[選手権]古豪復活へ、武南が後半3発で逆転勝利。細田学園の勢いをのみ込んで14年ぶりの決勝進出、冬の全国へ王手!
古豪復活へ、武南が14年ぶりの決勝進出! 第104回全国高校サッカー選手権埼玉県予選準決勝が9日に行われ、武南が4-2で細田学園に逆転勝利。武南は16日の決勝で昌平と戦う。

準々決勝で西武台を下し4強入りした武南は、MF小山一絆(2年)や10番MF有川達琉(3年)を中心に長短のパスを繋ぎ、中央やサイドのコンビネーションでチャンスをうかがう。
6分にはMF関口海龍(3年)がインターセプトから決定機。11分にはDF八百川尚輝(2年)の右CKからDF倉本健二(3年)のヘディングがポストを叩くなど、チャンスを作る。
15分には左サイドでMF渡辺悠(2年)、八百川と繋ぎ、有川がエリア内に潜り込むプレー。これはシュートまでは繋がらなかったが、武南は16分、ここで得た左CKから生まれた混戦でDF田村大地(3年)がシュートを狙い、こぼれ球を関口が右足でプッシュして先制した。
一方、準々決勝で浦和東に逆転勝ちを収め、6度目の挑戦でベスト8の壁を突破し、同校初の準決勝進出を果たした細田学園も、DF高久琉我(3年)、DF橋本晴(3年)、DF佐伯紘尚(3年)の3バック、MF中村圭佑(3年)、MF佐久間征斗(3年)のダブルボランチで回しながらギャップを作り、そこからのロングボールや、特徴の両WBを生かした攻撃を見せる。
失点からわずか3分後の19分、浦和東戦で決勝ゴールを記録した俊足のFW小野寺快斗(2年)が相手のビルドアップをカットすると、この日も切れ味鋭いドリブルでラインを切り裂き、右足でゴールネットに流し込んで同点に追いつく。さらに細田学園は40分、中村の右CKから186cmの長身を誇る高久が豪快にヘディングで合わせ、前半のうちに逆転に成功した。
武南としては警戒していたキーマンにやられる形での失点。また、相手の3バックとダブルボランチで回すパスに対して準備してきたが、「そもそも運動量がなかった。だから2度追いするとか、本当に取ってやろうみたいな雰囲気が出てこなかった」「この運動量じゃ、この迫力じゃ絶対に上では戦えないよっていうことはちょっと強く言いました」と内野慎一郎監督は話す。
指揮官からの檄と守備のかけ方の確認を行うと、後半は関口が起点となりながら前線からしっかりとプレスをかけて3バックやボランチのボールを捕まえるシーンも。サイドでの攻防の場面も限定をかけながら強気でバチンと行くシーンを増やしたことで一気にペースを握り返す。
その中で後半5分には、有川のショートコーナーからFW藤森隼叶(3年)がヘディングシュート。これは惜しくも枠を捉えなかったが、10分、小山のフィードに走った藤森が相手GKの一瞬の逡巡を見逃さず、トップスピードのまま駆け抜け、左足を伸ばして同点ゴールを奪う。
その後も武南は相手コートに押し込む形でプレーし、14分にショートコーナーから関口がゴールに迫るプレー。また、16分には八百川のパスから、19分には関口の前線からの守備から藤森が抜け出しで連続して決定的な場面を作る中で、ついに待望の勝ち越しゴールが生まれる。
35分、武南は小山のサイドチェンジから、DF田中理月(3年)がゴール前に入れたロングボールに2列目から顔を出したMF平野琉斗(3年)がヘディングで決めた。指揮官も「あいつもやっぱり苦しんできたし、今年もうまくいかない時もいっぱいあったと思う。そこを乗り越えて取った、今日の3点目は本当に大きかった」という主将のゴールで武南がリードを奪う。
さらに37分には関口の仕掛けの姿勢が相手のオウンゴールを誘った。後半は終始圧倒した武南が4-2で勝利。14年ぶりの決勝進出を飾り、19年ぶりの冬の全国にあと1勝と迫った。
今年は夏場のリーグ戦がなくなった中で、裏インターハイや和倉ユースといったフェスティバルで腕を磨いた。和倉ではインターハイ直後の大津やプレミアリーグEASTで首位の鹿島アントラーズユースとも対戦。その中で「こういうふうにやられるけど、こういうこともできるんだっていうのは確認できた。本当にそういうのを積み重ねていまがある」と内野監督は話す。
「この子たちは本当にそういうところは素直にサッカーに没頭するというか、受け入れる力というのは、これも僕は1つの能力だと思いますけど、そういうのはすごくある。練習に対するストレスとかはないですし、今週もすごく雰囲気が良かった。うまい下手だけじゃなくて、盛り上げる人間、頑張ろうとする人間がいて、すごく素直に一生懸命に取り組んでいると思う」
「いつも思ってた以上とか、想像しているものとは違うものが目の前に現れて、負けるっていうことに繋がってたんですけど、自分たちのやりたいことを先行しつつ、ほかにやっぱり自分たちじゃないものを取り入れながらうまくやっていかないとっていうところで」今年はクロスボールにも狙いを持って取り組み。この日はクロスから藤森が飛び込むシーンも多くあった。
これまでは「自分たちの色を出すこと」に比重を置いてきた中で「まずは武南らしくっていうところを作ってきたんですけど、それだけじゃないなっていう。これは時間をじっくりかけながら作っていかないとできない。今年のチームは無理だから守るよとか、そんな簡単なことじゃないので、それをやってきてくれて体現してくれたことは僕は逆に選手に感謝しています」。
そのうえで自分たちの良さである「うまさ」にも取り組む。「特に今年は独特感を出すトレーニング方法っていうのを、1年間ずっと1つ目にやり続けてきて。それが後半とかに炸裂すると、ドリブルで侵入していくっていうシーンは増えてくると思う。あれをただ選手たちが勝手にうまいよねっていうだけじゃないっていうのは、ちょっと理解してほしいなと思います。最初はそんなに持つ選手じゃないっていうのが、いっぱいいたのがこういうふうになっていく」。
武南としての良さは失わず、さらにプラス要素を追加して新たな武南に。19大会ぶりの冬の全国を目指す決勝戦は昌平に決定。内野監督は「最低やっぱりここのところまではこぎ着けて戦いたいなと思っていた中で1つ1つクリアできて、この場にいる。いままでの勝ちを無駄にせず、強いとされている昌平高校にどれだけできるか。“自分たちのサッカー”で臨みたいです」と意気込んだ。新しい武南としての歩みを進めていくために、いまこそ重い扉を開くときだ。
石黒登(取材・文)
試合結果
細田学園 2-4 武南
2(前半)1
0(後半)3


