山内太陽が「良い準備が出来ていたから」と語った追撃弾に至ったまでの想い
思い描いていた高校サッカー生活にはならなかったかもしれない。それでも最後に全国でゴールを決めたFW山内太陽は「最後はこうやって点が取れて終われて良かった」と振り返った。
「この3年間は悔しさの方が大きい3年間だった。国体も優勝はしましたけど1試合もスタメンで出ることはなくて、ラスト2分だったり、そのくらいの出場だったので悔しかったですし、この選手権も2、3回戦と出番はなかったので悔しいなという想いの方が大きかったです」。
一昨年の福井国体では高校2年生の早生まれ組としてメンバー入りした山内だったが、同じく昌平から参加した1学年下のMF須藤直輝が活躍する中でなかなかスタメンを掴むことはできず。埼玉県選抜はこの大会で17年ぶりの優勝を果たすことになるが、「悔しさ」が心に残った。
国体での悔しさを糧に、昌平での飛躍を狙った今年もベンチスタートが続いた。「試合に出たいという想いもずっとありました。でもそれを表に出してイライラしていても何も生まれない。とにかく自分が必要になる時がどこかで来ると思って、常に最高の準備をし続けていました」。
その準備は徐々に実を結んでいき、S1リーグ最終節では2ゴールの活躍。「選手権の県予選あたりから点を取れるようになってきて、監督の評価も上がっているのはわかっていた。この期間で本当に得点感覚は研ぎ澄まされて来たなというのはありました」という背番号18に声がかかったのは準々決勝・青森山田戦の後半25分。「よし、来た!」。須藤の追撃弾で追い上げムードになっていたものの、いまだ2点のビハインド。求められたのはもちろん「ゴール」だった。
すると後半35分、「大夢はいつも良いスルーパスを出してくれる。お互いにわかっている」というMF鎌田大夢のスルーパスに反応。「結構ゴール前で焦ってしまって、枠を外してしまうとかそういうのはあったんですけど、今日は集中力があったのか、すごい時間がゆっくりな感覚になって、落ち着いてプレーができました」。ファーストタッチでキーパーを外すと、最後はゴールカバーに入ったディフェンダーの動きもしっかりと見ながら逆サイドネットに突き刺した。
「良い準備ができていたからこそ、この結果を残せたと思うので、こういう舞台で、最後はこうやって点が取れて終われたので良かったのかなと思います」と山内。競技者レベルでのサッカーは高校で最後だという。決して思い描いていたそうにはいかったかもしれない。それでも努力が最後身を結んだというのは今後大きな財産になっていくはず。次の舞台での活躍も期待したい。
石黒登(取材・文)