分が自信を持ってやることで、相手もプレッシャーを感じると思うので、自分が止められるという自信を持ってやりました」。すると木暮の気合いが通じたのか、相手のミスキックを誘い逆転での勝利を引き寄せた。

勝利を決めた直後は仲間に向かって駆け出す中で、「自分もPK戦は自信を持ってやってはいるんですけど、負けるかもしれないという不安の中でやっているので、みんなが来てくれた時の安心感というか、そういうのがすごく大きくて、ちょっと涙ぐんだところもあった」と明かした。

またもうひとつのファインプレーとなったのが2本目の場面。味方が先に外し、膝をついている中で木暮はすぐに駆け寄ると肩を支え「しっかり止めるから大丈夫だよ」と声をかけたという。

岡本孝夫監督は「(彼の買っているポイントは)明るさ。真面目すぎて変に自分を責めてしまうところもあるんですけど、彼の声がやっぱりいろいろな選手に勇気を与えているというのは事実だと思うので、あの明るさはすごく大切なチームの要素かなと思います」と木暮を評価する。

本人は「よくうるさいと言われるんですけど」と笑うが、この彼の持ち前のキャラクターである「明るさ」が仲間たちを鼓舞し、その後の全員成功に繋がったという部分も少なくないだろう。

「これからもっときつい試合になっていくと思うんですけど、学校の先生やいろいろな人が協力してくれてここまで来させてもらっているので、しっかり学校に良い報告ができるように、どんな相手でも自分たちのサッカーをやって勝ちに行きたいと思います」と木暮。2次トーナメントでも彼が後方から出す声、そして「明るさ」はチームが辛い時に仲間に勇気を与えるはずだ。

石黒登(取材・文)

試合結果

入間向陽 0(3PK4)0 深谷第一
0(前半)0
0(後半)0
0(延前)0
0(延後)0
3(PK)4